プロ棋士YouTuberイトシンTVでもお馴染み、伊藤慎吾五段の最新棋書「よくわかる雁木」が発売された。
目次を見てみると……。
第1章 先手矢倉VS後手雁木急戦
第2章 角換わり封じの△4四歩止め雁木
第3章 相雁木
第4章 相雁木右玉
第5章 4手目△4四歩型雁木
第6章 ▲5七銀型雁木VS後手腰掛け銀型雁木
第7章 ▲8八銀型―△4四歩型
第8章 ▲5六銀型左美濃VS△5三銀型雁木
第9章 実戦編
第10章 次の一手問題
「第4章 相雁木右玉」!
これは右玉党として気にならないわけがない。
というわけで、Kindle版を購入させていただいたので、右玉に触れている部分を中心にレビューをしたい。
そもそも雁木とは?
そもそも雁木とはなんだろうか? 本書では定義が触れられなかったので、簡単に紹介しよう。
上図は5七銀型のクラシックな雁木。6一の玉から2五の歩まで階段状になっていることが雁木という名称の由来。
この形は、Wikipediaによると相居飛車二枚銀雁木というらしい。
名作将棋マンガ「ハチワンダイバー」のキャラクター「二こ神」が得意とする形で、後半は主人公の独自戦法「ハチワンシステム」に組み込まれていた。ハチワンダイバーでは古い形と言われていたが、その後優秀さが見直され、プロの実践でもチラホラと見かけるようになる。
こちらは4七銀型雁木で、相居飛車ツノ銀雁木とも呼ばれる。玉は6九にいるが、変えて4八へ上がれば右玉に移行できる。ちなみに玉が右に行って右玉になれば、風車右玉とも呼ばれる形である。
本書「よくわかる雁木」では、6七銀(後手なら4三銀)という形になれば雁木としているようだ。
「第3章 相雁木」でも右玉が登場する
「第3章 相雁木」では、先手が雁木、後手が右玉という形を紹介している。
図の局面は右玉党なら経験があるかもしれない。青嶋未来著「現代右玉のすべて」の読者であれば、「風車右玉」でおなじみだ。
ただ、本書ではこの先の展開ほとんど触れられておらず、互角の局面とのこと。ここから先のいろいろな変化も見てみたかった。
第4章 相雁木右玉
第4章はお目当ての相雁木右玉。
先後同型の雁木右玉。
後手としては千日手になってもOKなので、先手が打開する必要がある。
本書では、先手9筋からの端攻めが決まる流れと、後手が警戒して5一からの玉の早逃げをするという2つの展開を詳しく解説してくれている。
右玉党は買うべき?
右玉しか絶対指さないという右玉党にはおすすめはしない。第3章はほぼ右玉なので価値はあるが、それだけで購入するのはもったいないかもしれない。
一方で、右玉と雁木の相性は良く、右玉にすると見せかけて雁木という作戦は十分に考えられる。かつて「右玉伝説」と「雁木伝説」という2つの棋書が「雁木・右玉伝説」として合本され、再販されたこともある。そういう意味では、右玉党にもおすすめできる一冊と言えるだろう。
また、きちんとは読み込めていないが、第1章「先手矢倉vs後手雁木急戦」が本書のメインコンテンツと言ってよいだろう。矢倉が隙を見せたら襲いかかるという作戦は指して楽しそうだ。
というわけで、右玉NOWは伊藤慎吾五段と雁木を応援します!