王位戦の挑戦者決定リーグ白組・中村太地七段-永瀬拓矢叡王戦で、後手の永瀬叡王が右玉を採用してくれた。
永瀬叡王といえば、先日(2019/5/11)、4連勝のスイープで叡王のタイトルを獲得したばかりのタイトルホルダー。受けが強く、千日手もいとわない棋風。
一方の中村太地七段は王座の経験もあるトップ棋士。この対局前まで5連敗中とやや不調か。
というわけで、棋譜は以下からどうぞ
2019-05-17 王位戦中村太地 七段 vs. 永瀬拓矢 叡王 第60期王位戦挑戦者決定リーグ白組
角換わりから後手は右玉へ
角換わりから後手は9筋を詰めて右玉へ。流行のセカステ右玉などと違い、ストレートで玉を右玉の位置へ移動させた。
一方の先手は7七金型で壁銀。後手作戦勝ちにも見えるが、ソフトの評価値は互角だ。
後手は3五歩と付いて一歩交換へ。先手から4五歩と反発される可能性もあるが、これは強く3六歩と取り込む手が成立する。
以下、4四歩と銀を取られるが、3七歩成、同金、5五桂打(以下、変化図)
変化図
これは後手優勢。
というわけで、先手は素直に同歩と対応する。
後手は端攻めの態勢へ
先手は7七桂と跳ねる。これは端攻めを見せた手。7七桂型と右玉は相性はよくないため、序盤で7七桂としてきた場合は、右玉をあきらめて左に囲ったほうが良いことが多い。
永瀬叡王も6二玉として、あらかじめ戦場から遠ざける作戦を取る。
先手の継続手は9八香。9筋に飛車を参加せるための手。対右玉の手筋で放置する訳にはいかない。
永瀬叡王は飛車先を付き、歩と桂馬を交換。ただし、先手を好形の銀冠にさせてしまったのでやや損だったかもしれない。
(右玉に対する対銀冠の話は阿久津主税八段の「必ず役立つプロの常識」でも触れられている)
ただし、タイトルホルダーの永瀬叡王の指した手だけに、悪いとも言い切れない。事実、逆転の局面も出てくるのだ。
先手の攻めを呼び込んでからの反撃
先手は3五桂と打つ。2筋の突破と挟撃を目的にした手だろう。永瀬叡王の次の手は少し面白い。
2四歩!
同飛とされて意味がないように見えるが、後手の防御も弱くなる。その間に反撃する作戦だ。
6五歩、同歩に3九角打!
次に6五桂打を狙った手。
6八玉に対して、9三角成として馬を作ることができた。
しかし、先手も5七角打として、馬を消しに入る。
以下、同馬、同金直、4八角打。
この局面はソフト的に互角。永瀬叡王がうまく攻めたと言えるだろう。
一瞬の逆転だが、再び流れは先手へ
先手は2三桂成とし、4ニ金とさせてから2八角打で桂馬を守る。
この局面は後手有利で完全に逆転しているようだ。ソフトで1時間近く読ませてみたところ、-600!
ソフトの候補手を予想してみてほしい。
変化図
7三桂打!
この手が好手。以下、ソフトの読み筋は、5八玉、5七角成、同玉、8八金打、2ニ歩打、8七金、2一歩成、6五桂、4八玉、8六飛。
永瀬叡王の手は8八歩の垂らし。プロっぽい一手だが、やや先手に流れが傾いたか。
この後、と金を作り、8八に引くことはできたが、馬に外されてしまうことに。
中村太地七段が正確な攻めで寄せ切る
終盤は永瀬叡王が粘るも、中村七段の寄せも正確。1一香と詰めろで入られたところで永瀬叡王が投了となった。
というわけで、残念ながら右玉の負けとなってしまったが、中盤に逆転の局面もあるなど、見せ場はあった一局だった。
右玉NOWは今後も永瀬叡王を応援します!