90年前にも右玉があった! 1919年に指された右玉を解析

プロの右玉

記録に残る一番古い右玉の棋譜はなんだろう? と思い立って調べてみたら、将棋DB2に1919年(大正8年)に指された右玉の棋譜が残っていた。

今から90年前にも右玉は存在したのだ!
これが右玉最古の棋譜というわけではないかもしれないが紹介したい。

90年前に右玉を指したのは、宮松関三郎八段。当時の段位は不明だが、Wikipediaによると1928年に七段ということなので、五段か六段だろうか? 将棋に関する著作もあり、駒づくりの名手でもあったらしい。

対する森永龍棋士については、ネット上でもほとんど情報がない。棋譜はそこそこ残っているのだが……。名前についても、森永 龍なのか、森 永龍なのかも微妙だが、「森 永龍(もり えいりゅう)」が正しいとのこと。

http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/bgame/1302309067/より

46 :名無し名人:2011/05/03(火) 02:11:38.60 ID:q4EvTVbV.net
前スレで大正時代の棋士 “森永龍”氏の名前の読み方について質問がありましたが”もり えいりゅう”が正しいです

某棋士の自伝を読んでて判明しましたので亀レスですが…

というわけで、棋譜は以下からどうぞ
1919-10-20 その他の棋戦森永龍 vs. 宮松関三郎 その他の棋戦

右玉 vs 穴熊の戦いに

後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v玉v金 ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v桂v銀 ・v銀v角v歩v歩|三
| ・v歩v歩v歩v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 玉 金 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 角 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=32  ▲6二玉  まで

戦形は先手の金矢倉に対して、後手が右玉!
繰り返すが、90年前の将棋である。

後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v玉 ・v金 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v銀 ・v銀v桂v歩 ・|三
|v歩v歩v歩v歩v歩v角v歩 ・v歩|四
| ・v桂 ・ ・ ・ 桂 ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 金 ・ ・ ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ 銀 ・ ・ ・|八
| 香 桂 角 ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩 
手数=46  △8五桂  まで

後手は、角筋を通し、8五桂と跳ねる積極的な仕掛け。
厳密にみると無理がある感じだが、迫力はある。

後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v玉 ・v金 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v銀 ・v銀v桂v歩 ・|三
|v歩v歩v歩 ・v歩v角v歩 ・v歩|四
| ・v桂 ・v歩 ・ 桂 ・ 歩 ・|五
| 歩 銀 歩 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ 銀 ・ ・ ・|八
| 香 桂 角 ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩 
手数=48  ▲6五歩  まで

先手は8六銀と逃げる。この銀は逃げなほうがよかった。
これなら後手もやる気が出るだろう。

右玉、緩手で逆転

後手の持駒:桂 歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v玉 ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v金 ・v銀 ・v歩 ・|三
|v歩v歩v歩v銀 ・ ・v歩 ・v歩|四
| ・v桂 ・v歩v角 歩 ・ 歩 ・|五
| 歩 銀 歩 ・ 桂 ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・|七
| 玉 銀 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 角 ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩三 
後手番
手数=63  ▲5六桂  まで

少し進んだ局面。ここまでは互角ながら右玉がやや良さそうだったが、次の一手で逆転する。

後手の持駒:桂 歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v玉 ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v金 ・v銀 ・v歩 ・|三
|v歩v歩v歩v銀 ・ ・v歩 ・v歩|四
| ・v桂 ・v歩 ・ 歩 ・ 歩 ・|五
| 歩 銀 歩 ・ 桂 ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 金 ・ ・v馬 ・ ・|七
| 玉 銀 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 角 ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩三 
手数=64  △3七馬  まで

3七角成!
6四桂に同馬として守備を高める目的だろうが、角は攻めに使いたかったところ。
素直に7三銀と引いておいて、後手良しだった。

後手の持駒:銀 桂二 歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v玉 ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v桂 ・v銀 ・v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v馬 ・ ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・v歩v歩 歩 ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 金 角 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|七
| 玉 銀 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:金 銀 歩 
後手番
手数=79  △6六歩  まで

右玉最後のチャンスがこの局面。中央をめぐる争いをしているが……。

変化図1

後手の持駒:銀 桂 歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v玉 ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v桂 ・v銀 ・v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v馬 ・ ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・v歩v歩 歩 ・ 歩 ・|五
| 歩v桂 歩 歩 金 角 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|七
| 玉 銀 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:金 銀 歩 
手数=80  △8六桂  まで

8六桂と打てば、まだまだ戦えそうだった。
9七玉と逃げる手は7八桂成で勝ちなので、同歩と取るしかないが、

変化図2

後手の持駒:銀 桂 歩二 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v玉 ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v桂 ・v銀 ・v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v馬 ・ ・v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・v歩v歩 歩 ・ 歩 ・|五
| 歩v歩 歩 歩 金 角 歩 ・ 歩|六
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|七
| 玉 銀 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:金 銀 桂 歩 
手数=82  △8六歩  まで

先手も危険な格好に。正確に指せば先手がいけそうだが正しく受けないと一気に崩壊しそう。
本譜は5四銀と応援に回したが、先手の攻めが好調となる。

勝負が付いてから長い! 長すぎる!

後手の持駒:金二 銀 桂二 歩二 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v玉 ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v桂 ・ ・ ・v歩 ・|三
|v歩 ・v歩 全 角 ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・v歩 歩 ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・v銀 角 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|七
| 玉 銀 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩二 
後手番
手数=89  ▲5四角  まで

先手が5四角と打って優勢から勝勢な局面。この時点で89手だが、ここからが長い!
先手の攻めはかなり正確だったので後手の受けもしっかりしていると言えるかもしれない。

後手の持駒:金 桂二 歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| 龍 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v銀v金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v玉 ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・|三
|v歩 ・v歩 ・v角 ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・v銀 ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩v桂 ・ ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|七
| 玉 銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:角 金 銀 香 歩五 
手数=142  △8二銀  まで

粘りに粘って142手目の局面。ここは11手詰みがある。
短手数だが、意外と難しいのか見逃してしまったようだ。現代の棋士なら秒読みでも余裕だと思う。答えを書くので考えてみてほしい。

詰将棋正解

後手の持駒:金 桂二 歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| 龍 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v銀v金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v玉 ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・|三
|v歩 銀v歩 ・v角 ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・v銀 ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩v桂 ・ ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|七
| 玉 銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:角 金 香 歩五 
後手番
手数=1  ▲8四銀  まで

正解は、8四銀打(8四金打も可)!
本譜は9ニ角打だが、詰まない。9二銀も8四玉なら詰むが、9三か7三に玉が逃げれば詰まない。

8四銀打、同玉に6二角打! が好手。以下、7三銀、9四龍! 同玉、9五香、8三玉、9三金打、8四玉、9四金で詰み。

7三銀に変えて、7三桂打の場合は9五金打、同歩、同龍、8三玉、8四香で簡単に詰む。8二の銀が邪魔になるのだ。

一方、8四金打の詰み筋はこちら。こちらのほうが短手数なので筋はよさそう。

後手の持駒:金 銀 桂二 歩二 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ 馬 ・ 龍 ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v金v金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
|v玉v銀 ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・|三
|v歩 香v歩 ・ 金 ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|七
| 玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:角 銀 桂 歩五 
後手番
手数=168  ▲8四香  まで

本譜は粘って168手まで指したが、8四香打で後手投了。
というわけで、90年前の右玉は負けになってしまったが、大正時代にも右玉があったことにロマンを感じずにはいられない。

また、これより古い右玉の棋譜をご存じな方がいらっしゃれば、掲示板で教えてもらえると幸いです。