2019年1月18日の王位戦予選で、佐々木大地四段が広瀬竜王に対して、変則的ながら右玉を採用してくれた。
佐々木大地四段といえば、若手強豪。本対局の直近12戦で11勝1敗と好調だ。
昨年度は王位戦挑戦者決定リーグにも進出している。
一方の広瀬竜王は言わずとしてれた現役最強棋士の1人。
本対局は角換わり腰掛け銀の同型から後手が右玉に変化し、薄い陣形ながら広さを生かす展開に。
厳密には右玉かどうか微妙だが、右玉感覚が重要になってくる一局だったと思われる。
というわけで、棋譜は以下からどうぞ。
2019-01-18 王位戦広瀬章人 竜王 vs. 佐々木大地 四段 第60期王位戦予選
序盤は角換わり腰掛け銀の同型模様
序盤は角換わり腰掛け銀。4八金型と6二金型という最先端の形だ。
後手は中住まい、先手は7九玉と変化する。
後手、特殊な形の右玉へ
先手は入城。後手は飛車を4筋に転回し、6二玉と寄せて右玉へ。
この形が右玉かどうかは微妙なところだが、右玉NOWでは右玉ということにさせてもらおう。
薄い右玉に対して後手のほうが堅いイメージですでに評価値に差がありそうなイメージがあるが、ソフト的にはほぼ互角。後手としては十分な形かもしれない。
ただし、アマチュアがこの形をまとめ切るのは難しいだろう。
先手も飛車を4筋に回し、後手が銀を引いたところで先手から4五歩の仕掛け。
後手は同歩と取らず、4三銀、4四歩、同銀と進む(上図)。
ここまでは自然の進行だ。
モバイル中継アプリによると、次の広瀬竜王の手が問題だったようだ。
この時点でのソフト評価値は-1。千日手を中心に読んでいる。
自然に見える広瀬竜王の緩手
先手は4五歩打。
自然な一手にしかみえないが、この手が緩手。評価値はそのままなので悪手とまではいえないだろう。
3三銀引きに対して6七銀。
ソフト的にはこの手が悪手である。4七銀引きならば互角のままだった。
6七銀には、桂頭を狙う3五歩が成立してしまう。
佐々木四段、好手の連続
3五歩に対して、2七角打。
ここで角を打たなければならないとなると、先手がかなり苦しいだろう。
この時点ではソフト評価値は後手に600(後手有利)。
次の佐々木四段の一手もさすがの好手だった。
2六角打!
これがソフトも推奨する好手。
4七金や4七飛は、4六打があるため、先手は3八飛と回って受けるしかない。
続く一手も素晴らしい。
1五歩!
この手以外は互角に戻ってしまう。2六角打からの継続手だだろう。
同香とすると、1七角成がある。これは先手崩壊。
同歩とする手には、1六歩打。同角が最善手となるが、1五香と走る手がある。
広瀬竜王は仕方なく3五歩としたが、1六歩が入った。
広瀬竜王、強手の連続
優勢を築く佐々木四段だが、後手の陣形も薄い。ここから広瀬竜王がさすがの強手連続で迫っていく。
1七歩成に対して5四角と角切り。
同歩に対して4五桂!
同銀とトルと、3二飛成があるので、これは取れない。
後手としては先手を取る3七歩打と3五歩打で悩ましいところだ。
佐々木四段は迷って3五歩打。こちらも正解手だった。
さらに進んで次の局面。
6五歩、同歩とした局面。次の広瀬竜王の手は驚き。
なんと6五銀!
銀を犠牲に歩を入手する強手。
同桂に6四歩打がかなりうるさい。後手優勢は間違いないが、少し間違えてしまうと逆転してしまう。
佐々木四段は堂々と同歩。5三銀打が継続手。
ここの対応も難しい。
佐々木四段は同飛と精算を選ぶ。後手は飛車の打ちどころが多いだけに怖いが、この手が一番良さそうだ。
佐々木四段が隙きを見せずに完勝!
先手は5一飛打。先手陣はまだ遠く、駒割も回復されてしまうのでここからの対応も重要だ。
4三玉、9一飛成に7六桂成を敢行。同桂に6六桂打と攻め合いを目指す。
6八金に、6八桂成とせず、4七角打と飛車取りをかけた手がまた好手。
先手は飛車を取られると入玉を防げないが、飛車を逃げている余裕もない。
以下、4一龍、4二歩打、4四桂打、同玉、3二龍で、3八角成と飛車を取った時点で広瀬竜王は投了。持駒も足りず、投了はやむなしだろう。
というわけで、佐々木四段が右玉で、現在最強とも言える広瀬竜王完勝した一局。
右玉NOWは、佐々木四段を応援します!