右玉党にとって、今年もっとも話題の本が青嶋未来五段による「変幻自在! 現代右玉のすべて(以下、現代右玉本)」。
その著者である青嶋未来五段が、新人王戦の対佐々木勇気六段戦で右玉を披露した。
2018-08-23 新人王戦佐々木勇気 六段 vs. 青嶋未来 五段 第49期新人王戦トーナメント戦
青嶋五段が右玉を採用するのは、現代右玉本発売後では、おそらく初めて。
右玉ファン注目の1局となった。
2二金保留の角交換型風車右玉へ
上図は先手から角交換してきて2二金と取ったところ。
現代右玉本の第一章で紹介されている「角交換型風車右玉」だ。
特徴は、2二金を保留したまま進めること。
27手目の4七銀の局面は、現代右玉本19ページの途中図と比べ、9筋の歩の突き合いがない以外は同じ局面。
先手はいつでも2筋の歩を切れるが、保留中。
形勢は互角。なお、この作戦を採用するためには、先手からの棒銀の対応方法を知っておく必要がある。
そこらへんは、現代右玉本に詳しく書かれているので、参考にしよう。
後手は右玉へ。右玉党歓喜の一瞬。
先手は飛車を6筋へ
右玉は5四銀型に組み、先手は飛車を6筋へ。
右玉対策としてよくある手筋だ。
ここから佐々木六段の指し回しがうまく、右玉はやや作戦負けに。
この局面まで、ソフトは3三桂や1五歩を推奨していたので、右玉がやや動きすぎだったかもしれない。
4五歩に対して、強く同歩と取ったのが勝負手。
王手香取りの4四角打は当然のように見えるが、この手が悪手(ソフト的に)というから将棋は難しい。
先に2二歩と叩いておけば、同金は王手金取りだし、同桂は3四歩が残るので、先手優勢を維持できた。
感想戦では2四歩打が示されたそうだが、そちらでも4三角打よりはよさそう。しかし、2二歩打の方が上か。
7二玉と逃げて、1一馬に対して、3三桂。
この手が馬に当たる。
ただ、ソフトは4六歩、同銀を入れてから3三桂という読み。
先手を惑わせた5六角打
右玉は4六歩、3六銀を入れたあと、5六角打の勝負手。
先手の立場として考えてみると、対応は難しい。
ソフトの候補手は4八歩打。3八角成を許すようで打ちにくいが、それには、3九角打!に5六馬、4七金で馬が死ぬ。
4七金までの参考図。
というわけで、本譜では3九飛と受けたが、これが緩手。
形勢が右玉側に振り動いた。
青嶋五段の読みの深い好手
少し進んで右玉が角をバッサリと切った以下の局面。右玉側が指しやすいが、まだまだ互角。
ここで指しにくい好手があるが、青嶋五段は見事の指してみせた。
次の一手とその後の進行を考えてみてほしい。
実戦なら平凡に3七桂成としてしまいそうだが、別の手がある。
正解は、2八金打!
金がそっぽにいき、かなり打ちにくいが、ソフト的にも好手。
以降4九飛、3七桂成、4六飛、3六桂成、同飛、1九金、4四桂打、8六歩、同歩、1一香打が青嶋五段の狙い。
この手で馬が死ぬ。
ただし、この局面は5二桂成なら先手優勢だった。
飛車取りに対して、王手飛車の角打ちで対抗する派手な局面。
そして、ハイライトは次の局面。
青嶋五段、長手数の詰みを読み切る
先手は7二金と必至をかけてきたところ。右玉は相手を詰ますしかない。
かなり難解な29手詰めがあるが、読みきれるだろうか?
正解は、7九銀打、同玉、6九飛打、8八玉、8七金打、同玉、8九飛成、8八銀打に9五桂打!
この桂馬を取ると、6九馬から簡単に詰む。というわけで、桂馬は取れない。
8五桂打が追撃。同歩、同桂に8六玉と逃げたのが次の局面。
この局面でもまだ難しい。
8七桂成!
これが好手。
(実際は7六馬でも詰みますが……)
同銀、同龍、同玉に7七桂成、同玉。
8六銀打までで、佐々木六段は投了。
青嶋五段の右玉の勝利となった。
以下は、同玉、8五香打、7七玉、8六銀打、8八玉、8七銀成、7九玉、8八銀成まで。
次戦は藤井七段の可能性もあるので、再び右玉が躍動する姿を見たい。