木村一基王位が2019年11月15日に行われたA級順位戦の大舞台で右玉を採用してくれたので紹介したい。
木村王位といえば、最年長初タイトルを獲得し世間の話題をさらった人気棋士。受けに強く、右玉の採用率も高い。王位獲得後、最初の対局も右玉だった。
対するのは稲葉陽八段。こちらも名人への挑戦経験がある強豪。右玉を採用するケースも多く、故に右玉の弱点も知り尽くしているだろう。
棋譜は、スマホアプリ「日本将棋連盟モバイル」、もしくは名人戦棋譜速報(有料)からどうぞ
また、AmebaTVでのビデオ視聴も無料で可能だ(恐らく一週間程度)。
[将棋情報LIVE]第78期 順位戦 A級第5回戦 木村一基王位 対 稲葉陽八段
※解説はなし
角換わりなしの早繰り銀 vs 右玉の戦いに
序盤、後手は角道を止めて角交換を拒否。対する先手の作戦は早繰り銀。後手は戦場を離れる右玉を選択する。
先手は45手目に▲3五歩から仕掛けるが、後手も△6五歩と反撃。取ると角道が開くので先手は取れない。
56手目の時点では先手陣はしっかりして後手は浮き駒が多いが、ソフト評価値は後手より。先手の歩切れをマイナスと評価したのだろうか?
難解な玉頭戦へ突入
先手は2筋、3筋を絡めて攻めるが、右玉はうまく交わしていく。この感覚は右玉党として身につけたいところだ。
先手のチャンスは110手目。ここで▲同金なら先手優勢だった。
次のチャンスは138手目。ここで▲8五桂打なら勝勢というのがソフトの評価。
これらの手を逃したため、局面は混沌としてくる。後手の木村王位はすでに1分将棋。
ここからは難解な玉頭戦で、ギャラリーにとっては面白い展開になった。
先手は3分だけ残した状態である。
後手最大のチャンスは149手目の局面。ここで△8八銀不成なら必死がかかり後手玉は詰まず、後手勝ちだった。ほかに△5七角成でも勝勢だったようだ。
本譜の△8八銀成も勝ち筋だったが、155手目の△同玉が悪手。形勢は一気に互角に戻る。
先手最後のチャンスは164手目の局面。ここで▲5二銀成なら残していたかもしれない。
最終盤三手詰を逃すも……
局面はさらに進み、193手目。先手は▲4四飛打とするも、先手玉は詰んでいる。
△7五銀打に▲5三玉。これで三手詰となるが、稲葉八段も根性で指し続ける。
詳しくは棋譜を見てほしいが、三手詰の部分図だけ紹介させてほしい(連盟から苦情があれば消します)。1分で解けるだろうか?
△5三飛(金)打、▲同成銀、△6四金(飛)打まで……と思いきや、△2四飛打!
まさかの三手詰見逃し。時刻も25時を超え、長い秒読みの末に起こったドラマだ。
しかし、先手が逆転するすべもなく、少し進んだ200手目を見て先手投了。大激戦に終止符が打たれた。
ちなみに、木村王位が秒読み、稲葉八段が2分だけ残した局面で、稲葉八段がトイレに行くというハプニングも。しかし、木村王位は紳士的に時間ギリギリまで待ち、稲葉八段もすぐに戻ってきたので、事なきを得た。
というわけで、形勢は二転三転としたが、右玉側の勝利。
右玉NOWは今後も木村王位を応援します!