2018年10月18日に開催された王位戦予選で、阿久津八段が右玉を採用してくれた。
阿久津八段と言えば、実力トップクラスのA級棋士。A級リーグでは大苦戦しているが、トップ棋士であることは間違いない。余談だが、阿久津八段とはミギーがかつて所属していた事務所で鍋を囲んだことがある。テレビで見るのと変わらない雰囲気だった。
対する三浦九段も言わずと知れた強豪。昨年はソフト指し冤罪事件という不運があったが、その後の結果でもソフト指し疑惑を払拭する活躍を見せている。
というわけで、棋譜は以下からどうぞ
2018-10-18 王位戦阿久津主税 八段 vs. 三浦弘行 九段 第60期王位戦予選
角換わり腰掛け銀の定跡型から、変則右玉vs穴熊になるという変わった一局となった。
序盤は角換わり腰掛け銀
序盤は角換わり腰掛け銀の定跡型。お互いに4八金・2九飛、6二金・8一飛という流行の形だ。
後手からの仕掛け。この時点でも右玉になるとは想像しにくい。
ソフトの評価値は互角で、この仕掛け自体はアリだろう。
先手玉の大移動
先手は入城せずに6八玉! ここから右側へ大移動を始める。
3手連続で玉を動かして4筋まで移動。
さらには左金まで右側に寄せて、4七金型の変則右玉が完成した。
後手、千日手を打開する
少し進んで次の局面。先手は6七銀と5八銀の往復、後手は6四角と4二角の往復で千日手模様に。
ここで後手が打開する。
1二香で穴熊を明示。この時点でのソフト評価値はまったくの互角だ。
先手は角打ちから動く
対する先手は4一角打の勝負手を放ち、手を作りに行く。
6三銀、同角成、8三角打、6一飛、7四銀成。
7三の桂を取れることは確定し、角と銀桂と2枚換え。先手は一応満足か。
しかし、後手の陣形はしっかりしており、ソフトの評価値も-200と後手に振れている。
少し進んだ局面。先手は2筋に香車を設置。
6六香打、6八歩、6七香成、同歩から後手は7七角成!
しかし、これは悪手でやりすぎだったようだ。局面は先手優勢に。
右玉の攻めと穴熊の粘り
後手は飛車の成り込みに成功。対して、右玉は2四桂打と手筋の桂馬打ち。
先手は1三銀打とがんばるが、次の一手は目のさめるような手。
1一角打!
3ニの金に玉以外の紐がついていないことを狙った角打ち。
同玉に3二桂成。
ただし後手は2二の利きが多くまだ崩されたわけではない。
2二銀打が穴熊らしい粘りだ。終盤にも感じるが、ここからも長かった。
詰めろに対して2二金打で、穴熊を再構築。先手は詰めろを続けなければならない。
3九香打が攻防の詰めろ。後手は4八龍とはできない。
先手は受けにまわったところで、後手は9一龍と引いて、金を狙う。
焦る局面だが、4一銀打で大丈夫。
最後は長手数の詰みを読み切り
局面は4一龍と金を外したところ。最後のお願いで、取ると先手玉は詰んでしまう。
しかし、後手玉も詰みがあった。簡単な詰みではないが、阿久津八段は見逃さない。
2二銀、同玉に、3三金、同桂と金を捨ててから、さらに2一金打とするのがすごい手順。
同龍、同馬。同玉とすると簡単に詰むので、1三玉と逃げる。
1七香、1五歩打、1五香、同銀で、1二馬。
この手を見て三浦九段が投了した。
1四玉と逃げるのは2三飛成の1手詰め。
同玉は、2一角打、同玉、2三飛成、2二合、3二桂成、1一玉、2二龍までの詰みがある。
以上、最後は穴熊を食い破った阿久津八段の快勝。
途中から右玉へと路線変更する、プロらしい一局でした。