2019年7月2日に行われた順位戦C級1組の対局で、青嶋未来五段が後手右玉を採用してくれた。
青嶋五段といえば、「変幻自在! 現代右玉のすべて」の著者として知らぬ者はいない棋士。その青嶋五段の右玉といえば、注目せざるを得ない。
現代右玉のすべてについては以下のエントリも参考にしてほしい
これから右玉を指すなら必読! 青嶋未来著「現代右玉のすべて」レビュー
今回は右玉の棋書から「現代右玉のすべて」を紹介したい。 現時点で最新の右玉本(2018年5月18日発売)であり、これから右玉を指したい人には最適な一冊となる。 著者は若手強豪の青嶋未来五段。プロ棋戦でも右玉を採用している。 (青嶋先生の右玉...
対するのは、ベテランの青野照市九段。A級11期の実績を持つ実力派棋士で、一手損角換わり流行のきっかけを作ったことでも有名だ。
本局は、角換わりから先手の青野九段が早繰り銀を採用。青嶋五段が右玉で受けるという展開となった。
棋譜は以下からどうぞ
2019-07-02 順位戦C級1組 青野照市九段 – 青嶋未来五段
角換わりから先手は早繰り銀を採用
先手の作戦は早繰り銀。
後手の対策は羽生九段が連採して話題(?)の7二金型も考えられたが、オーソドックスな5二金を選択。
先手の攻めに手筋の反撃
先手、3五銀から仕掛ける。
銀が3五にいるタイミングで8六歩を入れるのは手筋なので覚えおきたい。
同銀は5五角打で終了なので、同歩。
後手の継続手は8五歩。同歩としてしまうと、銀桂取りの十字飛車が決まるので、先手は同歩と取れない。
というわけで、先手は2四歩。
この局面は互角。
同歩、同銀、同銀、同飛、2三歩打、2六飛と進行する。
飛車の引き位置はやや珍しいかもしれない。一般的には2八飛が多いだろう。
先手の8四歩に対して、8四歩打は手筋。8八歩と素直に謝るよりはよさそうだ。
後手は8七歩成と成り捨てて、同金、8四飛、8六歩打、8一飛と進行する。形勢は互角だが、わずかに後手よりだ。
青嶋五段にとっても研究の範囲だろう。
4五角打に対して右玉へ
先手は4五桂打。2三角成と7二銀打を狙った一手。
両方を防ぐ手はない。
後手の6二玉と右玉にして受ける。7二銀を防ぎ、戦場からも遠ざかる一石二鳥の手だ。
先手は2三角成ではなく、7五歩。こちらも右玉の弱点を突いていて厳しい。すぐに2三角成は、3五銀打があったようだ(変化図)。
変化図
2六飛型の弱点が出てしまっている。2五飛としても、3六銀。3五飛は2三金と馬を取られてしまう。
本譜は7五歩に対して、5四歩と進行。6五桂も見えるが、こちらも感触が良い。
7四歩、同銀、7五歩打、6三銀、7四銀打と進む。
右玉としては嫌な形だが、ソフト評価値右玉有利。
しかし、少しでも間違うと一気に敗勢になるので注意したい。
後手は、3三桂と角に当てる。3四歩打が発生するので怖いが、すぐに3四歩打は2五銀の切り返しがある。
後手は3六歩打。大駒は近づけて受けよ、の一手。
先手の緩手で右玉有利に
先手は、3四歩打。
桂頭を狙う当然が一手だが、やはり2五銀打は厳しい。
形勢は大きく後手に振れる。
後手は当然、2五銀打。飛車が引けば、打ったばかりの歩を取られるが、銀を打たせたことに意味があるのだろう。
と思ったら、3三歩成! 青野九段は二枚換えを選択した。ただし、先手陣は飛車打ちに弱いだけに勝負手と言えそう。
2六銀、3二と、3九飛打と進行。
後手陣も怖いところがあるが、この局面は後手有利だ。
先手の攻めを受け切って右玉快勝
以降は後手が押し切り、最後は上図の9五桂打で先手が投了。先手は攻め駒がないのがツライところ。
というわけで、本局は後手の右玉が早繰り銀に対して勝利した一局となった。早繰り銀に苦しめられている右玉党の人も多いはずなので参考になるだろう。
右玉NOWは今後も青嶋五段を応援します!
追記
青嶋五段がブログで本局の解説をされていましたので、合わせてどうぞ。
順位戦 青野九段戦 | ミライの棋譜ノート