2019年5月20日に行われた王座戦挑戦者決定トーナメントで、後手の羽生善治九段が右玉を採用してくれた。
羽生九段は言わずとしれた棋界のスーパースター。オールラウンダーの棋風もあって、過去に右玉を採用したことも当然ある。
対するのは近藤誠也六段。
若手強豪で本局直前まで5連勝中。22歳の若さでB級2組在籍している。
本局は7ニ金型の変わった右玉 vs 早繰り銀の戦いになった。
棋譜は以下からどうぞ
2019-05-20 王座戦近藤誠也 六段 vs. 羽生善治 九段 第67期王座戦挑戦者決定トーナメント
後手、7ニ金玉型の変則右玉へ
序盤は一手損角換わりで先手は早繰り銀を指向。
対する後手は7ニ金型から玉を右を寄せる。
先手は▲3五歩、△同歩、▲同銀と進出するが、後手はじっと△1四歩。
この後、先手は▲4六銀と引いて攻めを自重するが、▲2四歩と突いたらどうなるのだろうか?
変化図1
▲2四歩、△同歩、▲同銀に△2七歩打が痛打(上変化図)。
▲同飛としてしまうと、△4九角打でゲームセット。
▲3八飛とした場合も△4九角打が決まる。
従って、この形でいきなり攻めることはできない。
後手、飛車を3筋に転回
後手は3筋に飛車を回る。7ニ金型の効果で8筋から飛車が消えてもで8筋、9筋からの攻めには比較的強い。
対する先手は右玉崩しの▲5六角打。この時点のソフト評価値は互角。
後手は△2ニ金と飛車先を軽くし、▲3五歩、△1五歩、▲7五歩、△同歩、▲8六銀、△7六歩、▲7五銀と進行(上図)。
△4四銀に対して、先手は待望の▲2四歩、△同歩、▲同飛、△2三歩打、▲2三角成(上図)。
角を犠牲にする強烈な手。ここで同金しかないようなら、先手優勢だが返し技がある。
△3五銀!
ソフトの読み筋でもある手。
▲同銀、△同飛、▲2ニ馬のあと、△3九龍と王手入り、後手としても成果を得た。
後手、苦心の組み立てで飛車成を防ぐ
先手が▲2三馬と引いて、自陣に効かせた局面。
後手は△2ニ歩打。同馬としたら一手損になるだけなので、先手は▲6七馬と引き付ける。
後手は△3三角と打って、飛車に当てつつ、飛車成を防ぐ。
先手、好手を逃す
上図は本局のハイライトともいえる局面。
本譜は▲6三銀と打ち込んだが、これは悪手。この局面では「盤面この一手」とも言える好手があったのでじっくり考えてみてほしい。
変化図1
正解は▲5五桂打!
同角でも同銀でも取れるが、同角は3ニ飛成がある。
一方、同銀は7ニ馬から寄り筋(取ると詰み)。
従って、△5一玉と逃げるのが最善手だが、そこで▲5四飛と切り飛ばし、△同歩、▲4三桂成が厳しい(以下、変化図2)。
変化図2
馬が利いているため、自陣に詰みはない。これは先手勝勢だろう。
本譜は▲6三銀の放り込みから飛車も切って精算をしたが、後手玉はわずかに詰まず。
△5五玉で先手は投了した。
というわけで、終盤は後手にも危険な局面があったが、全体には羽生九段がうまく指しまわして勝利した一局となった。
右玉NOWは今後も羽生九段を応援します!