穴熊を粉砕した羽生竜王の右玉

プロの右玉

以前、羽生竜王の右玉を紹介したが、もっとも有名な羽生の右玉は、2008年の竜王戦で渡辺竜王(当時)相手に指した一局だろう。

舞台はフランス・パリ。フランス国民が右玉を目撃した瞬間である。
当時の中継サイトに棋譜が残っているので、まずは堪能してほしい。

2008年10月18日(土)・19日(日) -七番勝負第一局- ▲渡辺 明竜王-△羽生善治名人

穴熊 vs 右玉の「焦土作戦」

後手の持駒:角 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v玉v金 ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂v銀v銀v歩v桂v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 ・ 銀 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 歩 桂 ・ ・|七
| 香 ・ 金 金 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:角 
後手番
手数=47  ▲6八金  まで

穴熊 vs 右玉の図。先手が渡辺竜王(当時)、後手が羽生名人(当時)だ。
この時点で先手作戦勝ちにも思えるが、ソフト的には互角。

手が進んで、次の局面。

後手の持駒:角二 歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v玉v金 ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v桂v銀v銀 ・v桂 龍 ・|三
|v歩 ・v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 ・ 銀 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 歩 桂 ・ ・|七
| 香 ・ 金 金 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:金 歩 
後手番
手数=55  ▲2三龍  まで

先手は角・金交換で飛車成に成功。さらに桂馬取り。先手持ちという気分になるが、ソフト的に互角。羽生の慧眼に驚くしかない。

後手の持駒:歩三 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v玉v金 ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v桂v銀v銀 金 龍 ・ ・|三
|v歩 ・v歩v角v歩v歩v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 銀 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩v馬 桂 ・ ・|七
| 香 ・ 金 金 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:桂 歩二 
先手番
手数=64  △6四角  まで

さらに手が進んで、4三金打と張り付いたところに、6四角打。この手が好手でバランスを維持している。当時の棋譜コメントを見ると驚きで受け止められているが、ソフトの第一候補手でもある。

後手の持駒:金二 銀 歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v玉v金 ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v角 ・ 龍 ・ ・|三
|v歩 ・ 歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 銀 ・v歩 ・v馬 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 桂 ・ 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| 香 ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:銀二 桂 歩五 
後手番
手数=81  ▲7七桂  まで

と金を桂馬で払ったのが、ソフト的に悪手。形成が後手に揺れ動いた。同銀なら互角だった。次の手が名手。

後手の持駒:金二 銀二 歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v玉v金 ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・ ・ ・ 龍 ・ ・|三
|v歩 ・ 歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩v角 ・v歩 ・v馬 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 桂 ・ 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| 香 ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:銀二 桂 歩五 
先手番
手数=82  △8六角  まで

角切り一閃。読みきれないと指せない手で、控室も驚き。これもソフトの候補手。

結局、この角を渡辺竜王は取り切れず、最後は羽生が即詰みに討ち取って解消。右玉党に勇気を与えてくれる一局だった。

なお、このときの竜王戦は、両者いずれが勝っても永世竜王というなるシリーズで、羽生が3連勝したあと、4連敗したことでも有名。
羽生が永世竜王になるのは、2017年まで待つことになる。

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