王座戦挑戦者決定戦トーナメントで、先手の羽生九段が角交換をしない右玉(風車右玉)を採用してくれた。
この対局の後手は佐々木大地五段。
右玉NOW的には佐々木大地五段得意のセカステ右玉を期待していたが、まさかの羽生九段の先手右玉となった。これは右玉党にとって望外の喜び。
ただ、オールラウンダー羽生九段は右玉を指すことは多く、右玉NOWでも紹介しているので、「羽生の右玉」カテゴリでぜひ見てほしい。
本局の棋譜は以下からどうぞ
2019年6月24日 王座戦挑戦者決定戦トーナメント 羽生善治九段 – 佐々木大地五段
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第67期 王座戦 挑戦者決定トーナメント 羽生善治九段 対 佐々木大地五段
※13時間34分あります!
駒がぶつからない長い序盤
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一 | ・ ・ ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v歩v銀v角v歩 ・|三 |v歩 ・v歩v歩 ・v歩v歩 ・v歩|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩|六 | ・ 歩 角 銀 歩 銀 桂 ・ ・|七 | ・ ・ 金 ・ ・ 金 玉 ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 後手番 手数=39 ▲3八玉 まで
先手は玉がやや遠回りをして右玉へ。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香 ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・|一 | ・ ・ ・v角v金v玉v金 ・v香|二 | ・ ・v桂v銀 ・v銀v桂v歩 ・|三 |v歩 ・v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩 歩|六 | ・ 歩 ・ 銀 ・ 銀 桂 ・ ・|七 | ・ ・ ・ 角 金 金 玉 ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=52 △1二香 まで
後手は右玉対策の地下鉄飛車を見せる。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香 ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・|一 | ・ ・ ・v角v金v玉v金 ・v香|二 | ・ ・v桂v銀 ・v銀v桂v歩 ・|三 |v歩 ・v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩 歩|六 | ・ 歩 ・ 銀 ・ 銀 桂 ・ ・|七 | ・ ・ ・ 角 金 金 ・ 玉 ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 後手番 手数=53 ▲2八玉 まで
羽生九段は玉寄りで受ける。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛|一 | ・ ・ ・v角v金v玉v金 ・v香|二 | ・ ・v桂v銀 ・v銀v桂v歩 ・|三 |v歩 ・v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩 歩|六 | ・ 歩 ・ 銀 ・ 銀 桂 ・ ・|七 | ・ ・ ・ 角 金 ・ 金 玉 ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 後手番 手数=55 ▲3八金 まで
1一飛に対して、3八金。これで、1五歩からの仕掛けは成立しない。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|一 | ・ ・ ・ ・v金v玉v金 ・v香|二 | ・ ・v桂v銀v角v銀v桂 ・ ・|三 |v歩 ・v歩v歩v歩v歩v歩v歩v歩|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩 歩|六 | ・ 歩 ・ 銀 ・ 銀 桂 金 ・|七 | ・ ・ ・ 角 金 ・ ・ 玉 ・|八 | 香 桂 飛 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=60 △5三角 まで
後手は8筋に飛車を振り直し、先手も7筋に飛車を転回。この時点で60手となるが、未だ駒はぶつかっていない。形勢も互角。
先手、一歩交換をするが長い序盤は続く
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|一 | ・ ・ ・ ・v金v玉v金 ・v香|二 | ・ ・v桂v銀v角v銀v桂 ・ ・|三 |v歩 ・v歩v歩v歩v歩v歩v歩v歩|四 | ・v歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | 歩 ・ ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|六 | ・ 歩 ・ 銀 ・ 銀 桂 金 ・|七 | ・ ・ ・ 角 金 ・ ・ 玉 ・|八 | 香 桂 飛 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 後手番 手数=61 ▲7五歩 まで
