2019年5月25日、瀬戸市で行われた「瀬戸将棋まつり」の席上にて、木村一基九段 対 藤井聡太七段の公開対局が行われた。
対局は、持ち時間10分、切れたら30秒の非公式戦。
イベントということもあり、対局は解説者や聞き手の会話が聞こえる位置で行う。
両者は公式戦での対局はなし。
木村一基九段は、A級に今期復帰。タイトル挑戦歴もあり、遅咲きのトップ棋士。軽妙なトークで人気も高い。
対する藤井聡太七段は、説明も不要な国民的ニューヒーロー。本局は違うが、公式戦での右玉採用も2回(2勝)ほどあり、右玉党の一人と言ってもよいだろう。
ネット配信は以下からどうぞ
『瀬戸将棋まつり』初公開放送! 木村一基九段 対 藤井聡太七段 2日連続生中継!
棋譜は以下からどうぞ
https://migigyoku.com/kifu/kf.php?kifu=20190527.kif
後手の木村九段、セカステ右玉を採用
序盤は角換わりから玉を左に(後手視点)。3七桂に対応する手で、この手を怠ると4五桂跳ねが成立する。
後手は5四銀・6三金型のセカステ右玉へ。4筋に飛車を振る流行の形だ。
桂頭への仕掛けは返し技があった
先手は手待ちをするかと思いきや、先手が4八金とした瞬間に6五歩の仕掛け。2九飛型だったら、成立しないかもしれない微妙なタイミングだ。
後手は3五歩。
桂頭を狙う悩ましい手だが、藤井七段は堂々と取る。
ここで3五歩と打たれると先手が困りそうだが、木村九段は見送る。
3五歩だとどうなるのか……。
変化図1
1八角打が痛打。
3七歩成と桂馬を取ってしまうと、6四歩打が突き刺さる。
変化図2
同金は8一角成とされるので、この歩は取れない。
5四銀とするしかないが、どこで3七金と手を戻されても、後の6三歩成、同玉、6六歩などが残り、後手苦しい。
が、ソフト的には実は互角で、後手としては難解ながらこの変化に飛び込む手もあったかもしれない。
本譜は、8六歩、同歩、8五歩打の継ぎ歩(上図)。
ここで6五歩打が絶妙のタイミング。銀を引かせてから、8六銀と逃げて、ここで後手は3六歩打。
先手はここで8七歩打。3七歩成は甘受する。
右玉、積極的に攻める
後手は、3七歩成は保留して5五銀と進出。次の4六銀を狙う積極的な手だ。
先手は1八角打!
このラインは右玉にとって天敵。玉頭はもちろん、遠く飛車まで狙っている。本譜はこの角に役割を果たされてしまった。
後手は5四角打。
やや3六の桂頭を守っているが、やや欲張った手だったか。5四歩と角筋を止める手で後手不満なさそうだった。
藤井七段の見事な手順
先手の藤井七段は5六歩。
ここからの手順は見事だった。
4六銀に対して、5五歩の突き捨て。
同銀と取らせてから5九飛。銀取りの先手を取りつつ、飛車が急所に周った。
後手としては、ここで3七歩成で勝負するしかなかったかもしれない。
4六銀と逃げたところに、5五歩打。4三角と逃げ、3六角、3五銀に、6三角成!(下図)
この手も好手で、不安定な後手陣は厳しい。
絶妙なタイミングで桂馬を引きちぎる
5四歩、同角とした場面で、8五銀!
これが絶妙なタイミング。
同飛とすると、5四飛が決まる(下変化図)
変化図
同歩は4一角が王手金取り。
同玉は5二角打や7七桂が厳しい。
というわけで、同飛とは取れなかった。
藤井七段の確実な寄せ
局面は進み、先手が寄せに入ったところ。
勝勢とはいえ、飛車あたりとなっており、忙しい局面でもある。
5三歩打ちの詰めろも見えるが、4一玉ではっきりしない。
ここからの藤井七段の手順は見事だったので、寄せを考えてみてほしい。
正解は3四歩、同銀に5二角打!
銀を受ける3三歩打は、5三と、と寄るのが好手。
本譜は、5九と、としたが、3四角成。
最後は2三馬と入って必死。本譜は公開対局のため、7五桂打からの角の王手をしたが、受けられて投了となった。
本局は中盤で一気に差が開いてしまったが、それまでは後手互角以上で、セカステ右玉の優秀さは盤石なものと言えるだろう。
右玉NOWは今後も木村一基九段を応援します!