新人王戦の谷合廣紀三段と伊藤巧匠三段戦で、伊藤三段が振り飛車相手の右玉を採用したので紹介したい。
新人王戦は、26歳六段以下の若手棋士、奨励会三段成績上位者と赤旗名人、女流枠がある公式棋戦。昨期は藤井聡太七段が優勝したことにも話題となった。
振り飛車相手には糸谷流右玉という作戦もあるが、本局は雁木右玉に。
第50回新人王トーナメント戦 谷合廣紀三段 vs伊藤巧匠三段戦
四間飛車 vs 右玉の戦いに
先手は右四間模様から四間飛車に振り直したことに対して、後手は右玉で対抗。7八金型にする糸谷流右玉ではなく、雁木右玉だ。
先手はさらに7筋に飛車を振り直して三間飛車に。右玉側は3三桂跳ねで、攻めの態勢を整える。
角筋は止まるが、1三角もあるほか、桂馬を跳ねれば最終的に角筋は通る。
また、先手は一度8六角として8五歩を誘った。この手の意味は、将来的に9五角と飛び出す手を生じさせるということだろう。
右玉の後手から開戦
後手の右玉から4五歩と開戦。ここから、同歩、6五歩、3七桂、6六歩、同銀、4五桂と好調な攻め。
桂馬を跳ねた瞬間、6六の銀に角が当たる。
感想戦では3七桂に変えて、4四歩が指摘されたとのこと。たしかにそれなら角筋が止まるため互角。
現局面は後手が若干良さそうだ。
少し進んだ局面。この4八歩打がソフトも推奨するセンスのある一手。
この歩を取ると、角と金いずれでも5七桂成がある。
少し進んで4九歩成、同金としたところ。
ここが一つの分岐点だったかも知れない。
本譜は5三金と飛車に当てたが、9九角成や1五桂打がソフトの読み。
ここから形成は先手に傾いていく。
最後は25手詰みで終了
上の局面は4五桂打として下駄を預けたところ。
後手玉には25手詰みがある。豊富な持駒を使って詰みあげてほしい。
脊尾詰みによる詰み結果の一例。
実戦は、7三歩成、同玉、7四歩打、同玉、5二角打、6三角打、同角成、同玉、7五桂打で、後手の伊藤三段の投了となった(以下図)。
同銀とすると5五桂打から11手詰みとなる。
以上、残念ながら右玉が負けてしまったが、中盤までは後手の右玉が互角~優勢という局面もあった。伊藤三段には、また右玉を採用してほしい。