右玉(みぎぎょく)とは将棋の戦法の1つ。
名前の通り、玉は右側、飛車を下段に落とし守備に効かせるというのが特徴だ。
ともあれ、右玉の基本形を見てもらおう。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|一 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二 |・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩|六 | ・ 歩 角 銀 歩 銀 桂 ・ ・|七 | ・ ・ 金 ・ 金 玉 ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし
角換わり右玉、対振り飛車の糸谷流右玉などバリエーションも多いが、玉が右側、右桂が跳ねており、飛車が下段ならほぼ右玉と言ってよいだろう。ただし、振り飛車の美濃囲いなどは玉は右にあるが、右玉とは呼ばない。
右玉はアマチュアに人気の戦法で、プロの公式戦に出てくことは滅多にない。
……と以前は言っていたが、近年は公式戦でも右玉を採用する棋士が増えてきた。あの藤井聡太六冠も右玉を採用して快勝したことがあるし、羽生善治九段が1日2回右玉を指したこともある。さらには、人類を超える実力を持つコンピュータ将棋ソフト同士の対局でも右玉が出現することがあるのだ。
2019年に刊行された将棋戦法事典100+の「人気戦法ランキング」では堂々の13位。もはやマイナー戦法とはいえないだろう。
ちなみに将棋の戦法は飛車をそのままの位置で戦う「居飛車」と、飛車を横に動かす「振り飛車」の2種類に大別されるが、右玉は「居飛車」という扱いになっている。ただ、四間飛車党との相性も良いと言われており、振り飛車的な戦いも可能だ。
続いて、右玉を指すうえで心に留めておきたいところを解説する。
基本的には後手向けの戦法
右玉は基本的には後手の戦法だ。
右玉の魅力は、千日手に持ち込む変化が多数あることで、後手番で得になるケースが多い。逆に言えば、右玉側からは仕掛けにくい局面にもなりやすい。なので、後手番で推奨となる。
ただし、アマチュア同士の対局、ネット将棋などは先手番でも気にせずガンガン指して問題ない。もちろん、プロ棋士も先手番で右玉を指している。「攻める右玉」として攻めていく作戦もある。が、手詰まりになる可能性が高いことだけは心に留めておこう。
右玉にできない戦型も多い
相手の指し方によっては右玉にできないこともある。
これは、どの戦型でも言えることだが、右玉にも当てはまる。
具体的には早石田、筋違い角などの相手には右玉にしにくい。無理やりできないことはないが、推奨はできないだろう。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀v金v玉v金v銀v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v角 ・|二 |v歩v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七 | ・ 角 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 銀 金 玉 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 後手番 手数=3 ▲7五歩(76) まで
早めに7筋を付く早石田。後手は右桂(後手視点)を跳ねにくいので右玉にはしにくい。素直に左に囲おう。
後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀v金v玉v金 ・v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・|二 |v歩v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ 角 ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 銀 金 玉 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 後手番 手数=5 ▲4五角打 まで
1歩得を狙う筋違い角。右玉にできることはできるが、メリットは少ない。筋違い角用の対策を持ったほうがよいだろう。

右玉の長所は堅さより広さ
右玉の守備力は非常にもろく、一度手が付いてしまうと、あっという手間に寄せ切られてしまうこともある。
一方で、右玉には広さがある。玉の周辺が戦場になったら(なりそうなら)、早めに逃げることが大事。場合によっては、左端まで大移動することもあるのだ。
以下図は藤井聡太六冠が指した右玉より。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・v玉 ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・ ・v金 ・v角 ・ ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀 ・v金 ・v歩 ・|三 |v歩 ・v歩v歩v歩v歩v銀 ・v歩|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・v歩 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ ・ 歩|六 | ・ 歩 桂 銀 角 銀 桂 ・ ・|七 | 香 ・ 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八 | ・ ・ 玉 ・ ・ ・ 飛 ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:歩 手数=55 △6一玉 まで
9筋で戦いが起こることを予想して、7二にいた玉を早めに△6一玉。この呼吸が右玉を指すときに大事になる。
右玉の種類
右玉には角交換型、角交換をしないもの、矢倉右玉、風車(雁木)右玉、セカステ右玉、対振り飛車の左玉、糸谷流右玉など、数多くの種類がある。詳しくは以下のエントリを参考にしてほしい。

右玉の勉強法
右玉に興味を持っていただけただろうか?
続いては勉強法について解説した以下のエントリを読んでほしい。

右玉の歴史
ところで右玉っていつからあるのだろうか? 最近? それとも大昔からある?
そんな疑問を持つ人は、以下のエントリをぜひ読んでほしい。
