今年(2018年)4月に行われた竜王戦5組ランキング戦から阿部光瑠六段 vs 藤井聡太六段(当時)の一局を紹介したい。
阿部六段が先手で角交換右玉を採用するという少し珍しい一局で、対する藤井六段は矢倉で迎え撃つことになる。
結果は藤井六段の勝ちだったが、大激戦。右玉党にとって参考になる手筋は多い。
棋譜は以下からどうぞ
2018-04-10 竜王戦阿部光瑠 六段 vs. 藤井聡太 六段 第31期竜王戦5組ランキング戦
先手、角交換右玉へ
角交換から先手は右玉へ。プロ棋戦では珍しいがアマチュアではよくある局面。対する後手は早繰り銀模様。
ここで、後手から7五歩の仕掛けもあるが、すでに右玉は完成済み。先手としても銀交換を許しても、それほど問題ない。
1筋の歩を突き合い、4四歩としてきたところ。
ここで右玉の手は広い。気分で違う手を指す人が多いだろう。
ソフトの候補は、9六歩、5六歩、6六歩がどれでも一局のようだ。
右玉側としては、難敵である5四角と設置される筋は常に警戒しなければならない。
阿部六段は6六歩を選択。
藤井六段、7五歩を敢行
後手はすかさず7五歩と開戦。
ここも手が広く、同歩と取る一手だけではない。
ソフトの読みでは、同歩のほかに6九飛、6七金左、5六歩、6七金右などが候補手。いずれも互角だ。
6五歩も手筋だが、同銀と取られるとやや甘く、若干不利になる。
阿部六段は5六歩を選択。
実戦は、3一玉、2五歩、4三金、6九飛と7五歩を保留したま進行。
飛車の6筋転換は、右玉のよくある作戦。ただし、右辺の防御力は大きく落ちてしまうので注意したい。
先手は矢倉を完成させ、右玉は7七桂と跳ねて攻め態勢に。
右玉の左桂はうまく捌ければ最高だが、下手に跳ねてしまうと格好の目標になってしまうので諸刃の剣である。
右玉、桂跳ねから仕掛ける
後手が5六歩としたところで、先手右玉は8五桂と積極的な攻め。
後手は6二銀と引く。
後手側からは7五歩打とする手があるので、先手は足を止められない。
ソフトは5二角打と、馬を作る手を推奨しており、形勢は互角。
阿部六段は8五歩と桂馬を支える。
後手は桂馬を取りに行く8四歩打。対して、7四歩打、7五歩に対して、同歩が冷静。
桂損しているため、ソフトの評価はやや不利だが、後手としても歩切れかつ、抑え込まれているので互角に近いかもしれない。
ここからの右玉のバランス感覚はすごい。
先手、形にとらわれないバランス感覚
6七金。
対して後手は6四歩から手を作りに来るが、同歩、5三金、7七金。
後手に隙を与えない指し方。
ここで後手は8八角打で勝負。
6八金、9三桂、8九飛、7七角成、同金と進行。
右玉のバランスはかなり崩されたが、局面は互角だ。
少し進んで、後手から7八銀の痛打が入ったところ。
ソフト評価値は互角。
ここは両取り逃げるべからずで8三歩成。後手も冷静に8一飛と逃げる。
先手としては、7三歩成を先に入れたほうが良かったかもしれない。ここから形勢はやや後手に。
右玉、痛恨の疑問手
右玉は5八金打と補強。
しかし、この手は疑問手で形勢が大きく後手に振れてしまった。
が、ここからの阿部六段の粘り方は素晴らしく、簡単には土俵を割らない。
6九歩打は受けの手筋。同龍なら6八角打ではじく。
藤井六段、華麗に詰ます
局面は2五歩打で首を差し出したところ。
先手玉には11手詰みがある。後手目線で読み切ってほしい。
正解は2七金打!
阿部六段はここで投了。
以下、3九玉は▲3九玉、△2八金、▲4八玉、△5八龍、▲同銀、△5九角打、▲5七玉、△6八龍、▲4七玉、△3七角成まで。
4八玉は▲4八玉、△5八龍、▲同銀、△5九角打、▲5七玉、△6八龍、▲4七玉、△3七角成で詰む。
以上、阿部光瑠六段の右玉でした。
負けてはしまったけど、終盤まで互角の大激戦でした。