新人王戦の準決勝という大舞台で右玉が採用された。
採用したのは、現代右玉のすべての著者でもお馴染み、若手強豪の青嶋未来五段。
対するは、将棋界の超新星・藤井聡太七段である。
期待しか持てない一局だ。
棋譜は以下からどうぞ。
2018-09-25 新人王戦青嶋未来 五段 vs. 藤井聡太 七段 第49期新人王戦トーナメント戦
プロでは珍しい先手右玉
青嶋五段、はやくも右玉の態度を表明。
プロ棋戦で先手の右玉は珍しく、現代右玉のすべてでも触れられてない。
結果的には少し早かったかもしれない。
先手右玉の完成。いわゆる矢倉右玉 vs 後手矢倉というという格好になった。
先手右玉、積極的に仕掛ける
青嶋五段、はやくも動く。5五歩突き。
実はこの攻め、現代右玉のすべてでも似た局面があり、解説されている。
具体的には152ページの第5図(見やすいように上下反転してます)。
先後逆、端の歩突き、銀の位置、飛車先の歩の位置の違いがある。
この局面は、ほとんど互角だ。
一方で、本譜の5五歩の時点では、すでにソフトの評価値は後手有利(-400以上)。
相手が6四銀型だと、少し苦しい仕掛けだったかもしれない。
藤井七段、絶妙の歩垂らし
歩銀交換のあと、藤井七段の手は5六歩打。この手が右玉崩しの好手で、ソフトでの最善手でもある。
右玉党としては流行してほしくなかったりする(笑)
青嶋五段は堂々と同歩と取ったが、5二飛、5七歩打、3五歩、同歩、3六歩打と流れるように攻めが決まってしまった。
右玉、端攻めを敢行するが藤井七段の鬼手炸裂!
桂損に加え、形を大きく崩されて厳しい右玉だが、1五歩と端攻めを敢行。
同歩に対して、1三歩打と端攻めのセオリー通り攻める。
しかし、藤井七段の次の手は予想しにくい手だった。
5四銀打!
非常に打ちにくい手だが、これが好手だった。
何もせずに次の5五歩打をくらってしまうとゲームセットなので、何かしら対応が必要だが、意外と難しい。
本譜は仕方がなく、3六金と対応した。
端攻めを逆襲して、右玉敗勢に
本譜は端攻めを逆用されてしまい、右玉がさらに苦しくなる。
広さを生かして早逃げをするが、敵陣は堅い。
少し進んで、上図の局面。
右玉は広さに期待したいが広い形。すでに勝勢に近いが、次の藤井七段の手も絶品だった。
ぜひ、予想をしてほしい。
8八歩打!
逃げ道に刺さる好手。
さらに進んで次の局面。
一見手がかりがなさそうだが、藤井七段は自玉の堅さを生かして寄せに入る。
流れるような攻めを棋譜で堪能してほしい。
※95手目からの棋譜リンク
以降は、長手数の詰みを藤井七段が読み切って快勝。
右玉の見せ場なかったが、藤井七段の恐ろしい切れ味が見られたのでよしとしよう。
青嶋五段は、今後も右玉を採用してほしい。
ちなみに、ソフト検討の結果が以下。
藤井七段の一致率は70%!
ネット対局だったら、相手のソフトを疑ってしまうところだ(笑)
形勢グラフは以下の通りである。
これを見ても藤井七段の完勝といえるだろう。
これで、藤井七段は新人王戦決勝進出。
ぜひ、優勝して棋界をさらに盛り上げてほしい。