2019年8月8日に行われた順位戦で高見泰地七段が右玉を採用してくれたので紹介したい。
高見泰地七段は初代叡王として一気にスターダムへのし上がった若手のホープ。居飛車党である。
対するのは遠山雄亮六段。はやくから自身のブログを公開し、将棋連盟のモバイルサイト編集長を長く務めるなど、普及でも貢献している。YouTubeチャンネルもプロ棋士としてはいちはやく開設。
本局は一手損角換わりから、後手の高見七段がセカステ右玉を採用することになった。
棋譜は以下からどうぞ。
2019-08-08 順位戦C級2組 遠山雄亮六段 vs 高見泰地七段
後手、一手損角換わりからセカステ右玉へ
戦型は後手番一手損角換わり。
右玉への可能性を秘めた4二からの5二玉。
飛車が4筋に回り、右玉の可能性が高くなった。
6三金から6二玉で、いわゆるセカステ右玉の形へ。
千日手もある形から後手仕掛ける
先手からは仕掛けにくい形。後手としては千日手にする手もありそうだが、高見七段は積極的に仕掛ける。
6五歩!
形勢は互角なので、この手は十分にありそうだ。
このあとは一転してお互い陣形の整え合い。右玉側も上部に手厚い格好になってきた。
この時点での評価値はほぼ互角。
先手、右玉崩しの4八角を放つ
先手は4八角打を断行。
筋違いの角は右玉崩しの定番で、右玉側は常に注意する必要がある。
この手の狙いは9筋で、9五歩、同歩、9二歩打、同香、9三歩打が狙い。
後手の対応は4五歩、同歩に2二角打ち。
こちらは矢倉崩しの手筋。
しかし、角打ちの応酬は若干先手が得だったようだ。
ソフトは4五歩に変えて、3三桂の活用を読んでいた。
当たりを避ける7九玉が好手。局面は先手有利となった。
先手、勝負手を逃して後手有利に
少し進んだ局面。
後手は8四桂打。対矢倉でよくある手筋。狙いは当然ながら7筋。
対して先手も攻め合いへ。
同銀と食いちぎり、同歩、同角の局面。
次の一手がターニングポイントだった。
ソフトは思い切った勝負手を読んでいたので、考えてみてほしい。
変化図
4三銀打!
この銀捨てが成立するようだ。
狙いは当然ながら飛車成り。
一般的にはありえない手だが、後手陣は横からの攻めに極端に弱い陣形なので成立するようだ。
後手の最善手は同金で2三飛成を許すしかない。
2二金と交わす手は5六歩打、3三角、3四銀で先手有利。
3三金も5六歩打、3三角、3四銀で、同金なら2三飛成が実現する。
本譜は5九飛と回った手がソフトによると悪手。
評価値は先手寄りの互角から一気に後手有利になった。
7六桂が当然ながら厳しい。
後手、押し切って勝利
中盤以降は後手有利に進み、先手が7四銀とした局面。ここで先手玉に詰みがあったので、考えてみてほしい。17手詰み。
本譜は8九飛成で先手投了。
詰みの一例はこちら。
以上、高見七段がセカステ右玉からうまく指し回して勝利した一局でした。
右玉NOWは今後も高見七段を応援します!