新人王戦の準決勝という大舞台で右玉が採用された。
採用したのは、現代右玉のすべての著者でもお馴染み、若手強豪の青嶋未来五段。
対するは、将棋界の超新星・藤井聡太七段である。
期待しか持てない一局だ。
棋譜は以下からどうぞ。
2018-09-25 新人王戦青嶋未来 五段 vs. 藤井聡太 七段 第49期新人王戦トーナメント戦
プロでは珍しい先手右玉
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・v玉v角v桂v香|一 | ・v飛 ・v銀 ・ ・v金 ・ ・|二 |v歩 ・v歩v歩 ・v金v銀v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五 | ・ ・ 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ ・|六 | 歩 歩 銀 歩 ・ 銀 桂 ・ 歩|七 | ・ 角 金 ・ ・ 玉 ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 後手番 手数=27 ▲4八玉 まで
青嶋五段、はやくも右玉の態度を表明。
プロ棋戦で先手の右玉は珍しく、現代右玉のすべてでも触れられてない。
結果的には少し早かったかもしれない。
後手の持駒:歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・ ・v角v金 ・ ・|二 |v歩 ・v歩v歩 ・v金v銀v歩 ・|三 | ・ ・ ・v銀v歩v歩v歩 ・v歩|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 銀 歩 歩 歩 ・ 歩|六 | ・ 歩 ・ 歩 ・ 銀 桂 ・ ・|七 | ・ 角 金 ・ ・ 金 玉 ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 後手番 手数=41 ▲8七歩 まで
先手右玉の完成。いわゆる矢倉右玉 vs 後手矢倉というという格好になった。
先手右玉、積極的に仕掛ける
後手の持駒:歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・ ・v角v金 ・ ・|二 |v歩 ・v歩v歩 ・v金v銀v歩 ・|三 | ・ ・ ・v銀v歩v歩v歩 ・v歩|四 | ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 銀 ・ 歩 歩 ・ 歩|六 | ・ 歩 ・ 歩 ・ 銀 桂 ・ ・|七 | ・ 角 金 ・ ・ 金 玉 ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 後手番 手数=43 ▲5五歩 まで
青嶋五段、はやくも動く。5五歩突き。
実はこの攻め、現代右玉のすべてでも似た局面があり、解説されている。
具体的には152ページの第5図(見やすいように上下反転してます)。
先後逆、端の歩突き、銀の位置、飛車先の歩の位置の違いがある。
この局面は、ほとんど互角だ。
一方で、本譜の5五歩の時点では、すでにソフトの評価値は後手有利(-400以上)。
相手が6四銀型だと、少し苦しい仕掛けだったかもしれない。
藤井七段、絶妙の歩垂らし
後手の持駒:銀 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・ ・v角v金 ・ ・|二 |v歩 ・v歩v歩 ・v金v銀v歩 ・|三 | ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・v歩|四 | ・ ・ ・ ・ 角 ・ ・ 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 ・v歩 歩 歩 ・ 歩|六 | ・ 歩 ・ 歩 ・ 銀 桂 ・ ・|七 | ・ ・ 金 ・ ・ 金 玉 ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:銀 歩 手数=48 △5六歩 まで
歩銀交換のあと、藤井七段の手は5六歩打。この手が右玉崩しの好手で、ソフトでの最善手でもある。
右玉党としては流行してほしくなかったりする(笑)
後手の持駒:銀 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一 | ・ ・ ・ ・v飛v角v金 ・ ・|二 |v歩 ・v歩v歩 ・v金v銀v歩 ・|三 | ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・v歩|四 | ・ ・ ・ ・ 角 ・ 歩 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 ・ 銀 歩v歩 ・ 歩|六 | ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 桂 ・ ・|七 | ・ ・ 金 ・ ・ 金 玉 ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:銀 歩二 手数=54 △3六歩 まで
青嶋五段は堂々と同歩と取ったが、5二飛、5七歩打、3五歩、同歩、3六歩打と流れるように攻めが決まってしまった。
右玉、端攻めを敢行するが藤井七段の鬼手炸裂!
