2019年7月19日に行われた棋王戦挑戦者決定トーナメントで、稲葉陽八段が7二金型の右玉を採用してくれた。
稲葉八段といえば、順位戦A級のトップ棋士。タイトル獲得こそないが、2017年度には名人挑戦も果たしている。8月には新型雁木のすべてを刊行予定だ。
対するのは畠山鎮七段。棋界唯一の双子棋士で、「マモルは攻める」とも言われる攻め将棋で有名。
本局は一手損角換わりから先手の早繰り銀、後手が7二金型の右玉へ。
右玉党としては羽生九段が2回指した課題局面になることを期待したが、先手が避ける格好になった。
その後は後手が木村美濃に組み替えて、玉頭を巡る争いに。
というわけで、棋譜は以下からどうぞ
2019-07-19 棋王戦挑戦者決定トーナメント 畠山鎮七段 vs 稲葉陽八段
早繰り銀から7二金型右玉に
角換わりから先手の早繰り銀に対し、後手は7二金へ。
羽生九段が連採した形だ。
先手は6七金を選択。期待した局面にならず。先手が避けたのかもしれない。
後手は銀の位置を4三へと変更する。
4五歩。取れば3三桂が銀取りになるので取れないので引くしかない。
ただ、3三桂と跳ねたときの行き先もなくなるのでよいかどうかは微妙なところだ。
後手、木村美濃に組み替える
後手は飛車を2筋に転換。歩交換を防ぐ。
さらに玉を8二まで移動して木村美濃の形へ。
先手、角打ちを決断
お互いに動きにくい形だが、先手が3七角打を決断。
間に駒が3枚あるが、間接的に玉を狙っている。
というわけで8三玉として角筋を避ける。
ソフトも認めるプロらしい好手
少し進んだ局面。次の一手はプロらしい好手だった。5四銀でも互角は維持できそうだが……。
5六歩打!
この垂らしがソフトの第一候補でもある好手。
結果的にこの歩はと金になり、勝利に貢献することになる。
4八角と玉頭を狙った手に対して、7三銀打でがっちり受ける。
逃げ間違いから形勢が逆転
さらに進み、先手が7五桂と打った局面。
ソフト評価値によると、同銀は互角。逃げ場所はいくつかあるが、1つだけ有利を維持でき、残りはすべて先手優勢~有利となってしまう。
正しい場所に逃げられるだろうか?
正解は7三玉!
2六角のラインが怖いがこれで耐えているようだ。5三角成は6二銀打で受ける。
本譜は9三玉。しかし、これは危険だった。
7三歩打、8二金、7二角成、7七歩打。
かなり複雑な局面だが、ソフトによると先手優勢(+1300以上)。
ソフトの読みは7七歩を手抜いて7二歩成と踏み込む順。以下、7八歩成、同銀、7九金打、6六銀不成、7五銀引、7三馬。
本譜は6五金と桂馬を外したがこれがよくなかったかもしれない。
同歩、7二歩成、同銀、7七歩打で後手が有利になった。
稲葉八段、華麗に寄せる
局面は先手が8金打で粘ってきたところ。ここからの寄せは見事だった。
6七角成、7八歩打に7七馬!と馬を切って、同歩に7九金打!
6八銀打、同飛、同とで、飛車を入手。同玉に2八飛打。
5八桂打に、7五銀と桂を外した手が詰めろ。後手玉は詰まず、ここで先手の投了となった。
仮に8二となら、5六桂打、5七玉、6六銀、同桂、6八飛成で詰み。
というわけで、稲葉八段が7二金型の右玉から木村美濃に繰り替えて勝利した一局でした。
右玉NOWは今後も稲葉八段を応援します!