2019年7月4日のA級順位戦ので、後手番の糸谷哲郎八段が一手損角換わり右玉を採用してくれた。
糸谷八段といえば、右玉使いの代表格。A級の大舞台で右玉を期待していたが、見事に応えてくれた。本年度はここまで4勝0敗と好調だ。
対するのは、稲葉陽八段。
糸谷八段と同じ関西の超強豪。居飛車党で角換わりにも強い。
本局は、糸谷八段の一手損角換わりに対して、稲葉八段は早繰り銀を採用。
糸谷八段は右玉で迎え撃ち、先手が右玉崩しの5六角打を放つ展開となった。
棋譜は以下からどうぞ
2019-07-05 A級順位戦 稲葉陽八段 – 糸谷哲郎八段
一手損角換わりから早繰り銀 vs 右玉へ
後手の糸谷八段は得意の一手損角換わり。
先手は早繰り銀。手損を咎めるを有力な作戦だ。
後手、右玉へ。
羽生九段流の7二金型も考えられたが、ここは一般的な形を採用
先手、桂頭を狙う仕掛け
先手は、7五歩。
2筋の銀交換をしてから行うことが多いが、ここでのタイミングもありだろう。
さらに端も手を付ける。将来的に5六角へ角を打ったときに、9二歩打からの攻め筋も生まれる。
後手はここで3四歩打。
ここで2四歩とすると、3五歩、2三歩成、2七歩打、同飛、4五角という変化(以下変化図)で、後手有利。
変化図
先手、5六角打を放つ
本譜は先手が4六銀と引き、1五歩と後手が取り込んだところで、5六角打。
対右玉の基本というべき一手。もうすぐ発売されれる「誰も言わなかった右玉の破り方」でも恐らく触れられているだろう。
右玉側の手筋としては、6五歩だが糸谷八段の対策は違った。
8三角打!
中継コメントによると少考ということなので、研究範囲なのだろう。
同角成、同飛、再度の5六角打に7四角打。
この局面は互角。
先手は同角とはせず、6七角と引いた。
右玉、戦場から早めに遠ざかる
後手は9七歩成から上の局面まで進行。
先手の次の狙いは8五歩。8筋が戦場になる可能性は高そう。
そこで、糸谷八段は5一玉。ソフトの候補手でもある。
右玉党はこの感覚を持っておきたい。
先手は3七桂で力を溜める。ここは右玉からしたら仕掛けどころだったかもしれない。
ソフトは6五歩の仕掛けが成立すると見ている。
読み筋は、6五歩、同歩、同桂、6六銀、6四桂、2四歩、同歩、8五歩、7七桂成、同玉、6六香、同玉、6四銀。
これで、後手有利とのこと。
本譜は4四歩。桂跳ねのスペースを消している。
2四歩、同歩、7四香とした局面。
本譜は7二歩と受けたが、ソフトは6二金で後手有利と読んでいる。
難解だが、ここが最後のチャンスだったかもしれない。
先手、優勢を維持して快勝
中盤以降は先手優勢のため、右玉NOWとしては割愛。
最後は3六歩と銀を取り形を作ったが、最短11手詰めがある。
正解はこちら。
腕に自信がある人は考えてみてほしい。
本譜は7三角打。こちらも少し長くなるが詰み。
6二桂打、6三桂打、5二玉、3四馬で後手投了(以下図)
4三歩打で受けても、4四桂打、6三玉、6四飛打、7二玉、8二金、6一玉、6二飛成までの7手詰め。
というわけで、本局は稲葉八段の指し回しが素晴らしく糸谷八段の負けになってしまったが、右玉も中盤までは互角以上の戦いを見せてくれた。
右玉NOWは今後も糸谷哲郎八段を応援します!