2018年9月13日に行われた竜王戦の2組昇給者決定戦、木村一基九段 vs 森内俊之九段で、森内九段が雁木右玉を採用してくれた。
森内九段と言えば、羽生竜王のライバルにして、永世名人資格者。鉄板流として強靭な受けが特徴。
対する木村九段も、受けの強い棋士で「千駄ヶ谷の受け師」の異名を誇る。
棋譜は以下からどうぞ。
2018-09-13 竜王戦木村一基 九段 vs. 森内俊之 九段 第31期竜王戦2組昇級者決定戦
森内九段、雁木右玉に
先手矢倉模様に対して、森内九段は雁木。
一度は忘れさられて復活した流行の戦法である。
森内九段、右玉へ。9筋の歩を突き越していることが主張。
この局面でのソフト評価は互角。後手としてはまずまずだろう。
先手は穴熊を志向。対する後手は手待ちして千日手を狙う筋もあったが、強く3三桂。
森内九段、鬼手6五桂を決行
64手目、森内の鬼手が飛び出す。歩頭に跳ねる6五桂!
ここでは5九角打という筋もあったと、「日本将棋連盟ライブ中継」アプリでも紹介されているので、そちらも参考にしてほしい。
ソフト的には、いずれも候補手の1つだが、本命は8八銀打だった。
森内九段、逃げ間違えたか
上図は81手目、先手が王手をかけたところ。逃げ場は多く非常に難解だ。
森内九段は4ニ玉と逃げたが、やや悪手か。
5四玉や4四玉のほうがよかったようで、感想戦でも指摘されたようだ。
この局面は飛車の強襲に備えて8七桂打としたところだが、これも緩手か。
後手に8九金打がある。
2九飛と引いて、8九金を狙う手が気になるが、6七角打! という妙手がある。これで後手勝勢だ。
従って、8九金打には、7九銀打や8八銀打などでがんばるが、これは後手に楽しみがある展開だろう。
森内九段、最後のチャンスを逃す?
森内九段が3一玉と早逃げし、木村九段が5ニ銀打と受けに回ったところ。
森内九段にとって、ここが最後の勝負どころだったかもしれない。
実戦は7八角成と金を取ったが、ソフトの候補は別にあった。
9六金打!
まさにソフトでなければ、指せないような妙手。
具体的には、同歩、同歩、9三歩打、9五桂打、9六玉、7七角成、6九銀打、8四桂打、9五玉、9四歩打、同玉、8三金打、9五玉、7八馬。
この馬は取れない。となると、後手玉を詰ますか、8一の飛車と8三の金を両方外すしか無い。
調べてみたら、4三桂打で実現する。
同金は、5三角打!から詰み。
2一玉は3一金打で同飛、同桂成。同玉は8一飛が王手金取りで負け、1ニ玉と逃げると2一銀打から詰み。
というわけで、9六金打は先手が正確に指せば、ムリだったようだ。
本譜の7八角成、同金以降は、木村九段が優勢を広げて勝ち。
残念ながら雁木右玉が負けてしまったが、穴熊に対しても互角以上に戦えそうな戦法である。
また、プロ棋戦で登場することを願いたい。