後手の持駒:銀 桂 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一 | ・ ・ ・ ・v飛v角v金 ・ ・|二 |v歩 ・ ・v歩 ・v金v銀v歩 ・|三 | ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・v歩|四 | ・ ・v歩 ・ ・ ・ 歩 歩 歩|五 | 歩 ・ 歩 ・ 銀 歩 ・ ・ ・|六 | ・ 歩 ・ 歩 歩 金 玉 ・ ・|七 | ・ 角 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:銀 歩三 後手番 手数=61 ▲1五歩 まで
桂損に加え、形を大きく崩されて厳しい右玉だが、1五歩と端攻めを敢行。
同歩に対して、1三歩打と端攻めのセオリー通り攻める。
しかし、藤井七段の次の手は予想しにくい手だった。
後手の持駒:桂 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一 | ・ ・ ・ ・v飛v角v金 ・ ・|二 |v歩 ・ ・v歩 ・v金v銀v歩 歩|三 | ・ ・ ・ ・v銀v歩 ・ ・ ・|四 | ・ ・v歩 ・ ・ ・ 歩 歩v歩|五 | 歩 ・ 歩 ・ 銀 歩 ・ ・ ・|六 | ・ 歩 ・ 歩 歩 金 玉 ・ ・|七 | ・ 角 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:銀 歩二 手数=64 △5四銀 まで
5四銀打!
非常に打ちにくい手だが、これが好手だった。
何もせずに次の5五歩打をくらってしまうとゲームセットなので、何かしら対応が必要だが、意外と難しい。
本譜は仕方がなく、3六金と対応した。
端攻めを逆襲して、右玉敗勢に
後手の持駒:桂 歩二 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・ ・v玉v桂 ・|一 | ・ ・ ・ ・v飛v角v金v銀 歩|二 |v歩 ・ ・v歩 ・v金 ・v歩v香|三 | ・ ・ ・ ・v銀 銀 ・ ・ ・|四 | ・ ・v歩 ・ ・ ・ 歩 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 ・ 銀 歩 金 ・ ・|六 | ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 玉 ・vと|七 | ・ 角 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:歩二 手数=72 △1七と まで
本譜は端攻めを逆用されてしまい、右玉がさらに苦しくなる。
広さを生かして早逃げをするが、敵陣は堅い。
後手の持駒:金 銀 香 歩二 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ | ・ 馬 ・ ・ ・ ・v玉v桂 ・|一 | ・ ・ ・ ・v飛v角v金v銀 歩|二 |v歩 ・ ・v歩 ・v銀 ・v歩 ・|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・|五 | 歩 ・v歩 歩 銀 歩v桂 ・ ・|六 | ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・|七 | ・ ・ 金 ・ 玉 ・ ・vと ・|八 | 香 桂 飛 ・ ・ ・ ・ ・v杏|九 +---------------------------+ 先手の持駒:金 桂 香 歩三 後手番 手数=87 ▲8一馬 まで
少し進んで、上図の局面。
右玉は広さに期待したいが広い形。すでに勝勢に近いが、次の藤井七段の手も絶品だった。
ぜひ、予想をしてほしい。
後手の持駒:金 銀 香 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ | ・ 馬 ・ ・ ・ ・v玉v桂 ・|一 | ・ ・ ・ ・v飛v角v金v銀 歩|二 |v歩 ・ ・v歩 ・v銀 ・v歩 ・|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・|五 | 歩 ・v歩 歩 銀 歩v桂 ・ ・|六 | ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・|七 | ・v歩 金 ・ 玉 ・ ・vと ・|八 | 香 桂 飛 ・ ・ ・ ・ ・v杏|九 +---------------------------+ 先手の持駒:金 桂 香 歩三 手数=88 △8八歩 まで
8八歩打!
逃げ道に刺さる好手。
さらに進んで次の局面。
後手の持駒:金 桂二 香 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ | ・ ・ ・ ・ ・v銀v玉v桂 ・|一 | ・ ・ ・ ・v飛v角v金v銀 歩|二 |v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・|三 | ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・ ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・|五 | 歩 ・v歩 歩 銀 歩 馬 ・ ・|六 | ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・|七 | ・ ・ 金 ・ 玉 ・ ・vと ・|八 | 香 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v杏|九 +---------------------------+ 先手の持駒:金 桂 香 歩五 後手番 手数=94 △8九飛 まで
一見手がかりがなさそうだが、藤井七段は自玉の堅さを生かして寄せに入る。
流れるような攻めを棋譜で堪能してほしい。
以降は、長手数の詰みを藤井七段が読み切って快勝。
右玉の見せ場なかったが、藤井七段の恐ろしい切れ味が見られたのでよしとしよう。
青嶋五段は、今後も右玉を採用してほしい。
ちなみに、ソフト検討の結果が以下。
藤井七段の一致率は70%!
ネット対局だったら、相手のソフトを疑ってしまうところだ(笑)
形勢グラフは以下の通りである。
これを見ても藤井七段の完勝といえるだろう。
これで、藤井七段は新人王戦決勝進出。
ぜひ、優勝して棋界をさらに盛り上げてほしい。