言わずとしれた将棋界のスーパースター羽生竜王。
オールラウンダーである羽生竜王は右玉も指しており、その棋譜は右玉党としてもバイブルになるはずだ。
羽生の右玉は、渡辺竜王(当時)を圧倒した2008年の竜王戦が有名だが、ここでは2016年の王位戦対木村八段戦を紹介したい。
当時の中継サイトがまだ残っているので、こちらから再生してみよう。
2016年9月12日~9月13日 第57期王位戦七番勝負 第6局羽生善治王位 対 木村一基八段
角換わりから左に玉を寄せるが、相手の動きを見て右玉に移行。53手時点が以下の局面である。
後手の持駒:角 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v玉v金 ・ ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v銀 ・ ・v歩 ・|三 |v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩 ・v歩|四 | ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 歩 角 歩 ・ 歩|六 | ・ 歩 銀 金 ・ 銀 桂 ・ ・|七 | ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=52 △5三銀 まで
ここで先手の木村八段は▲2四歩。△同歩に対して、▲同角と取った。これが疑問手だったようだ。
後手の持駒:角 歩二 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v玉v金 ・ ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v銀 ・ ・ ・ ・|三 |v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩 角v歩|四 | ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|六 | ・ 歩 銀 金 ・ 銀 桂 ・ ・|七 | ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:歩 後手番 手数=55 ▲2四角 まで
自然のように見えるが、次の一手が機敏。
後手の持駒:角 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v玉v金 ・ ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v銀 ・ ・ ・ ・|三 |v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩 角v歩|四 | ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|六 | ・ 歩 銀 金 ・ 銀 桂v歩 ・|七 | ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:歩 手数=56 △2七歩 まで
▲同歩は△5九角打が好手。馬作りを防ぐには▲5七角とバックすることだが、△2七歩打が激痛。
この展開は先手マズいだろう。というわけで、△2七歩の叩きは取れない。これで後手が優勢となった。
以下、▲2九飛、△4八角打、▲4六角、△2八歩成。
後手の持駒:歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v玉v金 ・ ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v銀 ・ ・ ・ ・|三 |v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩 ・v歩|四 | ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 歩 角 歩 ・ 歩|六 | ・ 歩 銀 金 ・ 銀 桂 ・ ・|七 | ・ ・ 金 ・ ・v角 ・vと ・|八 | 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:歩 手数=60 △2八と まで
▲同飛、△2九角成で馬を作ることができた。
そして、ハイライトは次の場面。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一 | ・ ・v玉v金 ・ ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v銀 ・v桂 ・ ・|三 |v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩 ・v歩|四 | ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・ 桂 ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 歩 角 歩 飛 歩|六 | ・ 歩 銀 ・ 金 銀 ・ ・ ・|七 | ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八 | 香 桂 玉 ・ ・ ・v馬 ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:歩三 後手番 手数=67 ▲2五桂 まで
△2五歩に対して、▲同桂と取ったところだが、ここからの手順が素晴らしかった。
△4五桂と跳ね違って▲5八金と引いたところに、△5七桂成!
後手の持駒:歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一 | ・ ・v玉v金 ・ ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v銀 ・ ・ ・ ・|三 |v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩 ・v歩|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 歩 角 歩 飛 歩|六 | ・ 歩 銀 ・v圭 銀 ・ ・ ・|七 | ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八 | 香 桂 玉 ・ ・ ・v馬 ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:歩三 手数=70 △5七成 桂 まで
この手が決め手。▲同角は△同馬、▲同金、△4八角打が飛車金両取り。▲同金は△4五歩打、▲2四角、△2一飛で角が死ぬ。というわけで、この桂成が取れないということではゲームセットといえるだろう。
以下はリードを広げた羽生王位(当時)の勝利。
右玉の理想とも言える、素晴らしい一局だった。