佐藤康光会長の糸谷流右玉風の指し回し

プロの右玉

2019年5月28日に行われた竜王戦1組出場者決定戦で、佐藤康光会長が対振り飛車で糸谷流右玉に似たユニークな作戦を採用した。
似ているだけで右玉ではないが、糸谷流右玉使いの人に役に立つ手筋もあるので紹介したい。

棋譜は以下からどうぞ
2019-05-28 竜王戦佐藤康光 九段 vs. 久保利明 九段 第32期竜王戦1組出場者決定戦

糸谷流右玉に似た形で中飛車に対抗

後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v角v金 ・v桂v香|一
| ・v玉v金 ・v飛 ・ ・ ・ ・|二
| ・v銀 ・v歩 ・ ・ ・v歩v歩|三
|v歩v歩v歩 ・v銀v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 歩 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ 歩|六
| 角 銀 桂 歩 歩 銀 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 金 ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
後手番
手数=39  ▲5八玉  まで

振り飛車の名手・久保九段の中飛車に対する佐藤康光九段は、糸谷流右玉風の構え。
プロ棋戦の場合、中飛車に対しては超速が多いのでかなり珍しい形といえる。9七角としているのも糸谷流右玉っぽい。

後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v角v金 ・v桂v香|一
| ・v玉 ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・|二
| ・v銀v金 ・ ・ ・ ・v歩v歩|三
|v歩v歩v歩v歩v銀v歩v歩 ・ ・|四
| ・ 歩 ・ ・v歩 ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ 歩|六
| 角 銀 桂 歩 歩 銀 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 金 ・ ・ ・|八
| 香 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
後手番
手数=43  ▲8五歩  まで

先手は飛車を8筋に回って8五歩で仕掛ける。

後手の持駒:歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v角v金 ・v桂v香|一
| ・v玉 ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・|二
| ・v銀v金 ・ ・ ・ ・v歩v歩|三
|v歩 ・v歩v歩v銀v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 歩 ・v歩 ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 歩|六
| 角 銀 桂 歩 歩 銀 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 金 ・ ・ ・|八
| 香 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
後手番
手数=45  ▲7五歩  まで

同歩に対して、7五歩。
一歩をもらいに行く手で、糸谷流右玉で頻出する基本の手筋だ。

後手の持駒:歩二 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v角v金 ・v桂v香|一
| ・v玉 ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・|二
| ・v銀 ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩|三
|v歩 ・v金v歩v銀v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 角 ・v歩 ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 銀 ・ ・ 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ ・ 桂 歩 歩 銀 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 金 ・ ・ ・|八
| 香 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩 
後手番
手数=49  ▲7六銀  まで

同歩、同角に後手は7四金と強く角に当てる。
そこで、先手は角を見捨てる7六銀!
相手の玉頭だけに角金交換なら文句のないところだ。

後手の持駒:角 歩二 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v角v金 ・v桂v香|一
| ・v玉 ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・|二
| ・v銀 ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩|三
|v歩 ・ ・v歩v銀v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 銀 ・v歩 ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ ・ 桂 歩 歩 銀 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 金 ・ ・ ・|八
| 香 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:金 歩 
後手番
手数=51  ▲7五銀  まで

本譜は同金、同銀と進む。ソフトの評価値は互角だが、後手は受けに回る必要があるし、先手に楽しみも多いところだろう。

難解すぎるソフトの読み筋

後手の持駒:角 歩二 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v角v金 ・v桂v香|一
| ・v玉 ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・|二
| ・v銀 ・v銀 ・ ・ ・v歩v歩|三
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 銀 ・v歩 ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ ・ 桂 歩 歩 銀 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 金 ・ ・ ・|八
| 香 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:金 歩 
手数=52  △6三銀  まで

局面は6三銀と受けたところ。
ここで示すソフトの候補手は先手有利になるものの、かなり難解。

変化図

後手の持駒:角 歩二 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v角v金 ・v桂v香|一
| ・v玉 ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・|二
| ・v銀 ・v銀 ・ ・ ・v歩v歩|三
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 銀 ・v歩 歩 ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ ・ 桂 歩 歩 銀 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 金 ・ ・ ・|八
| 香 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:金 歩 
後手番
手数=53  ▲4五歩  まで

4五歩!
なんとこれで先手が良いという。ミギーには一生かかっても指せそうもない手だ。
ソフトの読み筋は、7二飛、7六金打、5四角打、8五金、8四歩打、同銀、同銀、同金、同角、同飛

4五歩に同歩であれば、同桂で良さそう。桂馬を取りに4四歩打は、5三金と打ち込む手がある。
4五歩に7四歩は、8四歩打と決めてから7二銀、6六銀でよさそう。
4五歩に7六歩打は8五桂と跳ねる。8四歩打には、そこで4四歩と出る。

4五歩は難解すぎるが、7二飛を誘うことで、7二銀と引くスペースをなくす効果もあるかもしれない。
後手としても、無条件に4四歩と取り込まれると飛車のコビンであるほか、玉がかなり狭くなり、許すわけにはいかないだろう。

後手の持駒:角 歩二 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v角v金 ・v桂v香|一
| ・v玉 ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・|二
| ・v銀 ・v銀 ・ ・ ・v歩v歩|三
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩v歩 ・ ・|四
| 歩v歩 銀 ・v歩 ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ ・ 桂 歩 歩 銀 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 金 ・ ・ ・|八
| 香 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:金 歩 
後手番
手数=53  ▲9五歩  まで

