右玉の対抗策として有力なのが、菊水矢倉、ミレニアム囲い、そして銀冠。
とくにミレニアム囲いからの銀冠は、阿久津主税八段が、右玉の対抗策として「必ず役立つプロの常識」でも触れている。
そんな阿久津主税八段に右玉で対抗したのが、畠山成幸八段。
少し古めの2011年の銀河戦の一局だ。
2011-06-02 銀河戦阿久津主税 vs. 畠山成幸 銀河戦
並べてみてもらえればわかるが、右玉作戦負けから、銀冠へ組み換えというユニークな一局となっている。
菊水矢倉 vs 右玉
右玉に対して、先手の阿久津は対右玉のセオリー菊水矢倉へ。はやくも作戦勝ちの様相。
ソフトの評価値はすでに先手300近い。
お互いに仕掛けにくい局面から、先手は銀冠を志向。
ここから右玉は思い切って、銀冠を目指すことになる。
8二玉。しばらく不安定な状態が続くので、相手の仕掛けには注意しなければならない。
銀冠への組み換え成功! よく見れば、向かい飛車となっている。
ただし、この時点でもソフト的な評価は居飛車やや良し。
進んでこの局面。阿久津八段に悪手が出る。
なにか錯覚があっただろうか? 2筋の攻めを優先した?
いずれにしても、ソフト的には1000点近くマイナスとなる悪手。
素直に4五歩と桂馬を取っていれば互角だった。
さらに進んでこの局面。ここからの畠山八段の攻めは素人には予測しづらいものに。
9五桂! と歩頭への桂馬打ち。
まあ、あり得ない手ではない。
が、次がすごい。
同歩、9七歩打に、9六桂打!
なんと、再度の歩頭への桂馬。
リアルタイムで見ていたわけじゃないが、テレビ棋戦だけに盛り上がっていただろう。
この後は、畠山八段が華麗に寄せ切り勝利。
というわけで、右玉から銀冠へ組み換えというユニークな一局でした。