羽生九段が連採し、右玉党の中でも話題になっている7二金型の右玉。
今後もプロ棋戦で登場する可能性は高いので、取り上げてみたい。
7二金型テーマ図
後手の持駒:角 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v金v玉 ・ ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v歩v歩v銀v歩 ・|三 |v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・ ・v歩|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ 銀 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六 | ・ 歩 銀 ・ 歩 歩 ・ ・ 歩|七 | ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 歩 手数=34 △1四歩(13) まで
今回のテーマ図。羽生九段が短期間に2回採用し、2回とも勝利したことで話題になった。一手損角換わりで、対早繰り銀に対して使用する。


この形のメリットは
・一手損角換わりの天敵である早繰り銀対策であること
・2四歩をワナとして誘っていること
・早繰り銀側もそれほど研究していないだろうということ
・右玉対策本でも恐らく対策されてないこと
(対策されてなかったよ!)
デメリットは、先手陣と比べると玉周りが薄いということだろうか。
7二金型にするタイミング
後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀v金v玉v金v銀v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二 |v歩v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 ・|六 | 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七 | ・v馬 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 銀 金 玉 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=4 △8八角成(22) まで
7二金型は、一手損角換わりから派生する。
後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香 ・ ・ ・v玉 ・ ・v桂v香|一 | ・v飛v金 ・ ・ ・v金 ・ ・|二 |v歩v歩v桂v銀v歩v歩v銀v歩v歩|三 | ・ ・v歩v歩 ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ 銀 歩 ・ ・|六 | 歩 歩 銀 歩 歩 歩 ・ ・ 歩|七 | ・ ・ ・ 玉 金 ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 手数=22 △7二金(61) まで
△7二金と指すタイミングは、早繰り銀を明示する▲4六銀が指されたあとがよいだろう。
右玉を完成してテーマ図へ
後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v金v玉 ・ ・v金 ・ ・|二 |v歩v歩v桂v銀v歩v歩v銀v歩v歩|三 | ・ ・v歩v歩 ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五 | ・ ・ 歩 歩 ・ 銀 歩 ・ ・|六 | 歩 歩 銀 ・ 歩 歩 ・ ・ 歩|七 | ・ ・ 金 玉 金 ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 手数=26 △6二玉(51) まで
△8一飛を入れてから、△6二玉と移動して右玉にする。
後手の持駒:角 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v金v玉 ・ ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v歩v歩v銀v歩 ・|三 |v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・ ・v歩|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ 銀 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六 | ・ 歩 銀 ・ 歩 歩 ・ ・ 歩|七 | ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 歩 手数=34 △1四歩(13) まで
先手から▲3五歩、△同歩、▲同銀、△8四飛、▲7九玉としてきたところで、△1四歩を入れてテーマ図へ合流する。
先手から2四歩は成立しない
後手の持駒:角 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v金v玉 ・ ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v歩v歩v銀v歩 ・|三 |v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・ 歩v歩|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ 銀 ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六 | ・ 歩 銀 ・ 歩 歩 ・ ・ 歩|七 | ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 歩 後手番 手数=1 ▲2四歩(25) まで
この作戦で気になるのが、先手から▲2四歩と仕掛けること。
対策は必ず知っておこう。
後手の持駒:角 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v金v玉 ・ ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v歩v歩v銀 ・ ・|三 |v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・ 銀v歩|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六 | ・ 歩 銀 ・ 歩 歩 ・v歩 歩|七 | ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 歩二 手数=4 △2七歩打 まで
▲2四歩に、△同歩、▲同銀のときに△2七歩打とするのが大事な一手。
後手の持駒:歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v金v玉 ・ ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v歩v歩v銀 ・ ・|三 |v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・ 銀v歩|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六 | ・ 歩 銀 ・ 歩 歩 ・ 飛 歩|七 | ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八 | 香 桂 玉 ・ ・v角 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 歩三 手数=6 △4九角打 まで
