2021年8月8日に生放送された第4回ABEMAトーナメントで、チーム長瀬「川崎家」の永瀬拓矢王座が後手右玉を採用してくれたので紹介したい。
永瀬拓矢王座は20代ながらタイトル3期、棋戦優勝2回を誇るA級棋士。渡辺明名人(棋王、王将)、豊島将之竜王(叡王)、藤井聡太王位・棋聖と並び、4強の一角で、少し突き抜けた存在の一人だ。「川崎家」の由来は父親が経営するラーメン屋の名前から。
対する渡辺明名人は竜王戦9連覇など説明不要の大棋士。10代の頃から強い上に、進化を重ねて全盛期を迎えている。軽快で分かりやすいトーク技術にも定評があり、最近ではYouTubeアップされたハイレベルな将棋講座、渡辺明名人の将棋講座【現代トップ棋士の研究とは】も話題に。
本局は四局目。リーダー同士の対決となった。
お〜いお茶presents第4回ABEMAトーナメント チーム渡辺VSチーム永瀬
※ABEMAプレミアムでしか視聴できません
※公式YouTubeチャンネルの棋譜動画はまだアップされていないようです。決勝トーナメントはなし?
矢倉 vs 右玉へ
序盤、先手は矢倉だが、入城する前に3筋から仕掛けていく。
お互いに不安定な状態。ちょっとでもスキを見せると崩壊しそうだが、トップ棋士同士の戦いなので、そのようなことはない。
32手目、角の覗きを受ける形で右玉へ。
先手は銀交換を決めるが、後手は右玉を完成。先手は未だ入城しておらずソフトの評価値は互角。右玉としては不満がない形だ。
右玉と矢倉、攻め合いへ
中盤。右玉は左桂も跳ねて好調な攻め。対する先手の▲4七銀打も好手。角が逃げたあとに▲3六銀と歩を取り払うことができる。
右玉は8筋の継ぎ歩、対する先手は角が飛び出し攻め合いの状態に。この時点ではわずかに先手が良さそう。
さらに殴り合いになった局面。ここは角筋が開いて怖すぎるが、△同銀が良かったようだ。本譜は△8七金打。これも厳しい一着。
後手は攻めを決めてから、しっかりと受ける。
▲4四銀、△同歩と進んだこの局面が本譜のキーポイントだったかもしれない。ここでソフト推奨の好手がある。じっくりと考えてみてほしい。
変化図
▲8三歩打の叩き!
先手としては手抜かれるのが気になるが、手抜くのはできなさそう。△同飛となれば後手の守備力は大きく落ちる。
また、▲3五銀と力を貯める手も有力なようだ。
本譜は▲同飛! 一気の寄せに入った。
寄せ切るか、逃げ切るか難解な局面
飛車角をぶった切って▲4五桂打。詰むかどうかの勝負となった。先手の持駒も豊富で怖いところ。逃げ間違うとすぐに詰んでしまう。
ちなみに、詰むのは△6二玉(23手詰め)と△4四玉(11手詰め)。
本譜は△4二玉、▲3三角打! △同金▲5三銀打。
この局面で逃げ方は△5一金しかなくそれ以外はすべて詰み。
△5一玉▲4二銀打△6一玉▲6二金打△同飛▲同銀成△同玉▲8二飛打と進んだ局面。合駒問題だが、下手な合駒は詰んでしまう。
本譜は△7二銀打。これで詰まない。角でも可。飛車と金だと詰んでいた。
▲5三桂成△8一玉▲8一金△6二玉。ギリギリまで攻めたが届かず。先手投了となった。
というわけで、超早指し戦ながら濃厚な一局でした。
右玉NOWは今後も永瀬拓矢王座を応援します!