今回も少し古い右玉の名局を紹介したい。
舞台は1996年の将棋日本シリーズの羽生善治六冠(当時) vs 米長邦雄九段(当時)。
後手の米長九段が右玉を採用し、積極的に攻めていった一局で、右玉党にとって参考になる手筋もあり、並べる価値は十分にある。
先手の羽生善治六冠は、前年にタイトル独占の七冠を達成。棋聖を三浦弘行九段に奪取されて七冠独占は崩れたものの、六冠を維持中。
後手の米長邦雄九段は、タイトル獲得19期の超一流ベテラン棋士。全盛期は四冠も達成。2年後の1998年からは現役のまま永世棋聖を名乗っている。破天荒なキャラクタでもお馴染み。2012年没。
なお、将棋日本シリーズは持ち時間10分、切れたら一手30秒の早指し棋戦である。
棋譜は以下からどうぞ
1996-09-22 将棋日本シリーズ羽生善治 vs. 米長邦雄 日本シリーズ
後手、飛車先の歩を受けずに右玉へ
先手は矢倉模様。後手は飛車先を受けずに玉を右へ。
先手は2筋の歩交換を角で取り、後手は4五歩と角筋を通す。
後手はここで飛車を引いて右玉を完成させた。
右玉、積極的に仕掛ける
先手が飛車を引いた形。現代風と比べると、4八の銀と6七銀の位置が逆か。
ここで、右玉が6五歩と仕掛ける。
同歩、同桂、6六銀に6四銀と桂馬を支える。
3五歩に対して、6三金とし、上部を手厚い格好に。横からの攻めには弱く、間違っても飛車は渡せない。
後手は3六歩と桂頭を狙う。次の一手が羽生六冠らしくない悪手だったか。最善手(評価値は互角)を予想してみてほしい。
変化図
4五桂!
これが好手。同銀でタダやんとなるが、7七桂、同桂成、同角、8六桂打、同歩、同歩、8五歩打、同飛、6五歩がソフトの読み筋。
銀をそっぽに向かせることで、後手玉が弱体化するようだ。
本譜は2五桂。自然なようだが、形成は大きく後手傾いた。
後手、角切りの強襲
少し進んだ局面。ここで、右玉は対矢倉の手筋というべき、角切りの強襲を行う。
6六角! と角をぶった切る。
同金に、5七銀打!
これが角金両取り。対矢倉でよくある筋なので覚えておきたい。
本譜は同角、同桂成と進行する。
右玉、さらに手筋で迫る
後手の9七角打に、6七歩と金を支えた局面。
8六桂打!
これも矢倉崩しの基本手筋だ。同歩、同歩で先手玉に危険が迫る。
最後は3手詰みまで指して投了
終盤は大差が付き、6九角打で先手投了。同玉は頭金。7一玉も頭金。7七玉は、8七右角成まで。
というわけで、米長邦雄九段が右玉から積極的に攻めて勝利した一局となった。