2019年9月5日に行われた順位戦C級2組の対局で神谷広志八段が右玉を採用してくれたので紹介したい。
神谷八段といえば、7月に「誰も言わなかった右玉の破り方」を上梓したばかり。その神谷八段が右玉を採用するとはちょっと驚きだ。
対するのは牧野光則五段。長身長髪の居飛車党。将棋連盟の写真と現在の姿が驚くほど違うことでも有名だ。
本局は後手番の神谷八段が一手損角換わり右玉を採用。対する牧野五段は中住まいから反撃することになった。
棋譜は以下からどうぞ
2019-09-05 順位戦C級2組 牧野光則五段 vs 神谷広志八段
後手、一手損角換わり右玉へ
後手は一手損角換わりから早くも右玉を明示。
しかし、これは早すぎたかもしれない。先手に対右玉の好形に組まれてしまうことになる。
先手は中住まいで対抗
先手の作戦は中住まい。
右玉の天敵ともいえる形。
ただし、中住まいに組んだからといって簡単に右玉を潰せるわけではない。
ソフトの評価値もまだ互角だ。
後手は玉を7二へ。
ただし、対中住まいでは、6二玉型で戦ったほうがよさそう。
場合によっては△5一玉から右玉を捨てるて作戦もありそうだ。
▲6八銀。
これは地下鉄飛車を狙った手だ。
△5一飛。
中住まいの弱点である玉頭を攻める手だが、ちょっと無理があるかもしれない。
先手の地下鉄飛車が炸裂
後手も積極的な攻めを見せるが、先手は堂々と▲9九飛。
8五歩と伸びているこの形では端を受けるのは厳しい。
端を守る△8四角打。6筋からの仕掛けも狙っている。
端攻めを防ぐにはこの手か△8三玉の顔面受けしかないが、これは苦しい。
▲6九飛が先手の好手。6筋からの攻めを防いでおり、後手としても指す手が難しい。
△8一飛に▲8五桂!
この手が成立してしまう。△同桂と桂馬がタダだが、▲8六歩から取り返されてしまい歩損に。
以降は先手のリードが広がり、右玉側の完敗となった。
対中住まいの作戦としては、5筋の位を取ったり、右玉を諦める手などが考えられる。
以下の研究も参考にしてほしい。
右玉 vs 中住まい その2 ~6二玉型で保留して5筋の位を取る
右玉の難敵として中住まいがあることは過去のエントリで紹介した。 具体的には、以下の局面は右玉作戦負けである。 というわけで、右玉側はこの局面にする前に対策を考えねばならない。 少し前の局面である以下はどうか。
「右玉の破り方」を実践されてしまう皮肉な結果になってしまったが、右玉NOWは神谷八段を応援します!