前回までのあらすじ
王座戦挑戦者決定戦トーナメント、先手の羽生九段は右玉を採用し優勢に進めるものの、後手の佐々木大地五段がうまく対応して千日手に持ち込まれる。
羽生善治九段、先手右玉を採用! 長い長い序盤の末、千日手へ
王座戦挑戦者決定戦トーナメントで、先手の羽生九段が角交換をしない右玉(風車右玉)を採用してくれた。 この対局の後手は佐々木大地五段。 右玉NOW的には佐々木大地五段得意のセカステ右玉を期待していたが、まさかの羽生九段の先手右玉となった。これ...
そして、深夜22時03分から指し直し局、羽生九段は再び右玉を採用する。
今度は後手番一手損角換わり右玉7二金型だ。
この対局は右玉の名局として語り継がれていくべきだろう。羽生九段の研究された序盤、中盤の羽生マジックともいえる好手、着実な寄せと一局を通して見るべきところが多い。
棋譜は以下からどうぞ
2019-06-24 王座戦佐々木大地 五段 vs. 羽生善治 九段 第67期王座戦挑戦者決定トーナメント
AbemaTVの中継は以下から
第67期 王座戦 挑戦者決定トーナメント 羽生善治九段 対 佐々木大地五段
※0時以降は将棋LIVEチャンネルで配信されていたので見られないかも……
千日手指し直し局は近藤六段戦を踏襲
羽生九段は一手損角換わり右玉の7二金型。
対する先手は早繰り銀模様。
これは、2019年5月20日に行われた王座戦挑戦者決定トーナメントの近藤誠也六段戦と同じ戦型。
羽生善治九段が一手損角換わり右玉で勝利!
2019年5月20日に行われた王座戦挑戦者決定トーナメントで、後手の羽生善治九段が右玉を採用してくれた。 羽生九段は言わずとしれた棋界のスーパースター。オールラウンダーの棋風もあって、過去に右玉を採用したことも当然ある。 対するのは近藤誠也...
千日手指し直し局で持ち時間が短いので、経験のある形を選んだのであろう。
繰り返しにはなるが、羽生九段が連続右玉とは!
34手目の△1四歩まで近藤戦と同じ。ここで先手が▲6八金と変化した。
8五桂跳ねを成立させる
羽生九段は桂跳ねを敢行。この桂跳ねが成立するかどうか興味深いところだが、どうやら成立していそうだ。
ここで先手の佐々木大地五段は長考。
▲8八銀と壁形になるが引く。
後手、しつこく4九角打
後手の狙いは、この△4九角打。
ぼんやりしているように見えるが、△3八歩打を狙っている。
先手は▲6七角打で対抗。△同角成、▲同金左に再び△4九角打!
今度は▲1六角打。そして、△同角成に同歩のあと、3度目の△4九角打!
今度は▲5八角打。これにも△同角成、▲同金で4度目の△4九角打!
先手は角を合わせることができず、▲6八玉。
後手の狙い、△3八歩打が実現した。
この局面は互角だ。
銀捨ての羽生マジック! そして優勢に
少し進んだ局面。6筋の歩を銀で取った所。素直に△5四銀と引くと見ていたが……。
△7六銀!
なんと銀捨ての強行! 羽生マジックといえるかもしれない。結果的にこの手は好手だった。
▲同玉とするしかないが、△7八金打で張り付く。
怖い角打を後手は凌ぐ
先手は反撃の▲2七角打。狙いは当然、▲7二角成と角を切る手。
ここは△6三歩打が冷静で最善手。すでに深夜を超えているが、羽生九段の手に乱れはない。
先手は▲5七金。飛車筋を通して▲7八金を狙う。というわけで、後手は△8九金と桂を取りつつ逃げる。
この局面で先手は▲6五歩。この一手も好手で佐々木大地五段の実力を示している。
後手は△3八歩打で飛車筋を止めて、先手は▲6四歩と前進。
ここで堂々と△8八金。
▲6三歩成、△同金、▲6四歩打!
かなり厳しいが、これは△7五銀の王手から外すことができる。
△7五銀打、▲6七玉、△6四銀。これで後手の右玉が優勢。ただし、持ち駒が少ないので攻めは慎重に行う必要がある。
羽生九段、好手の連続で寄せ切る
少し進んだ局面。△5四歩を入れて角筋はブロックしたが、▲2三歩成が入った。
この局面で△6五桂打と攻めあう。
▲6六金と逃げた手に、△7七桂成左!
右桂で成るのが筋だが、△6五歩が生まれるこの手が好手。
少し進み、▲2六飛と歩を払ったところ。
次の一手は盤上を広く見た好手。
△9九金!
香車を補充する手が好手。ここに目が行くのはすごい。
先手は6筋で歩の叩きを2ついれたあと、▲1二と、で飛車筋を開ける。
対して、後手は△3二香打! この手が先手の逃げ道を塞ぐほか、▲2二龍が金取りにならない。
▲3六歩打に△4五銀と桂を食いとって、▲同銀に△2五歩打。▲同飛には△3三桂が厳しすぎるため、ここで先手は投了。
というわけで、7二金型の変則的な形から、羽生九段がうまく攻めて快勝となった。この形は恐らく今後も公式戦でも出てくるだろう。右玉党としては、教科書的に何度も並べたい。
右玉NOWは今後も羽生九段を応援します!