2019年7月25日、斎藤慎太郎王座への挑戦を争う王座戦挑戦者決定戦が行われ、後手の豊島将之名人が右玉を採用してくれた。
豊島将之名人は、渡辺明三冠と並び現在棋界最強のプレイヤー。幼い頃から期待されていた超大器がついに花開いたといえるだろう。「序盤、中盤、終盤、隙がない」でもお馴染み。
対するのは永瀬拓矢叡王。受けに強く、千日手も厭わない棋風で、叡王のタイトルをストレートで獲得するなど実力はトップクラス。無類のバナナ好きでもある。
本局は序盤早々、豊島名人が緩手から形勢を損ね、右玉伝説の格言「作戦負けなら右玉にせよ」を地で行って、苦しいながら右玉に構えるという将棋に。豊島名人とっては終始苦しい局面だったと思うが、せっかく名人が右玉を採用してくれたということで紹介したい。
一方の永瀬叡王にとっては会心譜となったことだろう。
ということで、棋譜は以下からどうぞ
2019年7月25日 第67期王座戦挑戦者決定戦 豊島将之名人 対 永瀬拓矢叡
※要Flash
豊島名人、序盤に形勢を損ねる
先手は矢倉だが、後手は見たことがない形。
後手が仕掛けるのであれば、この局面だったかもしれない。
8六歩の突き捨てを入れてから5五銀とぶつけて手になっていそうだ。
銀交換したあとの3三金。
意欲的な手だが、これがはっきりとした悪手だった。
豊島名人としては珍しく、序盤早々に大差がついてしまう。
先手は2二銀。
誘いによるような手だが、やはりこの手が厳しい。先手が駒得を果たす。
豊島名人、右玉にするが苦しい展開に
豊島名人は洗浄を避けて右玉へ。しかし、ソフト評価値はすでに先手有利を示しており、苦しい戦いとなった。
先手の5七角に対して、後手は6四角とお互いに好位置へ角を移動させる。
8四香打がやはり厳しい。左辺だけではなく、8筋も制圧されてしまった。
永瀬叡王、常識にこだわらない好手の受け
後手の飛車が5一に逃げた局面。角が1九香を狙っているので受けが必要だが、次の一手は指しにくい好手だった。
3七歩打!
飛車筋と桂馬の跳ねどころを同時に消してしまう手だが、この手がソフト推奨の好手。
常識的に考えにくい手を指せるのはさすが永瀬叡王だ。
先手は7二玉で8三香成を受け、8八玉に9三銀打の受け。次の一手もすごかった。
9七桂!
守備駒だけに跳ねにくいがこの手も好手。
先手、踏み込んで快勝
少し進んで飛車を8筋に戻して角に当てた局面。ここで永瀬叡王は踏み込む。
7三角成!
この手で先手勝勢。先手は矢倉が丸々残っていることが大きい。
以降、後手も粘るが、4五桂で逃げ道を封鎖したところで後手投了。
永瀬叡王の快勝となった。
本局は序盤に差がついてしまい、豊島名人にとっては不本意な将棋になってしまったが、名人の右玉が見られたことはありがたい限り。次回は右玉で作戦勝ちする姿も見たい。
右玉NOWは今後も豊島名人を応援します!