2019年8月20日に放送された銀河戦で、渡辺明三冠(対局時は二冠)が後手右玉を採用してくれて、快勝したので紹介したい。
渡辺明三冠は現在、豊島名人と並ぶ棋界のトッププレイヤー。竜王戦9連覇時代を超える全盛期を迎えていると言っても過言ではないだろう。
対するのは藤森哲也五段。父はアマ強豪、母は藤森奈津子女流四段というサラブレッド。
本局は角交換をせず、先手早繰り銀、後手右玉の戦いとなった。
棋譜は以下からどうぞ
2019-08-20 銀河戦 藤森哲也五段 vs 渡辺明二冠
※放送時は三冠だが、対局時は二冠
角交換なしの先手早繰り銀 vs 右玉へ
後手は飛車先を受けない現代的な作戦。
先手の作戦は早繰り銀。角交換しない早繰り銀は少しだけ珍しいかもしれない。
後手は右玉へ。
後手、機敏な仕掛け
先手が5六歩とした局面で、後手はいきなりの4五歩!
この手が機敏だった。
先手は強く同銀と応じる。後手の継続手は……?
4三銀。この手が次の3三桂を見ている。
先手は最善手の5五歩で応じるが、同角!
早くも後手が一本取った格好だ。
4筋の攻防
少し進み、後手は飛車を4筋へ。先手玉はまだ不安定なので、この機を逃さず攻めたいところ。
4六角、4五銀、同銀、同飛と進行。
ここで2八飛と眠っている飛車に活を入れるが、5五銀!
これで角が取れそう。
不安定な先手陣に比べて後手陣は安定しており優勢だ。
後手、有意を拡大する
角銀交換になった局面。ここからの先手の手順も素晴らしい。
まずは4五歩打!
同銀は3三桂、同金は5六角打! が強烈な一打。
したがって5七銀と引くが……
5四歩が好手。次に5五歩とされると金が死ぬので先手は動いていくしかない。
3七桂、5五歩、4五金と進行。3七桂と跳ねたので4五金にヒモがついた。
的確な受けと攻めで快勝!
後手有利に進んでいるが、少しでも間違えると一気に形勢は逆転する。
先手が2六角の王手を打ってきた局面。対応は?
5三金打がしっかりとした受け。
仮に5三金と、移動合で金を節約して受けると、同角成とズバっと切られ、同玉に再度2六角打で先手優勢になってしまう。
少し進んで4三歩打。金取りだが……。
ここは3八桂成で飛車を取っておくのが好手。
4二歩成、同飛、4三歩打に1二飛と逃げておくのも正解だ。ここらへんの判断は素晴らしい。
最終盤で8二飛打から7二金打、8一飛成としたところ。
ここは7一金で大丈夫。先手も流石に同龍とはできず、9一龍。
5八桂成、同玉、3六角打、6七玉、6九角成で先手投了となった。
この手は5六龍の詰めろ。これといった受けも見当たらないが、後手玉に詰みはない。
というわけで、終始リードを保った渡辺二冠(当時)の勝利となった。
早指し棋戦にも関わらず、悪手らしい悪手はなく快勝といえるだろう。
右玉NOWは今後も渡辺明三冠を応援します!