▲同飛は△4九角打で先手優勢。
後手の持駒:歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v金v玉 ・ ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v歩v歩v銀 ・ ・|三 |v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・ 銀v歩|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六 | ・ 歩 銀 ・ 歩 歩 ・v歩 歩|七 | ・ ・ 金 ・ 金 ・ 飛 ・ ・|八 | 香 桂 玉 ・ ・v角 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 歩二 手数=6 △4九角打 まで
▲2八飛としてきた場合も、△4九角打で先手優勢だ。
先手は▲4八飛が最善だが、△5八角成、▲同飛、△3四銀で2枚換えとなる。
先手の候補手は▲4六銀と▲6八金右
先手の候補手は実戦でも指された▲4六銀と▲6八金右がやはり有力だ。
近藤六段が指した▲4六銀は最有力
後手の持駒:角 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v金v玉 ・ ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v歩v歩v銀v歩 ・|三 |v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・ ・v歩|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 ・ 銀 ・ ・ ・|六 | ・ 歩 銀 ・ 歩 歩 ・ ・ 歩|七 | ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 歩 後手番 手数=1 ▲4六銀(35) まで
近藤六段が指した一手(参考)は、最有力。
羽生は△3一飛としたが、△4四歩や△4四銀なども有力。
その後の展開は、あとで紹介するソフト同士の実戦例を参考にしてほしい。
△4九角打を消す▲6八金右
後手の持駒:角 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v金v玉 ・ ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v歩v歩v銀v歩 ・|三 |v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・ ・v歩|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ 銀 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六 | ・ 歩 銀 ・ 歩 歩 ・ ・ 歩|七 | ・ ・ 金 金 ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 歩 後手番 手数=1 ▲6八金(58) まで
▲6八金右は佐々木大地五段が指した一手(参考)。こちらは、△2四歩からの△4九角打を消す一手。
こちらも一局。ソフトは△4四銀を推奨しているが、佐々木戦同様、△8五桂が成立してそうなので、
△8五桂を推奨したい。
その後は、何度も△4九角打をする展開になるので、佐々木戦は必ず並べておこう。
先手の候補手▲4六銀と▲6八玉以外が指された場合は?
じっと手を渡す▲1六歩
後手の持駒:角 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v金v玉 ・ ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v歩v歩v銀v歩 ・|三 |v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・ ・v歩|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ 銀 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ 歩|六 | ・ 歩 銀 ・ 歩 歩 ・ ・ ・|七 | ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 歩 後手番 手数=1 ▲1六歩(17) まで
じっと▲1六歩は実戦でありそう。この場合は△4四銀とぶつける。
先手は▲4六銀が最善だが、そこで、△3三桂と跳ねて攻めていく、
▲8八玉と入城する
後手の持駒:角 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v金v玉 ・ ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v歩v歩v銀v歩 ・|三 |v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・ ・v歩|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ 銀 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六 | ・ 歩 銀 ・ 歩 歩 ・ ・ 歩|七 | ・ 玉 金 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 歩 後手番 手数=1 ▲8八玉(79) まで
▲8八玉の入城は、△8五桂と跳ねていけば、有利を拡大できそう。
▲8六銀、△4九角打が進行の一例。
△8五桂に▲6八銀と引いたら、△9五歩からの端攻めが成立する。
▲同歩、△9七歩打、▲同桂、△5五角打などが進行例となる。
ソフトに引き継がせると結果はほぼ互角
テーマ図から1手30秒でソフトに対局させてみたところ、結果は7勝8敗4千日手1持将棋と後手番としては、まずまずの結果に。
右玉が勝った棋譜
0_20190629_51835.kif
0_20190629_110414.kif
0_20190629_125257.kif
0_20190702_34846.kif
0_20190702_43823.kif
0_20190702_75419.kif
0_20190702_93135.kif
引き分けの棋譜
1_20190629_45623.kif
1_20190629_120835.kif
1_20190629_123046.kif
1_20190702_55055.kif
1_20190707_114357.kif
右玉が負けた棋譜
2_20190629_61701.kif
2_20190629_72514.kif
2_20190629_81854.kif
2_20190629_91811.kif
2_20190702_83601.kif
2_20190702_103851.kif
2_20190702_111928.kif
2_20190702_121634.kif
プロ棋戦での再登場を期待
というわけで、最先端の右玉の形の紹介でした。羽生九段が2勝したとはいえ、形勢はほぼ互角だったので、今後もプロ棋戦で出現してもおかしくない。一手損角換わり対早繰り銀の局面になったら、期待して観戦しよう。