2020年1月20日に行われた朝日杯将棋オープン戦本戦トーナメントで、後手番の糸谷哲郎八段が右玉を採用してくれたので紹介したい。
糸谷八段は関西の強豪棋士。竜王の経験があり、一手損角換わりを得意とする。対振り飛車の糸谷流右玉や、ネット番組でのDJダニーとしても有名だ。
対する先手番は永瀬拓矢二冠。渡辺明三冠、豊島将之竜王・名人と並ぶ現役最強の棋士だ。
本譜は後手番一手損角換わりから先手は早繰り銀、後手が右玉という展開となった。
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一手損角換わりから7二金型ではない5二金型右玉へ
糸谷八段の作戦は一手損角換わり。対する先手は常套手段である早繰り銀。
先手は7二金型右玉対策にもなる8八銀・6八銀型のまま攻める作戦もあったと思うが、▲7八玉を選択。8八銀型のまま右銀を繰り出して銀交換となった。後手は7二金型は選ばず、一般的な5二金型。銀交換後のソフト評価値は互角だ。
47手目▲3八飛の局面は難解
47手目、先手は▲3八飛としたが、この局面が本局最大のポイントとなった。
ソフト評価値は少し読んだ程度なら後手よりの互角と出るが、深く読んでみたり局面を進めてみるとそう簡単ではないようだ。
ソフトの読みは、△5四角打や△6五角打で角で3二の金にヒモをつける手。
ちなみに△5四角打の読みは千日手。
△6五角打は飛車取りでもあるので、▲5六歩、△4九銀打(以下、変化図。モバイル中継だと△5九銀となっているが恐らくミス)。このコースなら互角以上の可能性は高い。また、△3三歩打で収めるのも一局と思われる。
変化図
本譜は△4二金左。これも悪くなさそうだが、次の▲2二歩打が再び難解な局面。
△4九銀打には飛車が逃げてくれれば良いが、▲3二飛成の強襲があるようだ。
本譜の△3三桂はソフトに深く読ますと最善手となるが、最善手で進めていっても先手寄りになっていく。
永瀬二冠、正確な指し回し
有利になってからの永瀬二冠の指し回しは素晴らしい。ほとんどがソフト最善手と一致し、糸谷八段にスキを与えなかった。早指し棋戦でのこの正確さは驚異というほかない。
というわけで、本譜は永瀬二冠の勝利となってしまったが、一手損角換わり右玉には十分可能性はあるとおもう。
右玉NOWは今後も糸谷哲郎八段を応援します!