深浦九段と広瀬竜王の対局と言えば、先週開催された朝日杯で深浦九段が後手で右玉を採用し、攻め倒したことが記憶に新しい。
深浦九段が右玉で広瀬竜王を攻め倒す!
2019年1月24日に開催された朝日杯オープンの広瀬章人竜王 vs 深浦康市九段の一局で、深浦九段が右玉を採用してくれた。 深浦九段と言えば、かつては王位を獲得したこともあるトップ棋士。ネットでは「地球代表」との愛称も(元ネタは2chのレス...
そして、2019年1月31日。A級順位戦のラス前局で再び深浦九段が右玉を採用してくれた。
広瀬竜王は名人への挑戦を争うA級順位戦で6勝1敗と羽生九段、豊島二冠と並んでトップ(1月31日朝時点)。
一方の深浦九段は負ければ降級と、どちらにとっても重要度の高い対局となった。
棋譜は以下からどうぞ。
2019-01-31 順位戦深浦康市 九段 vs. 広瀬章人 竜王 第77期順位戦A級8回戦
序盤は矢倉から右玉へ
序盤の進行は矢倉模様。
深浦九段の玉は右へ。いわゆる矢倉右玉という形だ。
先手かつ矢倉右玉はプロ棋戦ではかなり珍しいのではないだろうか。しかし、順位戦の大事な対局で採用したならば、深浦九段の研究があるのだろう。
角の打ち合いに
右玉は左側によった金銀を活用したいところなので、6八銀。
後手はすかさず、8八角成。
後手は3三角打。7七桂は桂頭を狙われるし、7七金は8六歩、同歩、8八歩打が刺さってしまう。
というわけで、しっかりと6六角打が正しい対応だ。
右玉、厚みを築く
右玉は左銀を4六銀まで進出して厚みを築く。ソフト的な形勢は互角(+260程度)だが、右玉のほうが指しやすいだろう。
右玉は3五歩から仕掛ける。
同歩に3四歩が継続手。後手は2二銀と引いたが、同銀には1六角打がある(以下、変化図)。
これが1六歩としなかった効果。3三金と受けると、3四角、同金、2三飛車成がある。上変化図の最善手は3六歩だが、これも先手やや有利だ。
再び角の打ち合いに
少し進んで8四角打。単純な角打ちに見えるが、意外とやっかいな相手だ。
6六角打で受けるが、同角、同歩で再び8四角打。
意外と受けにくいかなーと思って次の手を待ってみた。
7七金の受け。この手には8八歩打があるので指しにくいと思ったが……。
広瀬竜王は6五歩。しかし、ソフトの評価値的にも8八歩のほうが良かったかもしれない(互角)。この局面はやや先手有利の評価が。
先手は7五歩と大駒を近づける手筋。
6六金に対して6五歩。
ここで先手は金取りを放置して6四歩。
7二銀引きに先手も6七金と引く。7五歩角に対しては5七角打でしっかり受ける。
この対局は「角には角」の格言を地で行く手筋がよく出てくる。
広瀬竜王、苦心の受け
先手は堂々と4四歩。玉頭だけに怖いが守備もしっかりしているのでチャンスか。
少し進んで、龍は作られたものの、先手の攻め駒も前進した局面。
後手にとって意外にやっかいな局面だ。
ぱっと見は、7五歩が龍の横利きが利いて良さそうだが、6二角成! の強襲がありそうだ(以下、変化図)。
6二角成。同銀とするしかないが、8四金打がある。9五龍と逃げるが、7三金が好手。
7三金の局面。これも同銀と取るしかないだろう。ここで左桂を6五桂と跳ねるのが気持ちいい跳躍。というわけで、後手は7五歩を選びにくい。
広瀬竜王はじっと5二歩。これが受けの好手で広瀬竜王の底力を感じられる。
深浦九段の力強い寄せ
少し進んで後手が2五桂打としたところ。飛車筋を止めつつ角取りになっていて良さそうに見えるが、ここから深浦九段が寄せに入る。
角取りを放置して3六桂打。
後手は1七桂不成と角を取りつつ飛車取り。これが厳しいように見えてしまうかもしれないが……。
飛車取りも放置して2四桂!
この手が詰めろになっているため、飛車は取れない。
具体的な詰み筋はこちら(9手詰めなのでチャレンジしてみよう)。
というわけで、同歩で桂馬取るが、同歩、2三歩打、3四飛で先手の攻めが華麗決まった。
後手は4二桂と攻め駒を攻める受け。
ここでは3二飛成! としてしまう手もあったかもしれない。
ここから同玉、3三銀打、4一玉、5三桂、同角、3二金打、5一玉、5三銀(以下変化図)
この局面で後手玉は詰まず先手勝ち。しかし、やや危険で選びにくいか。
深浦九段は飛車を逃げずに3三歩打。
この手も厳しく2二金、4三銀成としたところで広瀬竜王が投了となった。
というわけで、再び深浦九段が右玉で広瀬竜王に素晴らしい勝利。
右玉NOWは今後も深浦九段を応援します!