2019年5月26日に公開された第2回AbemaTVトーナメントにて、伊藤沙恵女流三段が右玉を採用してくれた。
AbemaTVトーナメントとは、持ち時間5分、一手指すごとに5秒追加されるフィッシャールール採用の超早指し戦(非公式戦)。
伊藤沙恵女流三段は女流の大会を制し、今回大会に参戦。奨励会出身で、女流タイトルこそないが、タイトル戦は6回の経験がある女流の強豪だ。
対する八代弥七段は朝日杯優勝の実績がある若手のホープ。棋士レーティングも上位だ。
↓以下から視聴できます
第2回AbemaTVトーナメント 予選Cブロック<前編>
棋譜は以下からどうぞ
2019-05-26 その他の棋戦八代 弥 七段 vs. 伊藤沙恵 女流三段 第2回AbemaTVトーナメント予選
右玉作戦勝ち
伊藤沙恵女流三段の作戦は右玉。
端は詰められたが6筋の位も取り、右玉作戦勝ちといってもよいだろう。
右玉は銀多伝の形。理想形に組み替えることに成功した。
後手、5四角を放つが……
後手は5四角打。
5四歩を保留した効果でこの角が打てる。
ただ、玉頭と桂頭を狙っているが、ソフト的には悪手だったようだ。
6七金と形良く受けられて、評価値は先手有利になった。
右玉、角を犠牲にして玉頭にプレッシャーをかける
少し進み、先手が5五歩と角の行き先を問うた場面。
後手は6五角の勝負手!
先手の3三歩成は放置して、6六歩打。後手有利の局面に。
先手は先に6六歩と打ったほうが良かったかもしれない。
3三金、3六銀のあとに、後手は6七銀の打ち込み。
先手として受けにくい局面になってきた。
後手、痛恨の一手パスの悪手
局面は後手が継ぎ歩をしてきたところ。次の先手の一手は善悪はともかく勝負手だった。
9六桂打!
8六歩の取り込みは歩の連打で飛車先を止めようとする作戦だ。
後手は7五歩、同歩に7六金!
先手は4九角打で粘る。持ち時間が超短いだけに焦る一手。
7七金、同玉に6七金打で玉が逃げ出すことを防ぐ(上図)。
先手は8八玉と逃げて、7六銀と進出するが、これが痛恨の悪手だった。
9八角打!
これが受けの好手。
後手は進んだばかりの銀を戻るしかなく、形勢は一気に逆転、先手優勢に。
右玉再逆転でチャンス到来
その後玉頭を巡る戦いを経て、右玉にチャンスが周ってくる。6八歩打と金取りに対して、7七歩成、同桂とした局面。
ここで先手勝勢となる一手があったので考えてみてほしい。
金取りが残っており、忙しいが……。
変化図1
8四金!
ここで金駒の補充が好手。
先手は同金とする余裕はなく6七歩で金を外すしかないが、そこでさらに8三金! で金を補充しつつ自玉が安泰に。
変化図2
この局面は後手右玉の勝勢だ。
本譜は7六打、6七歩、7七歩成、同玉を入れてから8四金としたが、玉の逃げ道が開けてしまった。
先手、確実に寄せる
最終盤。先手は中盤に放った角が見事に働いた。後手は6三金打で頑張るが、この局面から7一銀打が、必死級の手。同飛以外は詰みなので後手投了となった。
なお、この局面は13手詰みもある。自信のある人はチャレンジしてみてほしい。
正解はこちら。
というわけで、対局は八代七段の勝利に終わったが、伊藤女流三段の右玉からの攻めも強烈で、一時は勝勢まで持ち込んでいた。右玉党にとっても参考になる指し回しだっただろう。
右玉NOWは今後も伊藤沙恵女流三段を応援します!