2020年2月26日に行われた王座戦二次予選にて、後手番の阿久津主税八段が右玉を採用してくれたので紹介したい。
阿久津主税八段は順位戦A級経験があり、朝日杯将棋オープン戦、銀河戦の優勝がある一級線の棋士。居飛車党で角換わりを得意とし、右玉を採用することもある。ちなみに主税は「ちから」と読む。
対する先手は松尾歩八段。棋戦優勝は新人王戦の1回のみだが、B級1組在位の強豪棋士。穴熊を金銀4枚で固める「松尾流穴熊」などで有名。最近では「セクシー」の愛称も。
本局は手損のない角換わりから後手が右玉、先手が地下鉄飛車を見せる展開となった。
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後手右玉 vs 先手は金冠に
序盤は角換わりから先手が矢倉模様、後手は右玉に。43手目、先手が▲6八銀と引いたのが作戦の岐路。右玉の弱点である9筋からの攻めを見せている。
後手はここで8筋の歩交換。先手は▲8七歩打ではなく、▲8七金! いわゆる金冠となった。
右玉に対する銀冠は、阿久津八段著「必ず役立つプロの常識」でも触れられているが、金冠は珍しい。金冠完成時のソフト評価値は互角。
後手、決断の△4二角打
54手目、後手は△4二角打と角を手放す決断の一手。この角が生きるかどうかの勝負となった。さらに後手は右玉を捨て玉を5一まで移動。8筋を戦場にする考えだろう。
後手は66手目△6五歩から開戦するが、ソフトは玉を4一まで移動することを推奨していた。結果的には玉の位置がやや危険だったかもしれない。
後手の大駒の成り込みを巧みに防いだ先手が徐々に優勢に。
先手、攻め切る
90手目、▲2一角打の金取りが先手の好手。△4一玉で金にヒモはつくが、ここから怒涛の攻めが炸裂する。94手目に△2二金で角取りを見せるが、結局後手が角を取る余裕もなく先手が寄せ切ってしまった。107手目の▲6四銀打を見て阿久津八段が投了。松尾八段の勝利となった。
というわけで、右玉側の負けとなってしまったが、中盤までは互角。
右玉を捨てる玉の遷都がやや中途半端だったかもしれない。
が、右玉NOWは今後も阿久津主税八段を応援します!