王将戦の挑戦者決定リーグの広瀬章人八段 vs 豊島将之二冠の一局で、豊島二冠が右玉を採用してくれた。
2人は棋士レーティングの1位と2位。
現将棋界最高峰の戦いで右玉が登場したことは喜ばしいところ。
豊島二冠は、現在唯一となる複数タイトル保持者。才能は若い頃から期待されていたが、ついに開花したと言ってよいだろう。
一方の広瀬八段はレーティング1位棋士で、タイトル経験者。
竜王戦で、羽生竜王に挑戦中だ。
というわけで、棋譜は以下からどうぞ。
2018-10-19 王将戦広瀬章人 八段 vs. 豊島将之 二冠 第68期王将戦挑戦者決定リーグ戦
戦型は腰掛け銀模様から穴熊 vs 右玉となる。
出だしは腰掛け銀模様
序盤は角交換腰掛け銀模様の出だしに。プロらしく、一直線に右玉とはならない。
また、4五桂への警戒もできている形だ。
後手は6三銀、5二玉として、同型になる可能性は低くなった。
玉が再び4二へ。相手の動きを見ている感じ。千日手は歓迎だろう。
後手、右玉へ
4五歩を見てから、後手は右玉へ。
アマチュア同士の対局でも見かける、人気の局面となった。
最強棋士・豊島二冠はここからどんな構想を見せてくれるのだろうか?
先手は穴熊でさらに堅く進める。
一方の、右玉も左銀を寄せて堅い守りに。
この局面でのソフト評価はまったくの互角。右玉党としては文句のない展開だ。
4六角打 vs 右玉の戦い
先手は4六角打。
この形ではよくある角打ちで、ソフトの最善手でもある。右玉にとってのテーマ図とも言ってよいだろう。右玉NOWでも今後研究していきたい局面だ。
右玉は待機策の5二金。
対して、先手は2四歩、同歩、同角と歩交換。
ちなみにここで同飛と取ってしまうと、1三角打がある。
実際はそれでも難しいが、右玉がやや有利となる。
少し形は違うが、以下のエントリも参考にしてほしい。
角交換右玉 vs 穴熊で飛車先の歩を切ってきた場合の対策
右玉にとって、相手が飛車先の歩を切ってきたときはチャンス。 素直に歩打ちで収めないのが、右玉の極意になる。 (そのうちケース別にまとめたいところ) 今回は相手が穴熊場合を検討してみよう。テーマ図は以下の通り。 安全な手は当然ながら8七歩打ではあるが、チャンスを逃してしまう。 穴熊のように金銀が一方に固まっている場合は、角打ちのスキがあることが多い。
右玉としては2三歩打も考えられるが、豊島二冠は5五歩で反撃。
同銀は4七角打があるため、この歩は取れない。
ただし、ソフトの検討によるとこの手が若干緩手だったようだ。
素直に2三歩打のほうが、互角を維持できたかも知れない。
4七銀と引いた手に対して、3三桂。
やはり素直に2三歩とは打ちたくないところ。
広瀬八段の隙のない攻め
少し進んで、次の局面。
右玉は崩壊間近、先手は安泰ということで、先手優勢の局面。
が、ここからも攻めは難しいと思われた。
しかし、広瀬八段の華麗なる攻めが決まる。
7四歩、同金、7五歩、8四金としてから、7三銀打!
銀を犠牲にして、玉を角筋に入れる一手。
厳しいが、後手は取るしかない。
4三桂成の空き王手。
6三玉、5三成桂、同玉とするが、次の手も好手。
7二銀打!
飛車が詰んでいる。後手は飛車を取らせてる間に攻め合いにしたいが、ちょっと厳しいか。
豊島二冠が粘るも広瀬八段が攻め切る
後手が5二桂と攻め駒を攻めつつ、4四にも効かせた場面だが、後手玉に詰みがあった。
4五香打、5四玉に6三銀打が好手。
この手を見て、豊島二冠は投了した。
以下、同玉に6一龍、6二合、7二銀不成、5四玉、5二龍、5三合、6六型打まで。
序盤は右玉も互角だったが、広瀬八段の攻めをうまくつなぎ、決めきった感じ。
一局を通して、右玉が有利となる局面はなかったかもしれない。
しかし、右玉が悪かったわけではないと思うので、豊島二冠は今後も右玉を採用してほしいものです。