先手は7五歩。待望の一歩を取ることに成功した。
ここからお互いの玉から遠い左辺で戦いが起こるが、長い序盤は続いた。
先手、有利になるも千日手コースへ
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ | 馬 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|一 | ・v歩 ・v角v銀v金v金v玉v香|二 | ・v飛 ・ ・ ・v銀v桂 ・ ・|三 |v歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩 歩v歩|四 | ・ ・v歩 歩 香 歩 ・v歩 ・|五 | 歩 歩 ・ 飛 歩 ・ 歩 ・ 歩|六 | ・ ・ ・ 銀 金 ・ 桂 金 ・|七 | ・ ・ ・v圭 ・ ・ 銀 玉 ・|八 | 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:桂 歩四 手数=110 △6二角 まで
本局でもっとも差がついたと思われるのがこの局面。ソフト評価値は先手勝勢の+1500以上。
馬筋を止められているが、素直に4四桂や5二香成なら有利を維持的かもしれない。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|一 | 馬v歩 ・v角v銀v金v金v玉v香|二 | ・v飛 ・ ・ ・v銀v桂 ・ ・|三 |v歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩 歩v歩|四 | ・ ・v歩 歩 香 歩 ・v歩 ・|五 | 歩 歩 ・ 飛 歩 ・ 歩 ・ 歩|六 | ・ ・ ・ 銀 金 ・ 桂 金 ・|七 | ・ ・ ・v圭 ・ ・ 銀 玉 ・|八 | 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:桂 歩四 後手番 手数=111 ▲9二馬 まで
羽生九段の選択は馬を生かす9二馬。評価値は+900ほどに。
後手の持駒:銀 歩二 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ | ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・ ・ ・|一 | 馬v歩 ・ ・ ・v金v金v玉v香|二 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂 ・ ・|三 |v歩v飛 桂 ・ ・v銀v歩 歩v歩|四 | ・ ・ ・ 歩 香 ・ ・ ・ ・|五 | 歩 ・v歩 飛 歩 ・ 歩v歩 歩|六 | ・ ・ ・ 金 ・ ・ 桂 ・ 金|七 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ 銀 玉 ・|八 | 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 桂 歩四 手数=124 △4四銀 まで
さらに進んで上の局面。まだ先手有利だったが、数手で千日手コースに入ってしまう。
後手の持駒:銀 歩二 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ | ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・ ・ ・|一 | 馬v歩 ・ ・ ・v金v金v玉v香|二 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂 ・ ・|三 |v歩 ・ 桂 ・ ・ 馬v歩 歩v歩|四 | ・ ・ ・ 歩 香 ・ ・ ・ ・|五 | 歩 ・v歩 飛 歩 ・ 歩v歩 歩|六 | ・ ・ ・ 金 ・ ・ 桂 ・ 金|七 | ・ ・ ・ ・ ・v龍 銀 玉 ・|八 | 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:銀 桂 歩四 手数=128 △4八龍 まで
4二角打、8八龍、4四角成、4八龍!
角打ちで飛車銀取りをかけて、4四角成で銀を取ったが、4八龍が好手。
先手が馬取りに対してどう応じても、4七銀打もしくは4九銀打が厳しい。
後手の持駒:歩二 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ | ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・ ・ ・|一 | 馬v歩 ・ ・ ・v金v金v玉v香|二 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂 ・ ・|三 |v歩 ・ 桂 ・ ・ ・v歩 歩v歩|四 | ・ ・ ・ 歩 香 ・ ・ ・ ・|五 | 歩 ・v歩 飛 歩 ・ 歩 馬 歩|六 | ・ ・ ・ 金 ・v銀 桂 ・ 金|七 | ・ ・ ・ ・ ・v龍 銀 玉 ・|八 | 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:銀 桂 歩五 手数=130 △4七銀 まで
2六馬とするが、4七銀打。先手は4九銀打か2九銀打で応じるほかなく、完全に千日手コースに入った。
ソフトで調べても打開は無理そう。
というわけで、本局は千日手へ。
長い戦いの末、指し直しとなった。
そして、驚くべきことに先後入れ替えとなった指し直し局、後手の羽生九段は再び右玉を採用することなる。
こちらの紹介は次回エントリで行いたい。
というわけで、右玉NOWは今後も羽生九段を応援します!