2021年4月25日に放送されたNHK杯テレビ将棋トーナメントにて、後手番の佐々木大地五段が右玉を採用してくれたので紹介したい。
佐々木大地五段は、高勝率でレーティングも高い若手の実力派。タイトル挑戦一歩手前まで行くなど、将来のタイトル獲得が期待されている。順位戦(C級2組)と竜王戦(6組)で奮わないのは、将棋界の謎である。右玉の採用が多い棋士としても右玉党にはお馴染みだ。詳しくは、「佐々木大地の右玉」カテゴリでどうぞ。
対する先手は野月浩貴八段。佐々木大地五段と同じく居飛車党。コアなサッカーファンとしても有名。2回の棋戦優勝経験を持つ。
棋譜は公式サイトの以下からどうぞ。
2021年04月25日 第71回NHK杯1回戦第4局
本譜の局面図はNHK様の許諾をいただき公開しています。
相掛かりの右玉から62手目にして右玉完成
序盤は相掛かり調の出だしで、先手は棒銀模様。細かいやり取りを経て、玉が右に移動したのは40手目。
以下は、51手目の局面。
角が死んでいる……。が、もちろんこれは織り込み済みで、△2九角成から香銀と角の交換となり、互角の局面だ。
右玉が完成したのは62手目となった。
後手右玉に先手は矢倉。ソフトの形勢は互角。
先手、▲5六角を放つ
77手目、先手は▲5六角と打った。
対右玉の手筋で、狙いは桂頭攻めと端攻め。右玉側はこのラインを受けなければならない。
佐々木五段は△5四歩と角への働きかけ。ソフトはやや甘いと見ているようで、評価値は先手有利に。変えて、△4四桂打と直接角取りにしたほうがよかったようだ。
85手目、先手は角をぶった切ってきた。しばらくは受ける展開となった。
後手、終盤の超難解な妙手を逃す
以下は、127手目の局面
後手は飛車・銀取りで忙しいが、△5八歩成が見えている。
ほとんどの人は△5八歩成か、飛車か銀を逃げる手を考えるかもしれない。
が、かなり見えにくい、勝勢になる手が1つだけある。
ぜひ考えてみてほしい。
(ソフトで検討しています)
動画もあるのでこちらもどうぞ
(こちらは先後反転してあります)
正解は△9九桂成!
7九に効いていた桂馬で香車を取る手なのでかなり指しにくいのではないだろうか?
飛車のラインを通す意味もあるが、その飛車は取られてしまう。
それでもこの手で勝ちとなるのだ。
▲同銀は、△8七歩成が継続手。
▲同金は△5八歩成から11手詰め。
▲8一角成と飛車を取る手は、△8六歩と支える手が詰めろで先手勝勢。
というわけで、先手の最善手は飛車を取る▲8一角成だが、後手は△8九成桂とする。
ここで先手は難しい。先手玉には詰めろがかかっており、▲4五馬は長手数で詰んでしまうのだ!
というわけで、先手は▲7一馬の王手が最善だが、先手は△6二桂打で受けて勝勢。
▲7九銀や9九銀!は、△8五桂。
▲2四飛は、△5九角成から詰む。
本譜はこの妙手は指されず、▲5八歩成となった。
先手、痛恨の悪手で後手勝利
以下は、金で桂馬を食いちぎった局面。
ここで、▲同歩ならまだ互角だったかもしれない。しかし、先手は▲2四飛。これは詰めろになっていない。
△5九角成が詰めろで、後手勝勢に。
先手は、一度上がった飛車を下げて受けるが、佐々木五段の寄せは正確。
最後は少しオシャレな決め方で、先手投了となった。
というわけで、妙手こそのがしたものの、佐々木五段の勝利。再びテレビ対局で右玉を披露してほしい。
右玉NOWは今後も佐々木大地五段を応援します!