現在将棋界最強の二人といえば、豊島名人(王位・棋聖)と渡辺明二冠で異論がある人は少ないだろう(藤井聡太派もいるかもしれないが)。
その2人が激突した棋聖戦は、渡辺明二冠が勝利し、三冠を達成することになった。
そこで、右玉NOWは三冠をお祝いする意味で、渡辺明三冠の右玉を紹介したい。
(棋聖戦の棋譜は紹介していませんので、ご了承ください)
舞台は2017年のA級順位戦。
渡辺三冠は当時竜王位を保持。
対するのは稲葉陽八段で、ここまで7戦全勝と絶好調であった。
この対局は角換わりから渡辺三冠が積極的に角を放ちつつ、堅陣を構えるという流れになった。
棋譜は以下からどうぞ
2017-02-01 順位戦稲葉 陽 八段 vs. 渡辺 明 竜王 第75期順位戦A級8回戦
渡辺三冠、手厚い形の右玉を完成させる
角換わりから先手は腰掛け銀。対して後手は6五歩と6筋の位を取る。
4五歩に対して、6四角と設置。
先手は5五角打で対抗し、5四歩、6四角、同銀と進行した。
後手、玉を右へ
先手は4筋に飛車を周り、後手は戦場を避ける5二玉。
7九玉、4二銀のあとに、先手が6六歩と歩交換。お互いに危険な場所だ。
歩交換後、7七銀、5三銀、2五歩、6三金、2八飛、6二飛で右玉へ。
後手は少し珍しい形ではあるが、左銀を玉にひきつけ、手厚い形。
ソフト評価値は互角ながら、わずかに後手に振れており後手作戦勝ちと言っても良いかもしれない。
渡辺玉、空中要塞へ
少し進んだ局面。後手は6二金と引いたあと、6二玉と入り空中要塞が完成する。
リボーンの棋士でも似た形が紹介されていたのは記憶に新しい。
さらに、3九角打から馬を作成。右玉とは思えないほど堅い形になった。
先手の端攻めから開戦
先手は比較的薄い1筋の歩突きから開戦する。
同歩、1三歩打、同香、1二歩打としたところで、後手も9四歩から反撃。
少し進んだ局面。先手はと金を作り桂を外したが、後手も9筋からの突破を狙い、評価値としては後手優勢(-900ほど)。
先手の粘りで互角の局面に
右玉有利だったが、稲葉八段の粘りで次の局面へ。
上の局面図だけ見ると、後手が厳しいように見えてしまうが互角とのこと。
7三玉に6五角成。驚くべきことにこの手が緩手だったようだ。
変えて、6四銀打なら形勢は互角で、そのまま千日手になる道があったようだ。
ソフトの読み筋はこちら
先手の猛攻を後手が受け切る
本譜は7四銀打。これが好手。
6四馬、8三玉、9四銀打、8二馬で飛車を取られて危険だが、6五歩打で飛車先を抑えて後手有利。
9三銀打、同馬、同馬、同玉、7一角打、8二銀打、6二角成、8三角打で受けて先手の猛攻を受け切った。
後手、華麗に寄せる
少し進み、5九飛打でついに後手の攻撃のターン。
6九香打と受けるが、ここからの寄せは見事だった。
7七桂打!
同桂、同歩成、同金、5七飛成に6二金と受けるが……。
8八金打! が必殺の一手。同玉と取るしかないが……
9九角打。
詰みを逃れるならば、7九玉と逃げるしかないが、7七角成で必至。
本譜は7八玉なので11手詰みが発生した。自信があれば読んでみてほしい。
正解はこちら。
本譜は6六桂打から入って、同金に、7七歩打で投了となった。
この手順も7九玉、8八角成、同玉、6八龍、同香、7八金打で詰む。
というわけで、渡辺明三冠(当時は竜王)の右玉でした。
この対局を落とした稲葉八段だが、最終戦には勝利して堂々の名人挑戦を決めている。
右玉NOWは、今後も渡辺明三冠を応援します!