右玉の棋書の中から、今回は「とっておきの右玉」を局面図とともに紹介したい。
著者はアマ強豪の細川大市郎氏。奥様は安食女流のため、ネット上では「あじ夫」といわれることも。
将棋ウォーズでは「whitealbum」というニックネームで知られている。
ちなみに将棋ウォーズの右玉エフェクトで「誰?」と思った人もいるかもしれないが、実は細川氏なのである。将棋ウォーズのネット番組によく出演していた縁からだろう。
本書の特徴は、角交換の右玉(左玉)のみ扱い、基本的に先手番での解説ということ。後手番は千日手を狙うという指針になっている。
取り上げているのは6七銀型(風車右玉)、対振り飛車左玉、7七銀型(矢倉右玉)。さらに、右玉党としては気になる地下鉄飛車対策、5四角打対策、銀冠対策もあるのはうれしい。
発売は2009年で、約10年前となる。
本レビューは、購入を迷っている人はもちろん、すでに所有している人向けのガイドとしても役立ててほしいところだ。
2019年3月現在、在庫切れのためかプレミア価格が付いてしまっているので、Kindle化をお願いしたい。
第1章 先手右玉6七銀型対居飛車
第一章は角交換型風車右玉の基本形の解説になっている。
駒組みの方法、相手が隙きを見せたときに対応方法も紹介している。
先手右玉6七銀型対居飛車
第一章の基本形。この形を指すことが多い人は必見。ソフトの評価は全くの互角。先手としてはおいしいわけではないが、右玉党としては十分だろう。
対△6二金待機策
基本形から6二金と待機した場合の対策。
対△6二飛待機策
基本図から後手が6二飛としてきた場合の対策。
第2章 先手右玉6七銀型対振り飛車
第2章は後手が振り飛車にしてきたときの対策。先手は右玉ではなく、左玉に組む。
先手右玉6七銀型対振り飛車
第2章の基本図。第1章ではここから後手が居飛車とする場合だったが、ここでは振り飛車を想定している。
対四間飛車美濃囲い
最初は後手が四間飛車にした場合の対策方法。
先手の狙いは上図のような左玉に組むこと(P40)。上の局面は作戦勝ちで、先手やや優勢。
対四間飛車穴熊
後手が四間飛車穴熊に組んだ場合の対策。
対向飛車穴熊
最後は向飛車にしてきた場合。こちらも左玉を目指すが、細かい変化まで踏み込んでいる。
第3章 先手右玉7七銀型対居飛車
第3章は角換わり矢倉右玉について解説。
先手右玉7七銀型対居飛車
基本形は上図の通り。右玉の中でも人気の形かと思われる。
後手△9四歩
最初は9四歩と突いてきた場合。多彩な変化が紹介されている。
後手△7三桂
7三桂と跳ねてくる手も十分考えられる。
後手△4二金
4二金と堅めてきた場合。後手は穴熊を狙っている。
後手△6五歩
6五歩と突いてきた場合。この後、後手は6四角と設置する指し方が有力だが、残念ながら変化は触れられていない。
後手一直線穴熊に
最後は穴熊を目指した場合。簡単に1ページだけ解説している。
第4章 後手右玉千日手成立の有無
第4章では後手右玉で千日手を目指す方法を解説。
後手右玉千日手成立の有無
基本図。手待ちの方法、相手の猛攻を受け切るための方法など。
第5章 いろいろな右玉の変化
第5章では右玉を指していてよくある局面の変化を紹介している。
地下鉄飛車
右玉の天敵・地下鉄飛車への対策を解説。
地下鉄飛車2
少し違う形での地下鉄飛車対策。少し変わった方法で受ける手を紹介している。
対銀冠1
銀冠も右玉対策として有力な手段。角打ちから打開する手順を紹介している。
対銀冠2
銀冠対策の2つ目。8筋からの逆襲手段を解説。
△5四角の攻防1
後手が5四角と設置してきた場合の対策。この手に苦戦する右玉党も多いハズ。
△5四角の攻防2
3一玉、5四歩が入ったあとの5四角打への対策方法。
△5四角の攻防3
3筋と7筋の歩を突き捨ててから5四角と打ってきた場合の対策。受けがないようだが、対策はある。
対一手損角換わり
対一手損角換わりで、相手が飛車先を切ってきた場面。ここで7五歩とする指し方を紹介している。
ダイレクト向かい飛車対策
第2章では6六歩とした局面で、ダイレクト向飛車を牽制するために、9六歩とする指し方を紹介する。
相右玉の戦い
最後は相右玉の戦い。右玉党が増えている今、アマチュア同士ではよくある局面。端攻めを狙う展開に。
第6章 角換わり右玉自戦記
6章は細川アマの実戦記。対吉田正和アマ(現在は渡辺正和五段)戦、山寺清志マア戦の2局。
以上、「とっておきの右玉」のレビューでした。