右玉党待望、藤井聡太七段の右玉を久々に見ることができました!
舞台は棋王戦予選の牧野光則五段戦。序盤は牧野五段が右玉風の構想でしたが、中盤以降が藤井七段が右玉へ。お互い間合いを測る時間がなく、最後は藤井七段の強力な攻め vs 牧野五段の強靭な受けが見どころです。
棋譜は以下からどうぞ(将棋DB2にアップされたら差し替えます)
2019-05-15 棋王戦藤井聡太 七段 vs. 牧野光則 五段 第45期棋王戦予選
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前回の藤井七段の右玉はこちら
右玉党待望の一局! 王座戦の対深浦九段戦で、藤井七段の右玉!
藤井七段、右玉指さないかなーと日々思っていたが、ついにそのときが来た! 王座戦トーナメントのvs深浦戦で、藤井七段が右玉を採用。まずは、以下の棋譜を並べてみてほしい。 2018-06-22 王座戦深浦康市 九段 vs. 藤井聡太 七段 第66期王座戦挑戦者決定トーナメント 相手に隙を与えない圧倒的な指し回し。
序盤は牧野五段の右玉 vs 中住まい
序盤は角換わりから牧野五段が右玉風に構え、対する藤井七段は中住まいにするという格好だった。
牧野五段が玉を5筋に戻し、飛車を6筋に転換。
先手が7七桂と備え、後手は6五歩から桂交換を挑み、上図の局面へ。ここから激しくなるかと思いつつ、しばらく駒がぶつからない時間が長く続く。
藤井七段、右玉へ!
藤井玉がついに右へ。陣形は先手の作戦勝ちといってよいだろう。ただし、仕掛けも難しいところ。
お互いに手待ちに近い手を重ねた末、藤井七段が1六歩打! 矢倉崩しの手筋だ。
対する牧野五段の手もすごい。1二桂打! 指しにくい手だとおもうが、ソフトの候補手。
ソフト同士の対局でも最近見た記憶がある。
後手の角打ちから局面が動く
再び手待ち的な手が続いたあと、牧野五段が7ニ角打! を敢行。
対右玉によく出てくる筋で、桂頭と1筋を狙っている。右玉としてもイヤな手だ。
藤井七段の対策は飛車浮き。
後手は構わず3五歩。同歩に対して1四歩と桂頭を狙う。後手としても玉頭の戦いになるので怖いが仕方がないか。
対する先手は2四歩打、同歩、2五歩打と継ぎ歩の攻め。以降、1五歩、2四桂、同桂、同歩、1四桂打、2五飛と1三桂と進む(次図)。
藤井七段、妙手順で飛車を逃げす
後手が1三桂と跳ねて飛車に当ててきたところ。ここからの藤井七段の3手は驚きの手順。そして、ソフトの最善手でもある。
飛車を逃げずに3四桂! 後手は同銀直とするが……
そこで銀を取らずに飛車を逃げる。後手は銀取りが残るという格好だ。
藤井七段、決め手を逃して牧野五段の受けが炸裂
上の局面。攻めか受けか難しいが、藤井七段は早逃げを選択。しかし、2三銀打からの攻め合いのほうがよかったかもしれない。
2三銀打、同金、同歩成、同玉、4三角打(以下変化図)。
変化図
後手は2六銀打とするが、それは先手がよさそう。
4八玉に対して、後手は3一桂打!
これが受けの好手で、ソフトの評価値も優勢から互角に近づいた。
ソフトの候補手はここで5九玉か5八玉でさらに一路逃げる手だったが、藤井七は攻め合いを選び、一時逆転したかもしれない。
上の局面は互角。ここから藤井七段は1四飛と飛車を切り、敵陣を精算していく。
かなりすっきりとした局面に。評価は互角。
牧野五段、悪手で形勢を損ねるも強く粘る
先手が3六桂と打ち、馬に働きかけたところ。次の一手は悪手だった。敗着になったかもしれない。
4九銀打!
取れば詰みなので逃げるしかないが、手順に桂馬を外せるので悪くなさそうにも見える。しかし、素直に馬を逃げたほうがよかったようだ。
3八銀不成、同銀、3九飛打、4九銀打、1九飛成としたところ。
自陣は安全になったが、藤井七段はどのような寄せ構想を選ぶか?
4三角打!
飛車取りと2五金打を狙う手。しかし、牧野五段も粘る。
2二香打! しかし、次の手が厳しかった。
3四歩。3三歩成は許せないので同歩としたが3四角成で馬ができた。
後手は馬の好位置をずらすために3三歩打。ここからの藤井七段の寄せは素晴らしい。
2四銀打!
香車が利いているところだが、取ると2三金打から詰み。従って逃げるしかないが、1五歩打から大駒が1枚外せる。
1五歩打、同馬、同銀、同龍で、まだ馬を逃げず1六歩打!
2枚の大駒を外してから3三角打。これが王手香取り。2ニの香を外されたら後手陣はもたないため、ここで投了。藤井七段の勝利となった。
本局は藤井七段の構想もよかったが、牧野五段の受けの力も光った好局といえる。
そして、右玉NOWは今後も藤井七段を応援します!