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佐藤康光会長、再び雁木右玉を採用!

プロの右玉

将棋連盟会長である佐藤九段が、先日の朝日杯に続いて棋聖戦でも右玉を採用してくれた。

そのときの記事はこちら

佐藤康光会長の凡人にはとても真似できない右玉
2018年12月8日の朝日杯二次予選で佐藤康光九段が右玉を採用してくれた。 佐藤九段と言えば、先日の順位戦でも右玉を採用して勝利したばかり。 そちらの記事は以下を参考にして欲しい。 というわけで、棋譜は以下から。 2018年12月8日 第1...

今回の対局相手は竜王戦で羽生九段を下し、勢いに乗る広瀬竜王。
レーティングでもトップで、現在もっとも強い棋士といっても過言ではない。

棋譜は以下からどうぞ。

2019-01-07 棋聖戦広瀬章人 竜王 vs. 佐藤康光 九段 第90期ヒューリック杯棋聖戦二次予選

角換わり拒否から雁木右玉へ

後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀 ・v玉 ・v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・v金v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩 ・ ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 角 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 銀 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=12  △4四歩  まで

角筋を止めて角換わりを拒否。

後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・v金v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v銀v銀 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 角 歩 歩 銀 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 銀 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=22  △5三銀  まで

雁木の形に。左(後手視点)に行けば一般的な雁木だが……。

後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v玉 ・ ・v金v角 ・|二
| ・ ・v桂v金v銀v銀 ・v歩v歩|三
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 銀 歩 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 角 ・ 歩 ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 銀 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩 
手数=40  △6三金  まで

佐藤九段は玉を右に寄せて右玉へ。いわゆる雁木右玉という形だ。

佐藤九段、端角からの仕掛け

後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v玉 ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂v金v銀v銀 ・v歩v角|三
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 銀 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 角 銀 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩 
手数=44  △1三角  まで

端角で浮いている歩を狙う。

後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v玉 ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂v金v銀v銀 ・v歩v角|三
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・ ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 角 銀 歩 銀 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩 
手数=46  △3五歩  まで

3五歩と一歩交換を狙う。糸谷流右玉でよくある手筋だ。
以下やり取りがあって次図。

後手の持駒:歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v玉 ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂v金v銀v銀 ・v歩v角|三
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・ ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ 銀 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 銀 歩 金 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 角 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩三 
手数=54  △1三角  まで

この局面はソフトによるとやや先手有利。次に角頭を狙う1五歩が成立してしまいそう。
本譜も次の手は1五歩で、その後右玉側が有利になる局面はなかった。

勝負手も不発に

中盤は広瀬竜王の堅実な指し回しでリードを広げて以下の局面。

後手の持駒:銀 歩二 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ 杏 ・ ・ ・|一
| ・ ・ ・v玉 銀 ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v桂v金v銀 圭 ・v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 杏|五
| 歩 歩 歩 歩 金 ・ ・ ・ ・|六
| 玉 ・ 角 ・ 歩 ・ ・ ・v歩|七
| ・ ・v金 ・vと ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・v龍 歩 歩|九
+---------------------------+
先手の持駒:角 金 銀 桂 歩 
後手番
手数=109  ▲9七玉  まで

評価値的には右玉敗勢だが、佐藤九段は勝負手を放つ。

後手の持駒:銀 歩三 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ 杏 ・ ・ ・|一
| ・ ・ ・v玉 銀 ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v桂v金v銀 圭 ・v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 杏|五
| 歩v飛 歩 歩 金 ・ ・ ・ ・|六
| 玉 ・ 角 ・ 歩 ・ ・ ・v歩|七
| ・ ・v金 ・vと ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・v龍 歩 歩|九
+---------------------------+
先手の持駒:角 金 銀 桂 歩 
手数=110  △7六飛  まで

7六飛!の飛車切り。
取るとどうなるのか?
同角なら8五桂から詰み、同玉も8九龍から詰み。

しかし、この局面には後手玉に詰みがあった。

後手の持駒:銀 歩三 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ 角 杏 ・ ・ ・|一
| ・ ・ ・v玉 銀 ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v桂v金v銀 圭 ・v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 杏|五
| 歩v飛 歩 歩 金 ・ ・ ・ ・|六
| 玉 ・ 角 ・ 歩 ・ ・ ・v歩|七
| ・ ・v金 ・vと ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・v龍 歩 歩|九
+---------------------------+
先手の持駒:金 銀 桂 歩 
後手番
手数=111  ▲5一角  まで

5一角打。
7一玉、7二金打、同玉、6三銀成、同玉、5三桂成、7二玉、6三成桂、同玉、6二金打、5三玉、4二銀打、4三玉、3三銀成、同竜、同角成、同玉、2五桂打で後手投了。

後手の持駒:角 金 銀三 桂 歩三 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ 杏 ・ ・ ・|一
| ・ ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・ ・ ・v玉v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 桂 杏|五
| 歩v飛 歩 歩 金 ・ ・ ・ ・|六
| 玉 ・ 角 ・ 歩 ・ ・ ・v歩|七
| ・ ・v金 ・vと ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩|九
+---------------------------+
先手の持駒:飛 銀 歩 
後手番
手数=130  ▲2五桂  まで

以下は、2二玉、1三銀打、3二玉、4二飛打、2一玉、1二飛成で詰み。
飛車切りの局面からは、25手で詰ましたことになる。さすがは広瀬竜王。

なお、最短は6一金打からでそれでも19手かかるようだ。

というわけで、佐藤九段の右玉は敗れてしまったが、構想自体は十分に成立していると思う。
今後も佐藤九段には右玉を採用して欲しい。

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