今回は2006年のA級順位戦 羽生善治王将(当時)、丸山忠久九段の一局を紹介したい。
この対局は、丸山九段得意の一手損角代わりに対して、羽生王将が先手右玉に構え、序盤から優勢を維持し、最後は猛攻をしのいで快勝したという一局。
右玉の手筋や感覚として参考になる手も多いので、右玉党はチェックしておきたい。
棋譜は以下からどうぞ
2006-11-22 順位戦羽生善治 vs. 丸山忠久 順位戦
後手番一手損角換わりに対して先手は右玉へ
後手の丸山九段は得意の一手損角代わり。
先手の羽生王将(当時)は右玉に。これで一手損角代わり腰掛け銀 vs 右玉の戦いとなった。
覚えておきたい飛車先歩交換後の手筋
先手が6六銀としたので、後手は飛車先の歩を交換。
右玉党としては、8七歩では安全だがつまらない。まずは他の手を考えたい。
羽生王将の選択は7五歩!
この形では手筋。以下のエントリで解説しているので参考にしてほしい。
右玉に対して、角換わり5二金型から飛車先を交換してきたときの対処
対矢倉に対して、右玉が▲6六に銀を繰り出したことに対し、角換わり5二金型側が飛車先を切ってきた局面を検討してみよう。右玉の基本的な手筋なので、必ず覚えておきたい。 飛車先切りには大人しく対応しないのが右玉 後手の持駒:角 歩 9 8 7 6...
本譜は同歩、7四歩打、6五桂、7三角打と進行し、早くも右玉が一本取ったような格好だ。
後手、強引に飛車先を突破する
後手は8七角打!
右玉としてはかなり怖い手。7九金と引く手もありそうだが、ここは同金としたほうがよい。
8七飛成とされてしまうが、ソフトの評価値は+400以上の先手有利。
ただし、少しでも間違えてしまうと一気に評価はひっくり返るので安心はできない形だ。
先手は5五歩、4三銀に6四角成(上図)。
桂取りになるこの手順がソフト最善。羽生王将もそのとおりに指して、有利を拡大する。
王将と遠い場所に戦力が
後手に速い手がないため、先手はと金を生成。お互い、玉将に遠い部分に戦力が集中する形になる。
あとは、物量の先手か、硬さの後手かという戦いとなった。
後手は3五歩。対右玉に対する手筋。桂頭を狙う厳しい手で、3六歩と取り込まれたら龍が利いているために同銀とできない。
ただ、右玉としてはこの桂馬はあえて取らせてもそれほど問題がないことが多い。
羽生王将も桂馬を取らせる選択。3五歩が残ることが右玉の主張になる。
後手からの猛攻を右玉が華麗に凌ぐ
後手は4五桂打を犠打にしてスペースを作り、4四桂打。
右玉優勢の局面だが、後手も堅く、まだ攻め合いにはできない。
右玉としては4八金にヒモがついているのが王将だけなので注意したい。
先手の選択は3六桂の合わせ。5八香打もあったが、この手も受けになっている。
4六歩、同歩に3六桂。右玉としては凌ぎ所。
同桂とすると金を取られるので、4七金と交わす。
後手は4四銀と銀を進出、4五歩打と受けるが、構わず3五銀!
同銀に4三桂打として手を作る(上図)。
先手は4六銀と引き、後手は3四銀と進出。5三歩成と先手はいよいよ攻めたところに3三桂(上図)。
先手はここで3六金と桂馬を取り払う。先手は6五の馬が守備に効いている。
後手の3五歩打に対して、同銀、4五桂、2六玉、3五桂としたところで、後手からの攻め手がなくなる。
4二と、同金に4六桂打で後手投了。
丸山九段の猛攻を凌ぎ、羽生王将の先手右玉の快勝となった。
右玉党はぜひ並べておきたい一局といえるだろう。
右玉NOWは今後も羽生善治九段の右玉を追いかけていきます!