初出で神崎八段の敬称が抜けておりました。失礼いたしました。
2019年7月3日に行われた朝日杯将棋オープン戦の一次予選で、神崎健二八段が先手右玉を採用してくれた。
神崎健二八段は関西出身のベテラン棋士で、現在はフリークラス。居飛車党で角換わりも得意だ。
対する井上慶太九段は同じく関西出身で、稲葉陽八段、菅井竜也七段、船江恒平六段という実力派若手棋士を弟子に持つ。神崎八段とは同い年。
朝日杯は持ち時間40分、切れたら1分の早指し戦。そのため逆転が起こりやすいく、本局も逆転での決着となった。
2019-07-03 朝日杯将棋オープン戦神崎健二 八段 vs. 井上慶太 九段 第13回朝日杯将棋オープン戦一次予選
神崎八段、先手右玉を選択
角換わりしない先手右玉から、結果的に角換わり右玉の形に。矢倉右玉ではなく、風車右玉と呼ばれる形だ。
先手は玉方の桂馬を跳ねる。対右玉で有効な手で、将来的には1筋から雀刺しも考えられる。ソフトの形勢はまったくの互角。このままいけばお互い手詰まりで千日手なのかもしれない。
先手は9筋に飛車を振って雀刺しの体勢に。
後手は、7五歩、同歩、6五歩、同歩、6四歩と攻める。
ここで9四歩がないか考えたいところだが、6五桂と9筋を無視して反撃するのが好手。
9三歩成は、7七桂成、同金、8八角打でゲームセット。
同桂は同歩が次の6六桂打を見て痛い。
というわけで、9四歩は無理そう。
というわけで、先手は2九飛と戻る。このやり取りはわずかに先手が得をしたが、まだ互角だ。
6五歩に、先手は5七角打。
次の6六歩を受けているが、ソフトの評価はよろしくなく、形勢は先手有利に。5七金や2五歩のほうが良かったようだ。
上の局面に進むが、ここは先手作戦負けといえるだろう。
後手、決め手を逃す
先手の細い攻めは切れ、後手の猛攻に先手が耐えている局面。
ただし、お互いに一分将棋に突入している。
この局面で後手は決め手級の手があったようだ。
後手の立場で考えてみてほしい。
変化図
7六桂打!
桂馬を捨てるのが強手。玉が逃げるとすべて詰むので、取るしかないが、8七飛成が厳しい。
4六角成で銀を取りつつ、馬を作られるが後手陣はまだ安全で先手勝勢だ。
本譜は7六歩打。
これも厳しいが、先手に飛車が入ってややアヤが付いてきたか。
先手、逆転で勝利へ
さらに進んで上の局面。後手玉は右玉の面影なく、8筋まで逃げてきた。
一度は互角近くに戻った形勢は、再び後手へ。
ここでも後手に良い手があった。
変化図
4七銀不成!(成もOK)
タダだが、7八角成と王手で入る手があるので、この銀は取れない。
先手の対応は6九銀と引くか、2四飛で角を奪うかの2択だが、両方後手勝勢だ。
本譜は9二桂打で、これも厳しそうだが、形勢は接近。
6八桂打、8五歩打、同金、7七銀歩成、9六玉、6三金、9一飛成と進んで、先手が逆転。
以下、後手の攻めは切れて上の局面で投了となった。
というわけで、序盤から先手右玉が苦戦する展開となったが、最後は玉が9筋まで逃げて、逆転勝利。
右玉NOWは、今後も神埼八段を応援します!