2019年5月8日に行われた新人王戦トーナメントで、後手の阿部光瑠六段が右玉を採用した。
阿部光瑠(こうる)六段は、電王戦での勝利経験もありソフトにも詳しい若手強豪。棋風はオールラウンダー。
一方、先手の出口若武(わかむ)四段は今年四段に昇段しプロになった新人棋士。本局がプロデビュー戦となる。2018年の奨励会三段時代に新人王戦準優勝の実績がある(優勝は藤井聡太七段)。
というわけで、棋譜は以下からどうぞ
2019-05-08 新人王戦出口若武 四段 vs. 阿部光瑠 六段 第50期新人王戦トーナメント戦
先手はあえて馬を作らせる作戦に
序盤、先手は5八金。
何気ない一手だが、3八角という手が発生している。もちろん5八金は悪手というわけではなく、後手の3八角打を誘った手ともいえよう。
後手の阿部六段は誘いに乗る形で3八角打。
ソフト的にはやや評価が低い。結果的にはこの誘いには乗らないほうがよかったかもしれない。
後手は馬を作ることに成功。しかし、この後の手順を見ればわかるが、馬は消されてしまう運命にある。
後手はセカステ右玉へ
後手はいわゆるセカステ右玉へ。
セカステ右玉については、以下のエントリを参考にしてほしい
最先端で蘇るセカステ右玉
最近、プロ棋士や強豪ソフトが右玉を採用するケースが多いが、中でも際立っているのは角換わり腰掛け銀から変化する「セカステ右玉」の形だ。 そこで、今回はセカステ右玉の話をしていきたい。 名人戦でセカステ右玉が登場! 先日行われた名人戦第3局。こ...
先手、馬を消す
先手は4七銀。これは次の2九飛で馬の捕獲を狙っている。
後手は3五歩。この手があるから3八角を打ったのだろう。
2九飛、3六馬にたいして、5二角打。同銀と馬を取ってしまうと2枚換えになってしまうので先手が大きく損になってしまうので、5八角打は大事な一手だ。
終盤の入り口で阿部六段が逆転
局面は終盤の入り口。ここまで正確に指した出口四段が優勢に進めたところ。が、ここの難解な局面で阿部六段が逆転する。
この局面で出口四段は5七金と成桂を払ったが、5五銀、同銀、6三香成で勝負したほうが勝ったようだ。
変化図
この局面で5七金とする。先手も危険な格好で、後手から猛攻がくるがまだ大丈夫。
ソフト的に逆転となったのは4五桂あたり。ここで8七銀打と受けていれば、まだ先手は残していたようだ。
ここから先も難解な場面はあったが、阿部六段がうまく指して最後は即詰みへ。
阿部六段がセカステ右玉の形から苦しいながら逆転勝利した一局となった。
右玉NOWは、今後も阿部六段を応援します!