2019年8月21日に行われた順位戦B級2組の対局で、飯塚祐紀七段が風車右玉を採用してくれたので紹介したい。
飯塚祐紀七段は棒銀を得意とする居飛車党。対振り飛車でも棒銀を使い、棒銀の著書もある。
対するのは若手強豪の近藤誠也六段。デビュー以来高い勝率を誇り、棋士レーティングも上位。将来のタイトルホルダー候補だ。
本譜は先手は棒銀模様から雁木、後手は風車右玉という形に。中盤のねじり合いから200手を超える激戦になり入玉へ。最後は衝撃の結末となった。
棋譜は以下からどうぞ
2019-08-21 順位戦B級2組 近藤誠也六段 vs 飯塚祐紀七段
先手雁木 vs 後手風車右玉の戦いに
序盤、先手は飛車先歩交換のあと、積極的に銀を繰り出す。
後手は戦場を避けて右玉へ。
先手は2五まで繰り出した銀を4七まで引き戻し、雁木の形に。
後手は風車右玉。3三桂と跳ねて、2筋からの反撃を狙う作戦に。
2筋を巡る激しい攻防
後手が端攻めを狙ったところで、先手は2四歩。
ここで後手は2筋に戻す。ただ、若干危険だっかもしれない。
2三歩成に同飛!
一般的に右玉側は飛車交換は避けるが、先手は右玉以上に飛車打ちに弱そう。
先手は飛車交換を避ける。が、ソフトによると強く飛車交換する手もあったようだ。
2一飛、3七桂に2五歩打。
2九飛に2四飛。2筋の争いが続く。
先手は4五歩で角を飛車に当て、2三飛。
4四歩、同角、2四歩打、2一飛、2五桂。
後手は4五桂の跳ね違い。
桂馬の跳ね違いは覚えておきたい手筋。
右玉の跳ね違いといえば、羽生善治九段の対局が有名なのでチェックしてほしい。
右玉の教科書とも言える一局! 羽生竜王の右玉
言わずとしれた将棋界のスーパースター羽生竜王。 オールラウンダーである羽生竜王は右玉も指しており、その棋譜は右玉党としてもバイブルになるはずだ。 羽生の右玉は、渡辺竜王(当時)を圧倒した2008年の竜王戦が有名だが、ここでは2016年の王位...
4八角に、2八歩打、同飛、2七飛打、同飛、2六歩打と歩の連打をし、2九飛に2四飛。
再び2筋は右玉優勢か。
4六歩打と桂取りを放ち、2五飛、4五歩。これで桂交換に。
同飛、2六角、同角、同飛、2五歩打、2七飛と進行する。
結果的には右玉側の飛車の位置が悪く、先手有利になったようだ。
先手、緩手で形勢は互角に
後手の次の手は4九角打!
飛車は助かりそうもないので、この手で勝負するのが良いようだ。
2八飛、4六歩打、5七桂打、4七歩成、4五桂、2七銀打と進行。
右玉の攻めも迫力が出てきた。
次の先手の手は痛恨の悪手。
2九飛。
これで一気に形勢は右玉よりの互角に。
変えて、飛車を見捨てて5九金が良かったようだ。
以下、2八銀、4九金、2九飛打、5九金、4八と、7九玉、5九飛成、8八玉(以下変化図)。
変化図
先手としてもかなり怖いが、これで先手有利。本譜よりは良かったようだ。
本譜は5八と、同銀、3八角成、2七飛、同馬と進行する。
衝撃の結末
その後、先手の飛車打ちから激しい展開に成るが、後手右玉側が入玉に成功。後手勝勢となった。
……が、衝撃の結末が待っていた。
最終盤。先手勝勢だが、先手も諦めず粘り強く指している。
ソフトの読みは8八金打か、飛車先をそらす7四桂の犠打。
後手は6六歩打を選択。しかし、これが痛恨の大悪手!
なんと11手詰めが発生してしまったのだ。
7九金!
これは予想できる手だが……。
同玉に8八銀。取ると8九金打の1手詰なのでこの銀は取れない。
6九香打!
同玉は7九金打、同とは5八金打で詰み。
したがって5七玉しかないが……。
4九桂打!
この手を見て飯塚七段は投了。
4七玉は6七金打まで。
4六玉は、5五龍、4七玉、5七金打。
同とは5八金打、4六玉、5五龍。
いずれも詰む。
というわけで、大トン死となってしまった。将棋は恐ろしい。
しかし、右玉NOWは今後も飯塚七段を応援します!