2018年12月25日に行われたA級順位戦広瀬竜王-糸谷八段戦で、糸谷八段が右玉を採用してくれた。
糸谷八段は角換わりの名手で、右玉もちょくちょく採用することでも有名。右玉党としては、対振り飛車用右玉・糸谷流右玉で知っている人も多いだろう。
対する広瀬竜王は、羽生九段から竜王を奪取したばかり。レーティングもトップクラスで現代最強棋士の1人と言えよう。
というわけで、棋譜は以下からどうぞ。
2018-12-25 順位戦広瀬章人 竜王 vs. 糸谷哲郎 八段 第77期順位戦A級6回戦
一手損角代わり vs 早繰り銀へ
対局は糸谷八段の一手損角代わりでスタート。
糸谷八段は、現代将棋の思想 ~一手損角換わり編~という著書もあるくらい、一手損角換わりのスペシャリストだ。
対する広瀬竜王は早繰り銀で対抗。
というのも早繰り銀は一手損角代わりの天敵ともされていて、それが一手損角代わりの減少の理由の1つになっている。
最小限の囲いで広瀬竜王が仕掛け。この歩は素直に取るしかない。この局面はほぼ互角。
糸谷八段は8一飛と引く。
ここで先手の攻めの手は3四歩と2四歩がある。
気になるのは、2四歩の進行。
一例を上げると2四歩、同歩、同銀、同銀、同飛、2三歩打、2八飛と進む。
この局面で右玉に囲うのが一局だが、6五桂か8五桂が成立しそう。評価値はほんのわずかに後手だが、ほとんど互角だ。
というわけで、広瀬竜王は3四歩打を選択した。
後手は右玉へ
先手が7八金とした局面で、後手は6二玉と右玉へ。
これで早繰り銀 vs 右玉の戦いになった。
この時点での評価値は互角だが、先手が200点ほどよし。
歩交換後に反撃のタイミングがあるかもしれない
先手から2四歩、同歩、同銀と歩交換してきた場面。ここで糸谷八段は2三歩打と収める。
ここは意外と勝負どころで、2三歩打、3五銀と引いた局面は先手がよさそう。
というわけで、この局面をソフトに深く読ませてみた。
ソフトの候補手は5五角打! 同じ局面になったらぜひ指してみてほしい手。
先手の対応は4六角打しかなく、ほかの手は後手有利になる。
具体的には、1八飛は2七歩打、3七角打は同角成、同桂、3六歩打だ。
4六角打に対しては、同角、同歩、3七歩と垂らす。
同桂は3六歩打がある。
先手の対応は4七角打が最善手だが、先手としても打ちにくい角だろう。
いずれにしても先手は角を手放す手が必要になるので、後手としても面白い。
なお、この歩を放置してしまうと、2七歩打、同飛、3八歩成があって後手成功だ。
先手がじりじりと優勢を広げる
少し進んで先手は5六角打。
この角打ちは対右玉の常套手段。この時点でソフトの評価値は先手よりの+500超え。右玉作戦負けの局面と言えるかもしれない。
先手確実に受ける
終盤戦。糸谷八段は鋭い手を連発するが、広瀬竜王は確実に受ける。
まずは、8八歩打。
この歩を取ってしまうと、一気に逆転。同たまなら6八角成が空き王手。
同金は、6八角成、同玉、8八飛成で先手崩壊だ。
広瀬竜王は8五歩打。これがソフトも推奨の上手い切り返し。局面は8九歩成、同玉で6八角成と勝負。
先手が馬を取ってくれれば逆転模様だが、8四歩と飛車を取るのが冷静だ。
広瀬竜王、華麗に決める
後手は玉を追ったところで6四歩打と受ける。後手玉に詰みはない。
広瀬竜王はどのように寄せたか考えてみて欲しい。3手目を見て糸谷八段は投了した。
8三飛打、7三桂打に2四飛!
盤上の駒を活用する好手で先手に受けはない。6五歩は6四歩打から17手詰み。
というわけで、広瀬竜王の快勝になってしまったが、右玉NOWは糸谷八段を応援します!