プロ棋士YouTuberとして「イトシンTV」で活躍中の伊藤真吾五段だが、三間飛車 vs 糸谷流右玉の将棋ウォーズ動画(10秒戦)をアップしてくれたので紹介したい。
本局は最小限の囲いで攻めたイトシンTV側の三間飛車が糸谷流右玉を攻め潰すことになるが、互角の局面も長く続き、10秒戦と思えないほどレベルが高かった。
糸谷流右玉側の受け、という面でも参考になるはずだ。
三間飛車vs糸谷流右玉!飛車角金桂で攻める!!将棋ウォーズ実況 第58回
#動画なので音が出ます
棋譜は以下からどうぞ
2019-07-12 将棋ウォーズ10秒戦 糸谷流右玉四段 – イトシンTV三間飛車
糸谷流右玉に三間飛車で対抗する
序盤の桂跳ねで糸谷流右玉を察知する伊藤五段。
「糸谷流右玉でしょうか。攻略の仕方知らないんですよね~」とのこと。
後手は三間飛車を選択。対糸谷流右玉は桂頭を狙うため、一度四間飛車や中飛車にしても、それから三間飛車に振り直すことも多い。
後手は4三金と繰り出す。珍しいが、金で攻めようとする形だ。
囲いは最小限のまま、角を引いてから3筋の歩を突く。
先手は5六歩。ここまで糸谷流右玉側の駒組みも完璧に近いので参考にしてほしい。
金で攻めてきた場合の対応は銀とは異なる
後手は3四金と金で攻める。通常は銀で攻めるので珍しい。
ここは糸谷流右玉も対応に悩ましいところ。
2七金と受ける。手筋だが、ソフトの評価はそれほどよろしくなかった。
ソフトの読みは、7七桂、9六歩、5七銀、1六歩、7八金など。
3筋を受けなくて大丈夫なのだろうか?
仮に9六歩としたあとの進行は、9六歩、3五歩、6五歩、3六歩、同銀(変化図1)。
変化図1
ここで、3五金は、同銀、同飛、2六金打! 3一飛、3五歩(変化図2)。
変化図2
ソフト評価値は先手有利。場合によっては抑え込みを狙いたい。
ただし、この対応方法は、相手が金で攻めてきたから通用する方法で、一般的な銀出の場合は通用しないので注意しよう。銀出の場合は本譜の通り、2七金で対応したい。
本譜は2七金。もちろん、これで悪いわけではなく、形勢はまだ互角だ。
後手、ポイントを稼ぐ
後手は3三桂で攻め駒を増やしていく。
ここから糸谷流右玉が受けるのは至難だが、形勢自体は互角なのでがんばりたいところ。
先手は2五桂を受ける2六金。将来的な1五角の筋も受けている。
この手でも互角だが、ソフトは7七桂や9六歩など、攻め体勢を作っておくことを推奨していた。2五桂は甘受する作戦のようだ。
具体的な変化は9六歩、2五桂、5二金、3七桂成、同金(変化図3)
変化図3
この局面は互角。
本譜は4五歩。ここでちょっとだけ意外な手が好手のよう。
変化図4
3五歩!
怖いがこの局面では成立するようだ。
ソフトの読みは、4六歩、同銀、4五歩打、5七銀、4四金(変化図5)。
変化図5
先手陣もバラバラだが、まだ互角。
本譜は自然な同歩。当然の一着だろう。
同桂、同桂、同金
ここで4三桂の飛角取りがあるが、伊藤五段もやや警戒していたが無理そう。
本譜も4六歩で収めたが、それが正着だろう。
先手は6五歩。いかにも感触がよさそうだが、この手あたりから形勢が後手に振れて戻ってくることはなかった。5七銀ならまだ互角だったかもしれない。
伊藤五段、華麗に攻め潰す
少し進んだ局面。形勢は後手優勢だが、まだ先手陣も堅く、後手は最小限の囲いしかない。
しかし、ここからの伊藤五段攻めは見事だった。あっさり攻め潰してしまう。
まずは3四桂。
3五金、同金、同歩に4六桂。玉が角筋に入ってしまっているのがキツイ。
6八金で耐えるが、3六歩の垂らしも厳しい。
繰り返すが、10秒将棋での攻めである。
4九桂打で受けるも、構わず3七金打。
ばらしてから4五桂打!
4八玉にスパっと5七角成。
同金に同桂と取らず3七銀打。
5九玉に5七桂成で受けなし。先手投了となった。
というわけで、振り飛車側から金で攻めて、最終的には攻め潰すという将棋になった。
ただ、途中までも糸谷流右玉が悪かったわけではない。10秒将棋で変わった攻め方をされたので、先手側も正しい応手をするのは難しかっただろう。
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