本譜は仕掛ける前に端に味付ける9五歩。これも悪くはなさそうだが、評価値は互角となった。

後手、激しい変化は選ばず

後手の持駒:角 歩四 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v角v金 ・v桂v香|一
| ・v玉 ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・ ・v銀 ・ ・ ・v歩v歩|三
| ・v銀 ・v歩 ・v歩v歩 ・ ・|四
|v歩 桂 銀 ・v歩 ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ ・ ・ 歩 歩 銀 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 金 ・ ・ ・|八
| 香 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:金 歩 
後手番
手数=55  ▲8五桂  まで

9五歩に対して、同歩、8四歩打、同銀、同桂と進行する。
銀がタダに見えるが、7五銀としてしまうと9三桂成がある。

変化図

後手の持駒:角 銀 歩四 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v角v金 ・v桂v香|一
| ・v玉 ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・|二
| 圭 ・ ・v銀 ・ ・ ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・v歩 ・v歩v歩 ・ ・|四
|v歩 ・v銀 ・v歩 ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ ・ ・ 歩 歩 銀 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 金 ・ ・ ・|八
| 香 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:金 歩 
後手番
手数=59  ▲9三圭  まで

ただ、この変化を選んでも8一玉と逃げれば、わずかに後手よりの評価のようだ。後手としてはこの進行もあったかもしれない。

後手の持駒:角 歩三 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v角v金 ・v桂v香|一
| ・v玉 ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・ ・v銀 ・ ・ ・v歩v歩|三
| ・v銀 ・v歩 ・v歩v歩 ・ ・|四
|v歩 桂 ・ ・v歩 ・ ・ 歩 ・|五
| ・ 銀 ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ ・ ・ 歩 歩 銀 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 金 ・ ・ ・|八
| 香 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:金 歩二 
後手番
手数=59  ▲8六銀  まで

本譜は8六歩、同銀と穏やかに進行する。

先手、終盤のチャンスを逃す

後手の持駒:角 金 歩三 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・v角v金 ・v桂v香|一
|v歩 ・ ・v桂 ・ ・ ・v飛 ・|二
| ・v歩v玉 ・ ・ ・ ・v歩v歩|三
| 歩 歩v歩v歩 ・ 杏 ・ ・ ・|四
| 銀 ・ ・v桂 ・ ・ 歩 歩 ・|五
| ・ 金 ・ ・v銀 歩 銀 ・ 歩|六
| ・ ・ ・ ・ ・ 玉 桂 ・ ・|七
| ・vと ・ ・ ・ 金 ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:銀 歩二 
手数=120  ▲5六銀  まで

局面はだいぶ進んで終盤。後手が5六銀としたところ。
同玉は5五歩打、同玉、5四歩打、5六玉、5五金打、5七玉、5六角打がある。この銀は取り切れず3八玉。

後手の持駒:角 金 歩三 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・v角v金 ・v桂v香|一
|v歩 ・ ・v桂 ・ ・ ・v飛 ・|二
| ・v歩v玉 ・ ・ ・ ・v歩v歩|三
| 歩 歩v歩v歩 ・ 杏 ・ ・ ・|四
| 銀 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・|五
| ・ 金 ・ ・v銀 歩 銀 ・ 歩|六
| ・ ・ ・ ・v圭 ・ 桂 ・ ・|七
| ・vと ・ ・ ・ 金 玉 ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:銀 歩二 
手数=122  △5七圭  まで

4八玉に5七桂成。ここは先手にとってチャンス。同金としておけば、同銀成に8三歩成、同玉、8四歩打、7二玉、2七玉(早逃げ!)、4八成銀、5三成香となれば先手ハッキリ優勢だったかもしれない。

後手の持駒:金二 歩四 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・v角v金 ・v桂v香|一
|v歩 ・ ・v桂 ・ ・ ・v飛 ・|二
| ・v玉 ・ ・ 杏 ・ ・v歩v歩|三
| 歩 ・v歩v歩 ・ ・ ・ ・ ・|四
| 銀 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・|五
| ・ 金 ・ ・v銀 歩 銀 ・ 歩|六
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 桂 ・ ・|七
| ・vと ・ ・v角 玉 ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:銀 桂 歩三 
手数=128  △5八角  まで

本譜は8三歩成、同玉と入れたあと、5三桂成。
4八成桂、同玉、5八角打(上図)とされて、後手優勢に。

後手の持駒:金 歩五 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v玉 ・ ・v角v金 ・v桂v香|一
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・|二
| ・ ・ 歩 ・ 杏 ・ ・v歩v歩|三
| 歩 歩v歩v歩 ・ ・ ・ ・ ・|四
| 銀 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・|五
| ・ 金 ・ ・v銀v桂 銀v金 歩|六
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 桂 銀 ・|七
| ・vと ・ ・v角 ・ ・ 玉 ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:桂 歩 
手数=138  △2六金  まで

先手早逃げなどで粘るも、最後は2六金打が強烈な一打。同銀には3六角成がある。仕方なく、3九桂打も構わず3六角成で先手の佐藤九段が投了となった。

というわけで、最後は力尽きてしまったものの、佐藤九段のユニークな構想は糸谷流右玉にも応用できそうな手筋があり、右玉党にも勉強になると思われる。

右玉NOWは今後も佐藤康光会長を応援します!