今回は中原誠十六世名人の現役最後の対局となった一局を紹介したい。
中原誠十六世名人は「棋界の太陽」と呼ばれ、タイトル獲得64期の大棋士。居飛車本格派で、桂使いの名手でもある。林葉直子への突撃(突入)事件でも有名。
対するのは木村一基八段(当時)。現在は王位に挑戦中だ。
この対局は、中原誠十六世名人が先手右玉を採用。対する後手の木村八段は穴熊で対抗した。
棋譜は以下からどうぞ
2008-08-12 王将戦中原誠 vs. 木村一基 王将戦
先手右玉 vs 穴熊の戦いへ
先手の作戦は1筋を突き越した角換わり右玉。
後手は穴熊を志向。
5六銀は形にとらわれないすごい手。桂頭を守る駒がないので怖いが……。
先手、飛車を封鎖する8五歩打
後手が飛車先交換をしてきたところ。ここで先手は積極的な手を指す。
8五歩打!
飛車の退路に歩を打ち、捕獲を狙っている。
厳密にはこの歩は成立していなかった。この飛車は簡単には捕まらない。
後手は3五歩。桂頭を狙っており厳しい。
先手は同歩!
当然の3六歩打に先手は8二角打。この角打ちに期待したかもしれない。
ただ、ソフトの評価は後手優勢だ。
先手の馬が手厚い
後手は角を犠牲にして強引に飛車先を突破。後手は馬が主張。
先手陣はスカスカな上に、3七歩成も残っているので後手優勢に見えるが、ソフトの評価はなんと互角。中原永世名人の大局観には驚かされる。
少し進んだ局面。こうなってくると先手の馬が手厚いか。
中原永世名人の穴熊崩し
少し進んだ局面。
先手は2六桂と設置。この桂をベースに端攻めをする。
さらに進んだ局面。次の一手で有利を拡大した。
2四桂打!
よくある手筋なので読めた人もいるだろう。同歩は、同歩で攻めが加速するので、1二歩打として粘るが、3二桂成から要の金を外すことに成功した。
中原永世名人、長手数の詰みを見逃さず
終盤、後手が4四香打と放った局面。
しかし、後手玉には詰みがあった(19手詰み)。
中原永世名人は見逃さない。
腕に自信があれば読み切ってほしい。
初手は2二銀から。
同銀、同桂成、同金に1二香成!
同金に2一金打が好手。
同玉に3二銀打。
2二玉、3四桂打で後手投了となった。以下、3三玉、1四歩打、同玉、1五歩、同玉、2六金打、1四玉、1九飛まで。
というわけで、中原永世名人が先手右玉で勝利した。
中原永世名人はこの対局の感想戦中に脳内出血を起こし即入院。棋戦復帰を目指すが叶わず、現役最後の一局となった。
なお、木村-中原戦といえば、この2年前の対局では木村一基九段が右玉を持って戦っているのでそちらも今後紹介したい。