2022年4月16日に放送された第5回ABEMAトーナメントで、チーム永瀬「川崎家」の増田康宏六段が後手右玉を採用してくれたので紹介したい。
増田康宏六段は新人王を二度獲得した若手強豪。2019年の新人王戦では準決勝で右玉、決勝2番勝負でも2回右玉を採用している。「矢倉は終わった」発言が有名で、本局はその対矢倉となった。
対する先手番は佐藤紳哉七段。「序盤、中盤、終盤、隙がないと思うよ」など、ユニークな発言でお馴染み。2年連続でチーム羽生入り。本局はカツラを付けて臨み、勝利時にはカツラ飛ばしをする予定だったが……。
本譜は先手矢倉に対して後手右玉という一局となった。
第5回ABEMAトーナメント 予選Aリーグ第一試合<チーム永瀬VSチーム羽生>
※ABEMAプレミアムでしか視聴できません
後手、急戦ならず右玉へ
先手は矢倉、対する後手は△7三桂を決めて桂跳ねのチャンスを狙う。先手矢倉は桂跳ねの筋に最新の注意を向けつつ、駒組みを進めることに。
先手が1筋の歩を詰めたところで、後手は右玉へ。いわゆる雁木右玉。右玉党なら同じような局面を経験したことがあるかもしれない。
先手、後手ともに金銀を集めて硬い形に。
後手、リスクを負いつつ4筋から仕掛ける
先手が穴熊への組み換えを見せた瞬間に後手は△6五歩。先手の角が覗いているラインだけに、後手としても怖いところだが堂々と仕掛けた。
▲同歩△同銀に先手は▲5五歩から銀ばさみを狙う。
後手としては素直に▲6五歩とされては終わりだが、ここからの後手の手順が巧みだった。詳しく紹介したい。
△3五歩!
▲同歩は△3六歩で角をずらしてから△5五角がある。
このタイミングで▲6五歩は△3六歩▲2六角△5五角が飛車取り。これは後手有利。
というわけで、先手は▲2六歩と飛車を浮いて受けるが、△3六歩▲同飛に次の手も好手だった。
△4六歩!
まさに筋という一手で、先手は対応が難しい。
▲同歩は角筋が止まるし、▲同角は△6五歩。
本譜はこのタイミングで▲6五歩と銀取りにしたが、△4七歩成。
▲2八角△5八と▲6五歩と進む(上図)。
銀は失ったが、と金が残る展開で後手有利に。
後手、優勢から華麗に決める
後手は△2七銀の飛車角両取り。
先手からは飛車を切る手があり、銀を投入するのは悩ましいところだがこの手も好手。
▲3三飛成△同桂▲2七角△4九飛。
少し進んだ局面。先手は▲6六歩から桂銀を取りに行くが、ここから後手は一気の寄せに入る。
△8六香▲同歩△8七歩(以下図)
手筋の歩打ちが厳しい。
▲同金△7九角▲9九玉(上図)と進んだが、詰み発生。時間はないが、後手増田六段は澱まず寄せ切る。
△8八銀▲同金△同角成▲同玉△8六飛▲8七歩△8九龍▲同玉△8七龍まで。
見事な一間龍で先手投了となった。
本局は仕掛けた後の手順が見事。参考にしたい。
というわけで、右玉NOWは今後もAbemaトーナメントと増田康宏六段を応援します!