角交換右玉で相手が飛車先の歩を交換されたときに、素直に歩を打って収めるのは悔しい。
もちろん、歩を打ったほうがよいときもあるが、それ以外の手で有意になることもある。詳しくは「飛車先歩交換への対応」カテゴリを見てほしい。
今回は、2018年の順位戦、飯塚祐紀七段-中川大輔八段から、後手の中川八段が指した手順を紹介したい。2三歩打で収めるのではなく、3五歩から収める反撃する積極的な手順だ。
棋譜は以下からどうぞ。
2018-12-05 第77期順位戦B級2組7回戦 飯塚祐紀七段 – 中川大輔八段
途中局面で発生する手筋を動画にしてますので参考にどうぞ。
後手、変則的な駒組みで右玉へ
序盤はかなり変則な出だしから右玉へ。これは先手の4五桂跳ねを警戒した駒組み。
後手は右玉を完成させる。
後手は4四銀と繰り出す。矢倉右玉定番の作戦だ。
先手の飛車先歩交換から3五歩で反撃
先手が歩交換をしてきた局面。ここが今回のポイント。
ここで2三歩打とするのではなく、3五歩とするのが右玉用意の反撃。右玉を指すならば必ず覚えておきたい手筋だ。
先手の応手は、同歩、4五歩、4七銀、4五銀、2六飛などが考えられる。
いずれも右玉有利になるので覚えておきたい。
同歩とした場合
自然な同歩だが、これは悪手。
3六歩打。これには4五桂とするが……。
1五角打が必殺の一打。
2八飛に3七歩成で後手良し。
4五歩の場合
4五歩は3三銀と引いて飛車に当てる。
2六飛と桂頭を守る一手。
ここで後手は3六歩、2五歩、3四銀のどれでも優位に立てそう。
4七銀とした場合
4七銀とした場合は、6五歩からの反撃が成立する。
同歩なら、3六歩、同銀を入れてから6五桂。
ここで5九角打がソフトの読み。
このあとは、4七金、8六歩、同歩、2三歩打と進行を予想している。
4五銀とした場合
4五銀はやや珍しいが、この場合も3三銀と引く。
2九飛に4四歩で後手指せるだろう。
本譜は2六飛
本譜は2六飛だが、これはやや悪手。
2五歩と叩く手がある。
同桂とするしかないが、ここで1五角打が好手。
2八飛に3六歩と取り込んで、後手有利となった。
銀を繰り出して右玉優勢
先手は2六歩打で我慢した局面。ここで継続手がある。
3五銀打が好手。これで右玉が優勢という状況だ。
局面は二転三転して右玉勝ちに
この将棋は評価値が二転三転したが、せっかくなので上の局面を次の一手として紹介したい。後手から7六桂と歩頭に打って王手をしたところだが、実はこの手、「最後のお願い」だった。
本譜はこの手が通って、後手の逆転勝ちに。
正解は、5八玉か6八玉。
いずれも、後手は5七銀打とするが、6七玉で詰みがない。5七金でばらしても詰みなし。
本譜は同歩としてしまったため、詰んでしまった!
後手の中川八段は見事詰まして、後手勝ち。
詰みの一例はこちらを参考にしてほしい。
というわけで、中川八段による角換わり右玉に対する飛車先交換の対応方法。右玉党としては覚えておきたい手筋だ。
右玉NOWは今後も中川八段を応援します!
なお、以下のエントリでも同様の対策方法を紹介しているので、参考にどうぞ。
右玉に対して、角換わり5二金型から飛車先を交換してきたときの対処
対矢倉に対して、右玉が▲6六に銀を繰り出したことに対し、角換わり5二金型側が飛車先を切ってきた局面を検討してみよう。右玉の基本的な手筋なので、必ず覚えておきたい。 飛車先切りには大人しく対応しないのが右玉 後手の持駒:角 歩 9 8 7 6...