2019年1月24日に開催された朝日杯オープンの広瀬章人竜王 vs 深浦康市九段の一局で、深浦九段が右玉を採用してくれた。
深浦九段と言えば、かつては王位を獲得したこともあるトップ棋士。ネットでは「地球代表」との愛称も(元ネタは2chのレスから)。
一方の広瀬竜王はレーティングトップを走る現代最強棋士の1人だ。
というわけで、棋譜は以下からどうぞ。
2019年1月24日朝日杯広瀬竜王-深浦九段
相掛かり模様から角換わりとなって右玉へ
序盤は相掛かり模様で、角換わり腰掛け銀に変化。まだ右玉という感じではない。
後手の玉も左へ。プロ間の将棋ではストレートに右玉に変化することは少ない。
9五歩と端を詰める。これで右玉にする可能性も高くなった。
中住まいへ。最近の流行を考えれば、この位置で戦うことも十分に考えられる。
ついに右玉へ。
5二金と引いて、5三銀として右玉の完成。
この時点でのソフト評価値はわずかに後手よりの互角。右玉としては十分以上の態勢といえるだろう。
先手の仕掛けに対して角打ちで対抗
先手は5五歩から一歩交換を狙う。
同歩、同銀に対して後手は2二角打! 間接的に玉も狙っており、本局はこの角が十分に働いた。
5四歩と収める手もないわけではないが、将来的に先手から4七角打があり、先手が指しやすくなる。
なお、ソフトの候補は桂頭を狙う3五歩。
4六銀に8六歩、同歩、6五歩。
相手の飛車がいるだけにかなり怖い筋だが、深浦九段は勝負した。
同歩に7五歩が継続手。何気ない手だが、同歩としてしまうと技がかかる。
仮に同歩とした場合の後手の次の一手は?
8六飛!(上変化図)があって、後手勝勢。
王手金取りの十字飛車が見事に決まる。
角が効いてるためこの飛車は取れない。
とうわけで、5五歩打と角筋を止めたところに、後手は6四歩打。これも怖い手だが、戦力を前に集中させていく。
銀を繰り出したところで、6五歩打として後手陣も安定した格好に。
先手5七金に対する次の深浦九段も右玉らしい一手。
戦場を避ける右玉ならではの一手
戦場早めに避ける5一玉。この感覚は右玉党なら覚えておきたい。
ちなみに藤井聡太七段が採用した右玉でも似たような早逃げがある(6一玉だが)。そのときの対局相手は深浦九段だった。
藤井聡太七段が再び右玉(風)作戦を採用! 高見叡王を下す
藤井聡太七段といえば、先日右玉を採用して右玉党を歓喜させてくれたが、AvemaTVの超早指し戦で再び、右玉(風)の戦法を採用してくれた。 藤井七段の過去の右玉はエントリから。
玉を安定したところで7五銀と繰り出す。ここから7六歩打、8六銀、同銀、同飛、8六歩打と進んで以下図。
ここからの深浦九段の攻めは必見だ。
深浦九段の攻めに広瀬竜王が間違える
強く7六飛とした手が金取り。
5七銀に対して、8六歩打。
同歩に3一角が盤面を広く見た一手。ただ、ここは先手に2二歩打があったかもしれない。同角なら1歩で一手得。
先手が銀打ちから銀冠にしてガッチリ受けたあと、8八角打。
これが広瀬竜王痛恨の悪手だった。
香取りは放置して8五歩打。
9一角成に対して、8六歩と進める。
ここで先手が銀を逃げてしまうと、拠点を生かし、銀を打ち込まれて崩壊してしまう。
そのため、同銀と取ってしまうのが手筋だ。
同銀、同角に7五香打。
飛車は逃げず、5八銀打が好手。
飛車を取り合うと先手の王手角取りが入るので良さそうに見えるが、香車が手持ちになるので龍を取り返す手があり、後手優勢。
先手の飛車が逃げ、角で香車を払ったあと少し進んで上図の局面。2度めの8六歩打が炸裂。対して7七歩打として次の局面へ。
深浦九段の流れるような攻め
ここ飛車を引く手は甘く、一気に攻め潰す手がある。
8七歩成、同金(同玉は8三香打で寄り)に、飛車を見捨てる8六歩打!
7六金としてしまうと、8七銀打の一手詰み。従って、7六歩と飛車を取るしかないが、8七歩成、同玉で先手の囲いは崩壊する。
玉は裸になったが、ここで緩むとすぐに逆転してしまう。しかし、深浦九段の攻めは鋭かった。
8六歩打、同玉、7七玉に対して、7六銀!
打ったばかりの銀を捨てる強烈な手。同玉しかないが……。
7四香打! が継続手。7五歩と受けても同香とされてしまう。同玉は8五金打で詰み。つまり、飛車取りは避けられない。
すぐには飛車を取らず、8六歩打、同玉、8五金打、8七玉、8六歩打、9八玉まで決めてから8九香成。
8八歩と受けるが、8九香成が好手。同玉に7七桂打で先手の広瀬竜王が投了。
詰みはないが、7八玉は7六金、9八玉は7九飛打がある。
というわけで、最後は深浦九段が華麗に寄せて勝利した。現在最強と目される広瀬竜王は対右玉2連敗。
右玉NOWは今後も深浦九段を応援します!